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新首都圏ネットワーク


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Academia e-Network Letter No 85 (2004.03.31 Wed)
http://letter.ac-net.org/04/03/31-85.php

━┫AcNet Letter 85 目次┣━━━━━━━━━ 2004.03.31 ━━━━

【1】都立大総長声明 2004.3.29
「意見広告の会ニュース」No 121(2004.3.31)より

【2】 Kyoto Shimbun 2004.03.31 News
任期制訴訟 教授の請求を却下 京都地裁「任期は同意の上」

http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2004mar/31/W20040331MWB2K100000047.html

【3】インターネットメディア BNN の連載 2004.3.23-3.30 全5回
<国立大学法人化 北海道大学教官の「憂鬱」> 文:浅野
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_cd=H20021021885&news_genre=17
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_cd=H20021021886&news_genre=17
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_cd=H20021021888&news_genre=17
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_cd=H20021021899&news_genre=17
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_cd=H20021021904&news_genre=17

【4】発行人の挨拶より

 【4-1】北海道大学理学部教授会 2004.3.4

 【4-2】北大のみなさまへ 2004.3.31

━ AcNet Letter 85 【1】━━━━━━━━━━ 2004.03.31 ━━━━━━

都立大総長声明 2004.3.29

「意見広告の会ニュース」No 121(2004.3.31)より
 ニュース配信登録は qahoujin@magellan.c.u-tokyo.ac.jp
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全学の教員のみなさんへ

2004年3月29日拡大教学準備委員会とその評価について

標記の件について、その主な内容を報告し、総長としての評価をお
伝えします。

1.3月23日、総長の呼びかけで、総長・学長、大学管理本部長、
理事長予定者の懇談 会が開催された。

(ア)そこでは、2005年(平成17年)4月、新大学を開設す
べく、大学の代表たる総長・学長、大学管理本部長、学長予定者、
理事長予定者による十分な協議を行いつつ準備をすすめることが確
認された。

(イ)経済学部の経済政策専攻(COEグループ )も新大学に参
加する方向をとるよう働きかけを行うこととなった。

2. 3月29日、第7回教学準備委員会において、おおむね合意し
た内容ないし方向性のうち、重要と考えられるのは、以下のとおり
である。

(ア)上記1の(ア)をあらためて確認した。

(イ)新大学は教育と研究の一体となった総合大学とする方向で議
論が行われた。より具体的には、大学院部局化の方向をとり、基礎
研究も位置づけるなどである。

(ウ)学部等の名称について、これまでの仮称とは別のものを採用
する可能性について議論した。また、単位バンク等については継続
して協議することとなった。


3. 昨年8月1日以降の経過を念頭におき、3月23日の懇談会お
よび3月29日の教学準備委員会の内容を評価すると、総長として
は、そこに重要な前進があったと考える。


━ AcNet Letter 85 【2】━━━━━━━━━━ 2004.03.31 ━━━━━━
Kyoto Shimbun 2004.03.31 News

任期制訴訟 教授の請求を却下
京都地裁「任期は同意の上」
http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2004mar/31/W20040331MWB2K100000047.html
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任期制教授の再任を拒否したのは学問の自由の侵害だとして、京都
大再生医科学研究所元教授の井上一知さん(58)が、京大総長や国を
相手に地位確認などを求めた訴訟の判決が31日、京都地裁であっ
た。八木良一裁判長は「井上さんは任期満了によって地位を失った」
などとして請求を却下、または棄却した。

判決によると、井上さんは1998年に同研究所教授に昇任し、2
002年に再任審査を申請した。専門家でつくる外部評価委員会は
再任に賛成したが、研究所教授らでつくる協議員会は再任を認めな
い決議をした。

井上さんは▽恣意的な決議で、学問の自由の侵害にあたる▽大学側
は「何回でも再任される」とだまして任期制に同意させたので、任
期付きの昇任処分は無効−などと主張。八木裁判長は「井上さんは
任期制に同意した上で昇任しており見解は採用できない」と述べた。
さらに「井上さんは同意書を自ら作成して昇任しており、処分の効
果は左右されない」とした。

