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新首都圏ネットワーク


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Academia e-Network Letter No 88 (2004.04.05 Tue)

http://letter.ac-net.org/04/04/05-88.php
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━┫AcNet Letter 88 目次┣━━━━━━━━━ 2004.04.05 ━━━━

【1】任期制再任拒否事件訴訟判決の報道
全国国公私立大学の事件情報ウェブログより
http://university.main.jp/blog/archives/000721.html

 【1-1】京都新聞(2004.4.1)
  任期制再任拒否訴訟 元京大教授の訴え棄却 
  京都地裁「満了で地位喪失」

 【1-2】毎日新聞(2004.4.1)
    “再任拒否”は同意の任期満了
     京大元教授の訴え、地裁が退ける判決

 【1-3】京都新聞(2004.4.2)
 「大学から市民へ情報発信は使命」 法人化で京大総長

【2】 福井直樹氏(上智大学)
『アメリカの大学における「任期制」と「年棒制」』
http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/20040328FukuiRepAmerika.htm
2004.3.28 シンポジウム「任期制・年俸制の導入と評価制度は
大学をどうかえるかーー知の生産と教育の在り方を問うーー」より

【3】福岡教育大学発 国立大学法人化関連情報 第1号 2004.4.5
〔1〕 情報発信局開設のことば
〔2〕 学長への提言「法人化後の福岡教育大学の運営について」

【4】[he-forum 6945] (2004.4.5)
筑波大学は、就業規則・労使協定が存在しないまま法人に移行
---「国立大学法人法」に反対する大学教職員交流連絡会

━ AcNet Letter 88 【1】━━━━━━━━━━ 2004.04.05 ━━━━━━

任期制再任拒否事件訴訟判決の報道より
全国国公私立大学の事件情報ウェブログより
http://university.main.jp/blog/archives/000721.html
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【1-1】京都新聞朝刊(2004/04/01)
任期制再任拒否訴訟 元京大教授の訴え棄却 
京都地裁「満了で地位喪失」
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任期制教授の再任を拒否したのは学問の自由の侵害だとして、京都
大再生医科学研究所元教授の井上一知さん(五八)が、京大総長や
国を相手に地位確認などを求めた訴訟の判決が三十一日、京都地裁
であった。八木良一裁判長は「井上さんは任期満了によって地位を
失った」などとして請求を却下、または棄却した。

判決によると、井上さんは一九九八年に同研究所教授に昇任し、
二〇〇二年に再任審査を申請した。専門家でつくる外部評価委員会
は再任に賛成したが、研究所教授らでつくる協議員会は再任を認め
ない決議をした。

井上さんは▽恣意的な決議で、学問の自由の侵害にあたる▽大学側
は「何回でも再任される」とだまして任期制に同意させたので、任
期付きの昇任処分は無効−などと主張。八木裁判長は「井上さんは
任期制に同意した上で昇任しており見解は採用できない」と述べた。
さらに「井上さんは同意書を自ら作成して昇任しており、処分の効
果は左右されない」とした。原告の井上さん「不当な判決控訴し争
う」

京都地裁の判決を受け、原告の井上一知さんと弁護団が三十一日夕、
記者会見した。井上さんは「不当な判決でとうてい承服し難い」と
厳しい表情。「任期制ポストへの同意の問題点や、再任拒否決定に
至る不透明なプロセスなど、われわれが問題としてきた部分にまっ
たく触れていない。控訴して徹底的に争いたい」と話した。

原告代理人の尾藤廣喜弁護士は「どのような手段ででも、任期制に
同意させれば人事支配ができるという判決。任期制を導入する大学
が増える中でこの事件の重要性を真剣に考えた形跡がない」と指摘
した。

一方、京大再生医科研の中辻憲夫所長は「研究所の議決機関である
協議員会において適切に評価・審議を行い、所定の手続きを経て決
定したという大学の主張が認められて満足」としている。
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【1-2】 毎日新聞(2004/04/01)
“再任拒否”は同意の任期満了 京大元教授の訴え、地裁が退ける判決
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京都大再生医科学研究所の教授だった井上一知さん(58)が任期
切れに伴い再任を拒否されたのは違法な処分にあたるなどとして、
国や尾池和夫・京都大学長らを相手取り、地位保全と再任拒否処分
の取り消しを求めた訴訟の判決が31日、京都地裁であった。八木
良一裁判長は「同意に基づく任期満了で、処分にはあたらない」な
どとして、井上さんの訴えをいずれも却下、棄却した。

