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新首都圏ネットワーク


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Academia e-Network Letter No 86 (2004.04.01 Thu)
http://letter.ac-net.org/04/04/01-86.php
ログ:http://letter.ac-net.org/log.php

━┫AcNet Letter 86 目次┣━━━━━━━━━ 2004.04.01 ━━━━

【1】井上事件、京都地裁判決文
http://poll.ac-net.org/2/shiryou/040331-inoue-hanketsu.php

 【1-1】全国国公私立大学の事件情報ウェブログより
「京大再任拒否事件裁判京都地裁不当判決、
「任期制の恐ろしさ」を全国に知らしめた!」
http://university.main.jp/blog/archives/000702.html

【2】東京都立大学・短期大学教職員組合 のメッセージ2004.3.31

 【2-1】〔付1〕 3.29都立大総長声明

 【2-2】〔付2〕3.31教職員組合中央執行委員会声明

【3】「開かれた協議」の実態 都立大の危機FAQより
http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/kiki-p.html#hirakareta-kyogi

【4】首都圏ネットより 至急情報提供のお願い
http://www.shutoken-net.jp/web040401_7jimukyoku.html

━ AcNet Letter 86 【1】━━━━━━━━━━ 2004.04.01 ━━━━━━

井上事件、京都地裁判決文
http://poll.ac-net.org/2/shiryou/040331-inoue-hanketsu.php

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#(抜粋)

平成16年3月31日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成15年(行ウ)第8号 地位確認等請求事件
(口頭弁論終結日・平成16年2月18日)

  判      決

京都市左京区・・・・・・・・・
原告         井上 一知
同訴訟代理人弁護士  尾藤 廣喜
同          安保 嘉博
同          安保 千秋
同          神崎 哲

京都市左京区吉田本町
被告       京都大学総長
         尾池 和夫

東京都千代田区霞が関1丁目1番1号
被告       国
同代表者法務大臣 野沢 太三
被告ら指定代理人 横田 昌紀
同        亀山 泉
同        田邊 澄子
同        紀  純一
同        渡邊 正子


 主文
                             
1 原告の本件訴えのうち,別紙記載の部分をいずれも却下する。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。

 事実及び理由

・・・・・・

第三 当裁判所の判断  二 争点1について

 5 原告は,本件昇任処分に際しての原告の同意は,任期制に
関する誤った情報提供と必要な情報の不提供により詐欺的にな
されたもので無効であるなどと主張する。

確かに,前記一の認定事実によれば,本件公募要項には,再生
研教授の職が5年の任期制であることは一切明記されていなかっ
たのであり,原告本人尋問の結果によれば,原告の採用内定が
されるまでの間にこの公募が任期付の教授の公募であることが
原告に明確に示されたり,何らかの説明がされていたことはな
かったものと認められる。これらの事実によれば,教授を公募
する再生研としては,それが任期法による任期付の教授の公募
であるのか,任期のない教授の公募であるのかの区別,任期付
の教授の公募の場合は,その任期が満了すれば,法律上は当然
に退職するのであり,再任されることがあり得るとなっていて
も,法律上は,任命権者側に対して再任を求める権利はないこ
とを,公募要領に明記するなどして十分に説明するのが望まし
かったことは確かである。また,前記一の認定事実によれば,
平成10年4月20日ころまでにされた松本事務長の説明も,
5年の任期付の任用であることは明確にしているものの,再任
が繰り返されることが当然であるかのような誤解を与えかねな
いもので,むしろ,任期法による任期制度が新しい制度である
ことからも,任期満了の場合には,法律上は再任される保障は
一切ないことを明確に説明するのが望ましかったものというべ
きである。

しかしながら,前記一の認定事実によれば,原告は,任期法の
規定に基づき,任期を平成10年5月1日から平成15年4月
30日までとされることに同意しますと明確に記載した同意書
を自ら作成して提出した上で,本件昇任処分を受けたことが明
らかであって,前記のような事実があるからといって,任期法
に基づいて,任期を5年としてされた本件昇任処分の法律上の
効果が何ら左右されるものではないというべきである。前記認
定事実のとおり原告は,自分は再任されるものと考えて,前記
同意書を作成したものではあったが,それは,再任されること
を期待していたのにすぎないといわざるを得ない。

