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新首都圏ネットワーク

『南日本新聞』社説 2004年4月1日付

【国立大法人化】地域密着で生き残りを


 全国89の国立大学が国立大学法人として新しい一歩を踏み出した。国直轄
から切り離して、大学の自主性、自律性の確立を目指す戦後最大の大学改革だ
が、大学の選別化の加速、格差拡大も招きかねない。

 法人化は、大学側の裁量権を拡大させる一方で教育や研究に対する成果を求
めている。18歳人口の減少など大学を取り巻く環境はただでさえ厳しく、存
在意義を示さないことには生き残れない。

 地方の大学のほとんどは地域貢献に活路を見いだそうとしている。サテライ
ト教室や公開講座などは開かれた大学、地域還元を目指すなら当然のことだ。

 地域に根ざした研究への取り組みは独自色を打ち出すことにつながる。文部
科学省が優れた地域貢献プランに対して設けた優遇制度を積極的に活用したい。

 国は2年前から高水準の研究に重点的に予算を配分する21世紀COE(中
核的研究拠点)プログラムを始めた。選ばれれば、特定分野の研究拠点として
何よりの看板となるのは間違いない。

 だが、鹿児島大学は残念ながら過去2年採用されず、鹿屋体大は博士課程の
設置で本年度ようやく"挑戦権"を得た。長年の実績がある旧帝大に比べ、地方
の大学の研究はCOEに採択されにくいようだが、嘆いてはいられない。地方
のハンディを地の利に変える意気込みで取り組んできた校史を思い起こしたい。

 国立大学法人の運営には経営感覚が欠かせない。産学連携で研究費を稼ぐ才
覚も必要になってきた。運営費は国から交付されるが、従来のように学生数や
教官数に応じて配分されるわけではない。

 法人化に伴い、大学は研究や運営などについて6年分の中期目標と中期計画
の素案を立てなければならなくなった。いわば公約だが、計画の最終的決定、
認可権限は文科省にあり、目標の達成度が評価され、交付金の額に反映される。

 これによって自由な研究の芽が摘み取られるような事態があってはならず、
素案の審議過程は公表されるべきだ。

 評価は第三者機関が行うが、規模や研究分野が異なる大学を同じ基準で評価
できまい。評価基準の明確化は急務だ。短期的成果に目を奪われがちだが、す
ぐに成果が出ない分野への配慮もほしい。

 何よりも求められるのは大学内部の意識改革だ。これまでのような孤高の姿
勢、硬直した大学運営は通用しない。地域や時代のニーズにこたえられる魅力
ある大学を一丸となってつくり上げたい。