判決によると井上さんは98年5月、教授に就任した。内示後の同
年4月、昇任に必要な書類として5年任期の同意書を提出させられ
た。井上さんは02年4月、同研究所の議決機関の協議員会に再任
を申請。学外専門家による外部評価委員会は同年9月、再任に賛成
したが協議員会は同年12月、再任を否決した。

裁判では、再任否決の処分性や、同意書提出の経過などが争われた。
井上さん側は「外部評価委の賛成を恣(し)意的に覆しており、違
法な『処分』にあたる」「同意手続きは詐欺的で効力はない」など
と主張していた。

八木裁判長は、「原告への任期制の説明は不十分だった」と認定。
否決についても「極めて異例ともいえる経緯。恣意的に行われたの
であれば、学問の自由や大学の自由の趣旨を学内の協議員会自らが
没却させる行為になりかねない」としたが、「同意をした上で昇任
をうけている」として、処分ではないとした。

判決後、井上さんは、「独立行政法人化で今後、増加が予想される
任期制度の問題だけでなく、学問の自由、大学の自由の根幹にかか
わる大きな問題を含んでいる。判決を認めるわけにはいかない」と
話した。井上さん側は控訴する方針。
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【1-3】京都新聞朝刊(4/02)
「大学から市民へ情報発信は使命」 法人化で京大総長
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国立大が「大学法人」に移行したのを受け、京都大の尾池和夫総長
が一日午後、記者会見。大学からの情報発信の重要性を強調し「大
学の研究、教育を分かりやすい言葉で市民に伝える仕組みを作りた
い」と話した。

尾池総長は「研究成果を教育を通じて社会還元することが大学の使
命。法人化が、この使命に有効に働くようにする必要がある」と持
論を展開。「法人化は国の予算支出減が狙いだと思うが、制約が弱
まることも事実。私立大などとの連携も取りやすくなる」と話した。
また、「大学に対する寄付金が所得税控除の対象になるような税制
改革も重要」と強調した。

このほか、京大再生医科学研究所の任期制教授の再任拒否を京都
地裁が認めた判決(三月三十一日)には「任期制にかかわった人が
トラブルになるのは良くない。この判決が判例となるのは良くない」
と懸念を表明。任期制については「部局ごとに決めることで全学で
導入するつもりはない。導入に際し、人材の使い捨てにつながって
はならない」と話した。

━ AcNet Letter 88 【2】━━━━━━━━━━ 2004.04.05 ━━━━━━

2004.3.28 シンポジウム「任期制・年俸制の導入と評価制度は
大学をどうかえるかーー知の生産と教育の在り方を問うーー」より
福井直樹氏(上智大学)
『アメリカの大学における「任期制」と「年棒制」』
http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/20040328FukuiRepAmerika.htm
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「持ち時間が5分ということなので、ごく手短かにお話しします。
僕はアメリカの大学院を出まして、ポスドクになり、それから就職
活動をして、テニュアトラック(将来はテニュアにつながっていく
が、現在はテニュアが付いていないポスト)のアシスタントプロ
フェッサーというので就職しました。最初、私立大学のペンシルヴェ
ニア大学に就職しまして、それから公立大学であるカリフォルニア
大学に移りました。それからずっと、いろんな審査を受けて、テニュ
アをとってフルプロフェッサーになりまして、今度は学科長になっ
て人事をやる側になっていろいろやってきました。それで去年から
日本に戻ってきました。ということで、アメリカに居て唯一とは言
いませんが、一番多く学んだのは大学の人事システムじゃないかと
思うんです(笑)。不本意ながら(研究の時間を取られますから)
いろいろと人事に関わりましたので。各論を今日詳しくお話ししよ
うと思ったのですが、そういう事をするのには、ちょっと時間が足
りないようですので、もし、質問などありましたら、ディスカッショ
ンの中でお答えするということにして、先程、広渡さんのお話を聞
いていまして、いちばん根本的なところを本日はお話しした方が良
いと思います。