本件昇任処分は,任期法に基づく5年の任期付の任用として法
律上効力があるものというべきである。

・・・・・・

四 なお,原告は,争点1の原告の主張アの主張をするとともに,
甲40,41,57の1ないし3の各意見書を援用し,本件昇
任処分による任期中に,原告は合理的な手続によって再任の可
否を判断してもらう権利を有するというべきであって,恣意的
な再任の拒否は,原告の権利を侵害するものである,再任用の
拒否は,法令に基づく再任申請権の侵害か,又は学問の自由の
恣意的侵害防止の権利を侵害するものとして,教授を失職させ
る不利益処分と解することもできるなどとも主張する。

確かに,任期法に基づく任期制は新しい制度であり,原告に対
する本件昇任処分の際の任期制の説明は不十分なものであった
といわざるを得ない上に,原告の再任の可否については,前記
認定事実によれば,外部評価委員会の構成員が全員一致して再
任を可とする本件報告書を提出しているのに,再生研の所長や
教授らで構成する協議員会は結局これを全面的に覆して再任を
認めない旨を決定したもので,このような極めて異例ともいえ
る経緯に至ったことについては,原告は予想外のことであった
と考えられる。また,憲法23条が保障する学問の自由を確保
する趣旨で,国公立大学の教授の選考は,教授会の議に基づき,
学長が行うものとされ(教育公務員特例法4条5項参照),再
生研の任期制の教授の再任も,前記のとおり,教授会に相当す
る協議員会が決定することとされているのであり,仮に,原告
の再任を可としない旨の協議員会の決定が恣意的に行われたの
であれば,それは学問の自由や大学の自治の趣旨を大学内の協
議員会自らが没却させる行為にもなりかねないものというべき
である。協議員会は,任期制の教員から再任審査の申請があっ
た場合には,所定の手続に従って公正かつ適正にこれを行わな
ければならないのは当然のことというべきであり,任期法の制
定に当たって衆参両議院でされた附帯決議も,その運用が適正
にされることを求めていることは明らかである。

しかしながら,原告は,前記判示のとおり,任期制であること
を承知する旨の同意をした上で本件昇任処分を受けたのであり,
協議員会の前記のような職務も,任命権者や手続に携わる者の
職務上の義務であって,再任審査の申請をした者に対する関係
での義務とまではいえないというべきである。そして,法律上
は,任期制の任用による教員は,任期満了の後に再任してもら
う権利までは,これを有するものではないと解され,原告が再
任されなかったことが,憲法上又は法律上,原告個人の何らか
の権利を侵害するものとして,これを抗告訴訟の対象になると
解することは,現行法上は困難といわざるを得ない。原告の上
記見解は,いずれも採用することはできない。

・・・・・・

(別紙)

一 被告京都大学総長に対し,以下の裁判を求める部分

1 被告京都大学総長が平成14年12月20日付でした原告を京都大学再生
医科学研究所教授として再任しないとの処分を取り消す。

2 被告京都大学総長は,原告に対し,平成15年5月1日付で発効する原告
を京都大学再生医科学研究所教授として再任する旨の処分をせよ。

二 被告らに対し,以下の裁判を求める部分

3 原告と被告らとの間において,被告京都大学総長が平成10年5月1日付
でした原告を京都大学再生医科学研究所教授に昇任させる処分に付された「任
期は平成15年4月30日までとする」との附款が無効であることを確認する。

━ AcNet Letter 86 【2】━━━━━━━━━━ 2004.04.01 ━━━━━━

東京都立大学・短期大学教職員組合 中央執行委員会のメッセージ

───────────────────────────────
各位

2004.3.31 東京都立大学・短期大学教職員組合 中央執行委員会

これまで都立四大学と教職員組合の闘いに共感と支援と送ってくだ
さってきている全国の仲間、諸兄姉にマスコミ報道では伝わらない
現状を報告いたします。できればまわりの方々にもお伝え願いたい
と思います。

去る3月29日に、「拡大教学準備委員会」および「第2回経営準
備室運営委員会」が開かれました。3月23日の管理本部、理事長
予定者と四大学学長による話し合いに基づき、「拡大教学準備委員
会」に都立大の茂木総長が参加し、これまでに比べて実質的討議が
行われた結果、同日付で〔付1〕に示す「総長声明」が発表されま
した。

