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Academia e-Network Letter No 87 (2004.04.04 Sun)
http://letter.ac-net.org/04/04/04-87.php

━┫AcNet Letter 87 目次┣━━━━━━━━━ 2004.04.04 ━━━━

【1】京大総長コメント:「井上事件判決を判例としないことが重要」
京都新聞二〇〇四年4月二日社会面

 【1-1】資料「大学の教員等の任期に関する法律をめぐる国会議
    事録の整理」(作成:阿部泰隆・位田央)より
http://poll.ac-net.org/2/shiryou/ninkisei-giji.html#6

━ AcNet Letter 87 【1】━━━━━━━━━━ 2004.04.04 ━━━━━

【1】京大総長コメント:「井上事件判決を判例としないことが重要」
京都新聞二〇〇四年4月二日社会面

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#(判決後、京大総長が「任期制にかかわった人がトラブルになる
のは良くない。この判決が判例になるのは良くない」との懸念を表
明し、任期制については「部局毎に決めることで全学で導入するつ
もりはない。導入に際し、人材の使い捨てにつながってはならない」
とコメントしたことを京都新聞が報じたそうである。「是非行動に
移して頂きたいところである。」と、井上教授を支援している阿部
教授は述べている。

任期制法案の国会審議(1997年)では、再任可能な任期付ポストで
も、再任審査は通常の採用人事の審査と法的には同じであり、再任
可であっても、任期終了とともに失職することが制度の趣旨である
ことを政府が繰り返し強調していた【1-1】。今回の判決は、その
見解がどうやら法曹界の常識である可能性を示している。すなわち、
通常の人事では優れた業績がある人でも採用されないことは普通で
あるのと同様に、優れた業績がある人が再任されなくても、法的問
題は全くないことを京都地裁の判決は明確に主張している。

ほぼ全員に任期を付けようとする大学や部局が少しずつ出ている。
任期を付けることは本人の承諾を必要とするが、業績の有無にかか
わらず再任されなくて構いません、ということを法的に了承するこ
とであることは、どの程度意識されているのであろうか。

今回のように、優れた業績があり、しかも、大学側の言動にかなり
深刻な問題がある場合でも、法的異議申立の道は、まだ可能性が残っ
ているが、困難な事業であることが明かになった以上、任期制ポス
トを一つでも持つ大学(つまり大半の大学は)は、適切な学則を設
け、異議申立を審査する全学的機関を設置することが急務ではない
か。このようなことが続けば大学という場が急速に荒廃する懸念が
ある.)

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【1-1】資料「大学の教員等の任期に関する法律をめぐる国会議
事録の整理」(阿部泰隆・位田央)より
http://poll.ac-net.org/2/shiryou/ninkisei-giji.html#6
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六 恣意的な運用の恐れ、任期切れ教員の救済方法(2)救済手段

【論点】再任の手続について、採用と同様に厳格な審査が行われる
旨を本人に明示して、任期制が円滑に実施されるように努める必要
がある。文部省は再任が拒否された場合、不服申立はできないが、
再任が拒否された場合に非常に不合理な扱いがなされたということ
であれば、当然司法上の救済という道が閉ざされているわけではな
いとした。

(i)そのポストへ入った、再任を望んでいた、来年自分は五年が切
れる、続けてやりたい、仕事も半ばであるというときに再任が拒ま
れる。そうすると、その本人は、現実的にある程度仕事も探さなけ
ればならぬでしょうし、そういうときに救済をされる措置、例えば
訴えることができる、公務員は人事院だとかあるいは労働委員会だ
とかいろいろあるわけですけれども、そういう手だてが保障される
のか、あるいはやはり一定期間公務員としての身分を保障するとい
うような救済措置があってもいいのではないかというふうに私は思
いますけれども、とにかくだめだと言われて三月三十一日になって
しまった、次からは全くの権利もあるいはそういう救済の道もない
ということでは大変だと思うのですが。(山元勉委員・140回-衆-
文教委員会-12号・平成9年5月16日)