根本的なところで、さっきの永井さんや阿部さんの講演なんかとひっ
かけて言いますと、一般に思われていることとは全く逆に、敢えて
刺激的な表現を用いますと、「年俸制」も「任期制」もアメリカの
大学にはほとんど採用されていない、というふうに僕は思います。
これはもちろん極端な言い方でして、部分的にはもちろんこういっ
た制度が入ってきているのですが、そもそも年俸制というのは具体
的にどういうものなのか、今日ここに来るまで実は良く分からなかっ
たので、さっきの永井さんの特徴づけを見て、あっ、そういうこと
を言っているのかと初めて分かったわけでして、もしあれが年俸制
というのでしたら、アメリカの企業ではおそらく広く採用されてい
るのでしょうが、アメリカの大学、特に所謂「研究中心大学」(リ
サーチ・ユニヴァーシティ)ではほとんど採用されていないという
ことだと思います。これがどういうことを意味するかと言いますと、
一般に日本では、市場原理主義が蔓延しているその大元がアメリカ
だというふうに思われているわけですが、そしてそれはある程度事
実なのですけど、大学は違うと言うことですね。アメリカの経済シ
ステムは、もちろん資本制ですから、そして資本制の権化みたいな
ところがありますから、市場原理主義的な動きというのは非常に強
くあるわけです。しかし、大学は経済原理とは異なった原理で運用
されるべきであるというふうに、大学人がアメリカの場合、信じて
いて、そういう信念を守るために、外側の(市場原理が支配する)
社会と常に闘っているというようなところがあるわけです。それで、
ねばり強く闘い続けることによって、学問を動かしているダイナミ
ズムというものは、決して市場原理主義的なものとは相容れない面
が多くあるのだということを(少しでも油断していますと浸食され
ますから)、社会全体に対して間断なく訴え続ける、というのがこ
の何十年間かのアメリカの大学の歩みだったのではないかと思いま
す。

そういった努力のひとつの大きな成果がいわゆるテニュア制度でし
て、テニュア制度というのは(年齢差別に当たるとしてアメリカで
は定年制が否定されていますから)、一度とってしまえば文字通り
の終身雇用です。従って、雇用主としては、アメリカの社会では特
にそうですが、そんなコストの高いものはなるべく廃止してしまい
たいわけです。ですから、もちろん最初はテニュア制度などは存在
しなかったわけです。AAUP(アメリカン・アソシエーション・オブ・
ユニバーシティ・プロフェッサーズ)ですか、アインシュタインが
深く関わっていた大学教員の全国的組合があるのですが、そこが、
非常にいろんな闘争を組みまして、なんとか勝ち取って、一度ひと
つの大学でテニュア制度が採用されると、今度はアメリカの競争社
会の原理が働きはじめまして、他の大学も出さざるを得ないんです
ね。どうしてかと言うと、さきほどお話しにあった大学間競争があ
りますから、優れた研究者の取り合いになる。そして、優れた研究
者は、もちろん身分保証がきちんとある方が落ち着いて研究できる
わけですから、より良い研究環境を求めてそちらに動くようになり
ます。そうなると他の大学もテニュアを出して優れた研究者を自分
の所に呼ばざるを得なくなるのです。そういうようなことが、うま
い具合に働いて、いわゆるリサーチ・ユニバーシティ(研究中心大
学)と呼ばれている大学では、テニュア制度というものが広く定着
してきた、ということです。

このテニュア制度というのは、絶対的な権利、要するに、アカデミッ
ク・フリーダムを守るための絶対的な身分保障なわけです。学問の
自由を守るための絶対的な権利ですから、もちろんそれを一度とっ
てしまったら研究をやめちゃう人がいる、そういう場合はどうなる
んだというような問題が、当然浮上してきまして、そういった問題
は、大学の中で厳しい審査をしてなんとか対処する、外からの介入
は許さないという原理を、アメリカの大学は非常な努力をもって守っ
ているわけです。そしてそのようなきびしい審査を行うためには、
これが根本の問題なのですが、研究成果、教育の成果というものを
どのようにして評価していくのかという問題が出てくるわけで、こ
の問題に関しては、各論に入らないと具体的なことは何も言えない
のですが、一つ評価の問題に関して指摘しておきたいのは、先程阿
部さんが最後の方に色々と、再任審査のあり方、同意の取り方等の
問題を細かく挙げている部分ですね、たとえば、不本意な、あるい
は不当と思われる評価を受けた時にどのようにして本人が異議申し
立てを出来るかとか、その類いのことですね。そういうことも非常
に細かく、例えばカリフォルニア大学などでは決まっています。最
終的にはもちろん外部に持っていって、訴訟を起こすというような
道も開けています。その場合も、先ほど言ったAAUPなどが随分助け
てくれます。まあ、そこまで行く人はなかなか居ないのですが、学
内の、いわゆるオンブズマンというかテニュア・アンド・プリヴィ
レッジ・コミッティーというのがありまして、そこに持っていって
争うということなども起こっています。このように、何重にも、い
わばバックアップ態勢を設けて、学内で処理していく、知識人のコ
ミュニティーの中で処理していくというのがアメリカの大学の基本
的姿勢であって、そこに_役人であるとか産業界の意向であるとか
が介入する余地はない_のです。そして、社会に対しては常に緊張
関係を保ちながら、大学の存在・意義を社会にアピールしていくと
いうダイナミズムが、おそらく、アメリカの大学がいちばん成功し
た例であると多くの国で思われている重要な側面なのであって、決
して市場原理主義的なものが、アメリカの学問が進歩してきた理由
ではないのではないかというのが、内部から見てきた者の率直な意
見です。