━ AcNet Letter 85 【3】━━━━━━━━━━ 2004.03.31 ━━━━━━

インターネットメディア BNN の連載 2004.3.23-3.30 全5回
<国立大学法人化 北海道大学教官の「憂鬱」> 文:浅野

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第1回 2004.3.23
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_cd=H20021021885&news_genre=17

文部科学省が「100年に1度」を標榜する大改革の是非。

3月18日、全国の国公私立大学151校の教員有志564人が、東京都議
会文教委員会の「首都大学東京」の審議に合わせ、都議会議員に意
見書を提出した。

意見書の概略は「東京都立4大学および横浜市立大学の法人化準備
が、各地方政府首長の強い関与の下で進められている。わたしたち
大学教員有志は、両地域の公立大学構成員の力強い動きを大学の自
律の発現として全面的に支持し、東京都議会および横浜市議会に対
し、設置者権限を濫用する行政行為を看過しないよう要請する」と
いうものだ。

「首都大学東京」は、東京都立の4大学を統合し、05年4 月に開校
する予定の新大学の名称。

当初、石原慎太郎都知事は、東京都立大を含む4大学を統合し、新
たな大学を開校する方針を示していたが、昨年8月、4校を廃止し全
く新しい大学を設立する構想を発表した。教官や学生の反発をよそ
に、トップダウンで改革を進めている。

上記の意見書は、石原都知事のこうした改革に警鐘を鳴らすものだ
が、改革という名の下、同様の措置が、全国の国立大で講じられる
可能性がある。

(以下略)
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第2回 2004.3.24
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_cd=H20021021886&news_genre=17
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第3回 2004.3.26
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_cd=H20021021888&news_genre=17
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第4回 2004.3.29
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_cd=H20021021899&news_genre=17
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第5回 2004.3.30
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_cd=H20021021904&news_genre=17

━ AcNet Letter 85 【4】━━━━━━━━━━ 2004.03.31 ━━━━━━

退職にあたっての発行人の挨拶

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【4-1】北海道大学理学部教授会 2004.3.4
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「最近、理科離れ、ということが問題になっています。科学の魅力
を伝えなければ、ということで政府もお金をかなり使っているよう
です。

この問題について私は一つの仮説をもっています。理科離れは、整
合性が今の日本で軽視されている、ということの影響ではないかと
いう仮説です。理科への興味を支えるものは、経験について整合的
な全体像を形成したいという欲求にあるように思います。これは論
理的というよりはもっと本能的なものであると思います。

私達研究者は専門分野では、整合性について鋭い感覚を形成して維
持していますが、現実の世界では、いわば頭のスイッチを切り替え
て、整合性には強い関心を持っているとは言えません。しかし、そ
ういう「器用」なことは子供にはできず、現実の社会における混乱
が、整合性の感覚を麻痺させてしまっているのではないかと想うの
です。

その意味では、スーパーサイエンスなどのことよりは、島村先生が、
地震予知などできない、地震のメカニズムを理解することの方が重
要である、という趣旨のことを最近の著作で主張されました。これ
は、関連分野への予算配分に影響することと想像され、大変勇気の
いることではなかったかと推察しておりますが、科学者が損得を離
れてこのように真実を語ることは、理科離れへの根本的対策として、
税金を湯水のように使うよりはるかに効果があることではないかと
感じました。「真実」を重視するという姿勢に子供は実に敏感だと
想うからです。

こういった文脈で考えたとき、国立大学の独立行政法人化の経緯は
たいへん残念なことでした。関係者は責任感を持って取り組んでお
られたとは思いますが、説明できるような解決はされなかった、い
わば、説明責任をとらなかった、と思います。国立大学制度を廃止
し独立行政法人制度を大学に流用することは、学問の普遍性や多様
性を保つ機構を消失させ、また、大学間の格差を拡大させますから、
「大義」がありません。そのため、国立大学の独立行政法人化は、
大学が保身に走ったとしか、外からは見えません。

若干修正されたとはいえ国立行政法人制度でも、winner takes all
の様相に拍車がかかり、少数派切り捨てが進むことは構造的に不可
避です。この問題は、「社会的正義」の欠如の一例です。