〔答弁〕任期制とは、任期満了によりまして当該任期を付されたポ
ストに係る身分を失うことを前提とした制度でございまして、した
がって、再任されない場合もあることは御指摘のとおりでございま
す。したがいまして、再任を認める任期制をとる大学におきまして、
教員を任期つきの職に採用する場合には、再任の手続について、採
用と同様に厳格な審査が行われる旨を本人に明示して、任期制が円
滑に実施されるように努める必要があるというように考えているわ
けでございます。なお、再任を拒否された教員が身分を失うことだ
けを理由として、暫定的なポストやあるいは任期なしのポストに採
用するというようなこと(中略)は、教員の流動性を高めることに
より教育研究の活性化を図るという任期制本来の趣旨からして不適
切なことではないかというように考えるわけでございます。また、
不服審査の対象となり得るかということでございますが、教員の人
事の審査と共通のことでございまして、したがって、これについて
は不服申し立てをするというようなことは考えられないというよう
に考えておるところでございます。(雨宮忠政府委員・140回-衆-
文教委員会-12号・平成9年5月16日)

(ii)公務員でいいますと昇任だとかあるいは降格だとかあるいは懲
戒処分だとかいう身分にかかわる問題については、御承知のように
人事委員会なり中労委なりに提訴をして争う、そういう不服申し立
ての権利があるわけですけれども、この間の答弁では、不服申し立
てができない、こういうふうにおっしゃられたわけです。例えば、
具体的な例でいいますと、本人は再任を厚く希望していた、しかし
審査の結果、どう考えてもこれは私に対する評価が誤っている、重
大な誤りがある、あるいはその再任の拒否が特定のある人の、例は
よくないかもわかりませんけれども悪意による中傷でこれが拒まれ
た、他の人が探されているという状況の中で、私の権利が侵された
と考えたときに、やはり救済する道がないと、これは泣き寝入りだ、
ばっさり切り捨てたということになるだろうと思うのですが、その
道についてお尋ねしたいと思うのです。(山元勉委員・140回-衆-
文教委員会-14号・平成9年5月21日)

〔同旨の質問に菅川健二委員・140回-参-文教委員会-14号・平成9
年5月29日がある。〕

〔答弁〕大学が任期制を導入しようとする場合に、そのポストが一
体再任を許すものなのか許さないものなのか、これもまた大学の定
めるところによるわけでございますけれども、再任をしないのだと
いうように定めた場合には、多分これは本人もそういうことだとい
うことでございますので問題は出てこないかと思うわけでございま
すが、今、先生の御指摘のところは、再任もあり得るというような
ことを大学として定めた場合の扱い、そういうことかと思うわけで
ございます。任期の満了によりまして当該任期を付された職に係る
身分を失うことは、これは法案にも任期の定義ということで書かれ
てあるとおりでございまして、任期制の本来の趣旨からして明らか
なことでございます。任期満了後、引き続き同じ職に採用されない、
本人は希望したのだけれども採用されなかったという場合の不服を
どうするのだ、こういうお尋ねでございます。これは、基本的には
教員の採用選考の場合に、それは人事の選考ということでございま
すので、基本的には通常の採用選考において自分が採用されなかっ
たということに対する不服と同じ性格のものだというように考えざ
るを得ないわけでございます。したがって、このような場合につき
まして、これを採用しないということは処分といういわゆる行政法
上の処分ということには当たらないというように解釈されるわけで
ございまして、今御指摘のような状況のもとで当該教員から人事院
に対して国家公務員法に基づく不服申し立てを行ったといたしまし
ても、これは受理されない。(中略)極めて不合理な扱いがなされ
たという場合に、不服申し立てというようないわゆる行政部内での
手続というものは無理がとは思うわけでございますけれども、非常
に不合理な扱いがなされたということであれば、当然それは司法上
の救済という道が閉ざされているわけではないというように考えて
いるわけでございます。いずれにいたしましても、再任があり得る
というような扱い、これは再任しないという場合も同じでございま
すけれども、一体どういうことになるのかということは、任期制を
導入する場合にはやはり当該教員も含めて、こういうことなのだ、
こういう仕組みになっているのだということを十分あらかじめ承知
しておいていただく、そういう必要があるのではなかろうかという
ことで、任期制あるいは再任があり得るという規定が置かれたから
といって当然再任が保障されるというような誤解を当人が持たない
ような、十分な事前の理解というものを求めておく必要があるので
はなかろうかというように考えておるわけでございます。(雨宮忠
政府委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日)