この総長の見解に対して、教職員組合は3月31日、別記〔付2〕
のような中央執行委員会の声明を出しました。その背景となった、
われわれ組合の現時点での事態の評価は以下の通りです。

(i)「教学準備委員会」の大学側委員が、これまでのような「個
人としての」学長、学部長ではなく、現大学の正規の機関を代表
する者として位置づけ直すことが確実に実行されるなら、「設置
者と現大学との正常な協議体制を」という教職員のみならず学生、
院生や「都民の会」など広範な人々の要求に沿ったものであり闘
いの重要な成果である。

(ii)喫緊に迫った設置申請のためとはいえ、管理本部がいくつか
の重要な点で実質的譲歩(人文系の大学院構成で人文学部の要求
を容れている、「単位バンク」による教員組織のカリキュラム編
成権や学位認定権の侵害につながる制度の後退、人文や理等の組
織的な意思確認書提出保留を事実上不問に付す等)を行ったこと
は、「四大学教員声明」、2.28日比谷集会等の運動を背景に
多くの教員が「意思確認書」の不提出で団結して交渉を継続した
成果である。

(iii)しかし、管理本部が態度を軟化させたのは、是が非でも設
置申請を行うための擬態である可能性は高く、いささかでも警戒
心を解くべきではない。

(iv)管理本部はいまだに意思確認書の形式にこだわっており、と
くに依然として提出していない経済学部近代経済学グループ
(COEグループ)の「切り捨て」をちらつかせている。あらため
て、この意思確認書による教員の分断攻撃を許してはならない。

(v)また、新大学の学部長予定者として露骨に管理本部に追随し
てきた教員を指名してきており、「指名制度」そのものへの反対
運動ともに批判を強めなければならない。また、この指名された
教員だけで4月以降の教学準備委員が構成されることを阻止しな
ければならない。

(vi)したがって、現在の最大の課題は、可能性として出ている、
「教学準備委員会」と「経営準備室運営委員会」における「正常
な協議」を実体化させることである。そしてそこで、以下のよう
な事項をオープンな協議で審議させることである。


・新大学院設計のWGに人文、経済、理を含む各研究科代表を参
加させること

・助手の意思に反する強制配置、移動をさせないこと

・学生組織、院生組織と教学準備委員会との協議を実現すること

・「経営準備室運営委員会」「教学準備委員会」と「四大学教
員声明の会」、「開かれた大学改革を求める会」や「都民の会」
などとの協議を実現すること

・任期制、年俸制を教育・研究の面から審議すること


一方、おそらく管理本部が意図的に流したものと思われるのですが、
一部のマスコミで、教職員の大多数が「意思確認書」を提出し、あ
たかも知事の強引な手法に大学側が屈服したかのごとく思わせる報
道がなされています。管理本部の常套手段ですが、3月9日付けの
山口管理本部長、西沢学長予定者連名の「意思確認書未提出の教員
を切り捨てる」という恫喝に屈して設置申請準備が進んでいるよう
に見せようというマスコミ操作です。

確かに、この間の都立大総長や部局長メンバーによる公式、非公式
の管理本部との折衝、交渉は切迫した時間との闘いでもあり、実情
が分かりにくいきらいもありました。当然、教職員組合は独自の判
断で、事態の打開と来るべき法人化への移行に備えた宣伝や集会、
団体交渉などを行ってきましたが、敢えて都立大学執行部と管理本
部との交渉に介入しない立場を取ってきました。しかしながら、事
態が一定の前進を見せ、しかもそれがいまだ不安定な状態にある現
在、協議体制の確立への動きを後退させず、すべての教職員と学生
院生の学び研究する権利を守るために前述のような当面する課題を
掲げて、理事長・学長予定者を含む管理本部ならびに各大学執行部
に要請、要求行動をいっそう強めてゆきます。

併せて、国立大学や国立研究所の運動、闘いに学びながら、非民主
的な法人組織構想そのもの変更を要求し、法人移行に伴う勤務・労
働条件の劣悪化、とりわけ前代未聞の非常識な任期制、年俸制の押
しつけに対しては断固として闘うことを表明致します。

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