まあ、総論で言うとそういうことなのですが、では、業績評価等を
具体的にどのようにして行うのかというような話に入りますと、こ
れは一筋縄ではいきません。もちろん完璧な評価システムなどはど
こにも存在しませんから、個々のケースに関してディスカッション
していかなくてはいけないのですが、全体として見ますと、アメリ
カの大学はこうだという風に、日本の大学改革の文脈でいろいろと
言われている事柄のほとんどは、無知か誤解か、あるいは意図的な
曲解か、そういうものに基づいている。要するに、_結論が決まっ
ていて_(この結論を決めているのが大学人・研究者でないことは
言うまでもありません)、そちらの方に話を持っていきたいがゆえ
に、_アメリカでは云々と言うと、まあ、通りがいいから_、それで
持って来るというケースが非常に多いわけで、_そういう物言いに
は騙されないようにしなくてはいけない_。アメリカのシステムを
日本で採り入れるかどうかはまた別ですし、日本の社会に合うかど
うかも別ですけど、そもそも_事実として「アメリカのシステム」
なるものの認識が間違っている_。間違った認識に基づいていろい
ろと議論をしても空回りしてしまうだけなのではないかと思います。
また、細かいことは色々ディスカッションの時間にでもお話しした
いと思います。」

━ AcNet Letter 88 【3】━━━━━━━━━━ 2004.04.05 ━━━━━━
#転載

  福岡教育大学発 国立大学法人化関連情報 第1号
───────────────────────────────
*転送・転載を大いに歓迎します。
HEADLINE 
〔1〕 情報発信局開設のことば
〔2〕 学長への提言「法人化後の福岡教育大学の運営について」
(3月30日)
───────────────────────────────
〔1〕 情報発信局開設のことば

私たちは、福岡教育大学教員有志です。

去る4月1日、全国に89ある国立の大学・短期大学が法人化されま
した。国立大学の法人化は、十分な国民的論議を経ることなく、ま
た、法人移行に必要な準備期間も絶対的に不足したまま、見切り発
車的に行われました。このような状況のなかで、多くの国立大学は、
大学としての理念やあるべき姿について熟考する間もなく法人移行
作業に忙殺されるあまり、およそ学問の府にふさわしくない「知的
空白」の状態に陥り、様々な歪みを抱えています。これは、日本の
学問や高等教育にとっては、極めて不幸な事態です。

しかしながら、世論は、法人化にともなう国立大学の危機的状況に
ついては、ほとんど関心がないようです。国立大学法人化のニュー
スそれ自体、マスコミでの扱いは概して小さく、せいぜい、「法人
化は49年の新制国立大学の発足以来の改革。文部科学省による護
送船団方式での大学運営から脱し、大学同士の競争を促して教育や
研究の活性化を図る狙いだ」(朝日新聞4月2日付朝刊)といった
紋切り型のコメント付きで報道されるにとどまっています。

むろん、これまで国立大学で働いてきた私たち大学人の姿勢にも、
問題がなかったわけではありません。大学医学部を舞台にした民放
ドラマ「白い巨塔」が高視聴率をマークしたことは、記憶に新しい
ところです。私たち大学人は、ともすれば「象牙の塔」のなかに安
住し、自らの学問や研究室という「たこつぼ」のなかに引きこもり、
その中だけで通用する規範や論理に基づいて行動し、社会や市民と
は没交渉の姿勢をとり続けてきた嫌いがあります。そのため、これ
まで大学が抱えてきた様々な問題について、大学人が社会に対して
積極的に問題提起をしたり、大学人以外の市民と意見交換すること
は、これまでほとんどなかったといってよいでしょう。今回の国立
大学法人化の問題についても同様です。確かに、大学人からは、
「国立大学の法人化により、学問の自由が侵害される」といったア
ピールが社会に対してなされたこともあります。大学人の一般的な
感覚としては、「学問の自由」の重要性は、自明のことです。しか
し、「学問の自由」を主張することがどれだけ市民感覚に訴え、市
民の共感を得られたのか、はなはだ疑問です。市民のなかには、
「国立大学の教官という特権階級の人間たちが自らの既得権益を守
ることに汲々としているのではないか」といった批判的な見方もあっ
たようです。