(iii)すべて個々の、例えば八十九条、九十条ですか、こういうと
ころで保障されている権利があるのですよ。それではこの任期制の
意味はなくなってくるというのか曲がるだろうと、それはわかる。
けれども、(中略)極めて不合理な審査というのか結果が出された
ことに対しては、これは再任される権利はあるわけですから、これ
が認められるかどうかは別です、再任される場合があるという定め
があるときに、自分はそれを希望して、極めて不合理な理由によっ
てこれが認められなかったという場合は、最終的には司法のとおっ
しゃいましたけれども、私はやはり、導入する場合の規則の制定な
り学内の合意という中でしっかりとそのことについては、(中略)
極めて高いレベルの業績評価の基準がきちっとある、あるいは透明
度の高いそういう審理が行われる、そういうことが保障されなけれ
ばいかぬと思うのです。そういうことが欠けていた場合には、極め
て不合理な判定だ、あるいは結果だというふうに思うのです。その
場合には、私は、国公法上の国家公務員としての身分にかかわる問
題として訴えることができるという権利は認めなければいかぬので
はないか。(山元勉委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5
月21日)

〔答弁〕再任があり得るとしておきながら、当人が希望したのにも
かかわらず当該再任の候補者のリストの中に載せられないというよ
うなことは、これは非常に不当なことであるというように考えるわ
けでございますが、ただし、数ある候補者の中の一人として人事選
考が行われた結果、再任が認められなかったということもあり得る
わけでございまして、そのことについて不服申し立てというのはな
かなかしにくいだろうということを申し上げたわけでございます。
もちろん、今先生が御指摘のように、業績評価、これは今回の任期
制に限らず重要なことなわけでございますが、特に今回の任期制の
導入ということをきっかけにしましてさらにその重要度を増すわけ
でございますが、この業績評価というものがきちっとした形で、
(中略)教員の間で支持されるような、できるだけ客観的な業績評
価というものが大学の中で工夫した形で打ち立てられるということ
が重要なことは申すまでもないことでございますが、その努力は努
力として大いにやってもらわなければならぬということでございま
すが、ただし、不服申し立てということに関して申しますと、その
ような難しさがあるということを申し上げたわけでございます。
(雨宮忠政府委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日)

(iv)どうも局長、すれ違いがあるようです。そういうことが大事だ
とおっしゃるわけです、業績評価とかそういうことについて大事だ
とおっしゃるわけです。そういうことが欠けて極めて不合理なそう
いう判定が起こった場合、何人かの候補者がいて透明度の高い比較
がされて、あなたはだめ、こっちの人の方が適任だとなったときに
は、これは、やりたかったのにという単なるそれだけでは提訴はで
きないだろうと思いますけれども、極めて不合理な場合があったと
きというのは、昨日の参考人の先生の一人の意見にも、やはり現在
の大学で三つの問題があるという、その一つのところに人事が極め
て不透明であるということをおっしゃった参考人がいらっしゃるわ
けですね。ですから私は、今の大学のそういう人事のあり方、昇任
あるいは昇格等でそういう不透明さがあるというふうに残念ながら
思いますから、ですから、そのことについてきっちりと、そういう
極めて不合理な場合についてはしっかりと受けとめられる場がある。
例えばこれは、管理機関かもしれませんし、人事院かもわかりませ
ん、私学の場合でいうと労働委員会かも。そういうところの道とし
て司法の道しかないよというのは、これはやはり酷なといいますか、
そういう善意の再任希望というのを妨げることになるのではないか
というふうに思うのです。(山元勉委員・140回-衆-文教委員会-14
号・平成9年5月21日)

〔答弁〕いわゆる人事選考ということに絡んでの不服申し立てとい
うのは、今の制度のもとではなかなか難しいということを申し上げ
たわけでございます。もちろん、それに関連いたしまして、人事選
考ということをめぐりまして諸種のトラブルというものがないにこ
したことはないわけでございまして、そのようなトラブルをできる
だけ少なくするために、先生御指摘のようにできるだけ業績評価と
いうものが客観性を持った、あるいは非常に説得力のあるようなも
のであるべきであること、あるいはできるだけ、一〇〇%透明にと
いうのは人事選考ということにつきましてはなかなか難しいところ
ではございますけれども、しかしできるだけ透明な形にすべきであ
ること、そういうことは当然望まれるわけでございまして、それに
ついては、私どもといたしましても大学にそのような努力は促して
まいりたい、こういうように考えておるわけでございます。(雨宮
忠政府委員・140回-衆-文教委員会-14号・平成9年5月21日)

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