国立大学で働く大学人は、これまで無意識のうちに「官」としての
意識に絡め取られてきたところがありますが、国立大学法人化によ
り身分が非公務員化されたことをむしろ好機として、もっと市民と
しての感覚を大切にしていくべきであると思います。国立大学法人
化問題についても、市民感覚に訴えかけるようなメッセージを社会
や市民に発信していくことが必要です。例えば、国立大学の今後の
授業料のあり方は、市民にとって重大な関心事であるはずです。法
人化により国立大学の経済基盤が不安定化すれば、授業料値上げへ
の圧力が否応なく高まります。従来、国立大学の比較的低廉な授業
料により高等教育を受ける機会を保障されてきた人たちにとっては、
授業料の値上げは、そうした保障を奪われることを意味します。そ
うなれば、教育をめぐる社会格差が拡大・固定化し、ひていは日本
の教育環境全体の悪化にもつながりかねません。

福岡教育大学は、専任教員数200余名、学部1学年の学生定員6
00余名の小規模な大学です。予算規模も、いわゆる基幹的な諸大
学と比較すると、15分の1〜40分の1です。国立大学法人化の
荒波のなかで、福岡教育大学は、小舟のように大きく揺れています。
それだけに、福岡教育大学は、法人化の問題点が極めて尖鋭的に現
れてくる最前線の現場であるといえます。そのような現場にあって
も、私たち教員は、それぞれの専攻する学問分野において研究に取
り組むと同時に、学生の教育に力を注いでいます。その気概は、基
幹大学に勝るとも劣りません。とりわけ、教育実践を通じて学生ひ
とりひとりの成長を目の当たりにすることは、私たち教員にとって
無上の喜びです。このように大学教育の現場で働く私たち教員から
みると、国立大学法人化に対する文科省や大手マスコミの姿勢には、
強い違和感を感じます。私たち福岡教育大学教員有志は、法人化問
題の最前線で日々学生と向き合う立場から、国立大学のよりより発
展を願い、このたび「福岡教育大学発 国立大学法人化関連情報」
と銘打って情報発信局を開設しました。大学教育の現場にいる教員
の立場や感覚、視点に根ざして、国公私立大学に働く教員や事務職
員のみなさんはもとより、なによりも広く市民のみなさんに対して、
法人化に関連する福岡教育大学の情報を発信していきたいと思いま
す。

福岡教育大学の置かれた状況については、一地方国立大学の「コッ
プの中のさざなみ」にすぎないとの見方をされる方もおられるかも
しれません。しかし、法人化後もなお「横並び意識」が抜けないで
あろう国立大学のなかにあって、福岡教育大学が法人化の好ましか
らざる先例として他大学に悪影響を与え、ひいては日本の高等教育
に対してマイナスの波及効果を及ぼすことを懸念しています。この
ような思いから、福岡教育大学発の情報を発信していきます。


なお、情報発信局を開設する以上は、情報発信人やその連絡先に関
する情報を公開するのが本来のあり方ですが、今回は、公開を見合
わせていただきます。法人化に伴い制定された福岡教育大学就業規
則では、大学の名誉を傷つける行為が禁止され、懲戒処分の対象と
なっています。また、教員に対する懲戒処分については、教育公務
員特例法のもとでは教授会の議を経て行うこととされていましたが、
今回制定された就業規則では、そうした手続が省略されています。
こうした就業規則の運用次第では、教員が大学の利益を図る目的か
ら大学執行部に不利となる情報を公開したり、執行部を公然と批判
する行為についても、恣意的に規制の網がかけられる危険さえあり
ます。このように表現や言論に対する規制を危惧しなければならな
いこと自体、大学においては極めて異常なことです。大学において
自由にものが言えなくなれば、もはや大学の名に値しません。情報
発信人やその連絡先に関する情報については、就業規則やその運用
を視野に入れて必要な防御策を講じた後にしかるべき方法で公開さ
せていただきますので、ご理解を賜りますよう、よろしくお願いし
ます。また、情報の配信を不要とされる方は、お手数ですがその旨
ご返信ください。

(以下:http://letter.ac-net.org/04/04/05-88.php#3 へ)

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ログ:http://letter.ac-net.org/log.php
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アドレスは一部が全角となっているので、使用時には半角に。
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