少数者が多数者を支配しているときには、「最大多数の最大幸福」
が社会的正義でしたが、民主主義の現在は、多数派が自分の家の室
温を1度上げるために少数派の生命を危険に曝す、という現象が起
きています。これは正義に悖るのではないか、というのがロールズ
の正義論の出発点だと思います。winner-takes all の社会は、こ
の種の社会的正義が欠けており、それを素朴に嫌悪する子供は、正
義の欠如への失望の延長として真理を基盤とする科学への無関心が
広がっているのではないか、と推測されるのです。

ところで、少数派も切り捨てない社会的正義はどいういう基盤の上
に可能か、という難問があります。「言論の自由」という基本的人
権がありますが、多数派は黙っていても思い通りになるので何も言
う必要はありませんから、これは、少数派を守るために設定された
権利とも言えます。

言論の自由への脅威は、外からのものと内からのものとがあります。
法人化批判はかなり以前に少数派となってきていますが、その言論
について外的な脅威がなかったことについては、北大や理学部に感
謝の念と敬意を抱いています。

しかし、一方、言論の自由には、内的には種々の障害があるように
思います。たとえば、専門的知見が深くなればなるほど「わかる」
ということの感覚が鋭くなりますので、専門外のことについては
「そこまで断言できるのか」という気持ちから発言がしにくくなる、
ということがあります。また、専門以外で名前が出ることについて
は多くの人は無意識のためらいがあるのではないでしょうか。また、
自分が所属する組織に迷惑をかけたくない、という思いが大きなブ
レーキとなると思います。

そのためか、言論の自由が外的に保障されていても、それはほとん
ど利用されてはいないように思います。利用されていないためか、
この自由への外的な保障はしだいに失われつつあります。言論の自
由が失われることは、多数派が少数派の発言を許さない、というこ
とに本質がありますので大きな問題ですが、それ以前に、言論その
ものの効力が奪われてしまっている現象の方が深刻な問題のように
も思います。この現象は、小泉氏が首相在職1000日目にメール
マガジンで述べている決意「批判に負けずに総理大臣の職務を全う
したい」に象徴的に現れています。

その意味で、大学関係者は言論活動そのものだけでなく言論の場を
維持し拡大する潜在力をもっていることは重要なことと思います。
nobless obligeという言葉があります。これは貴族には貴族の義務
がある、ということでしたが、何かについて優れた者には、それを
利用するだけでなく、それに伴う義務がある、ということで、研究
者の場合は、社会的多数派の嘘はすぐに見えるわけですから、そう
いったことを色々な自然な機会に発言することが重要なのではない
かと思います。

「関心税」という言葉がありますが、大学教員には、普通の人たち
以上に種々の問題に「関心」を持つことが義務であろうと思います。
そうすれば、数年に一度は、自分の専門の文脈で自然に発言する機
会があるように思います。ぜひそういう機会を活されるよう願って
います。(以下略)」

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【4-2】北大教官のみなさまへ 2004.3.31
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To: hu-members@...
Subject: お礼
From: tjst@ac-net.org
Date: Wed, 31 Mar 2004 00:58:06 +0900
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北大のみなさま

理学研究科の辻下です。本日、国立大学を退職するにあたり、
hu-members 宛の最後の発信として、お礼を申し述べたいと思いま
す。

国立大学制度を廃止して、国立大学を独立行政法人にすることにつ
いて、現場の率直な考えを社会に伝えることは、国立大学教員とし
ての義務と考え、この数年間、試行錯誤をしてきました。政府の方
針を一構成員が執拗に批判することを黙認することは、組織として
種々の不利益を受ける懸念があり、実際に不利益を受けていたと推
測しています。それにもかかわらず、所属する専攻、部局、そして、
北大から、これまで干渉はありませんでした。このことについて、
これまでの職場であった北大に誇りを感じると共に、北大のみなさ
まに深く感謝しています。

国立大学制度の廃止と期を同じくして国立大学を退職することは意
図したことではありませんが、法人化への対応に奔走されている同
僚の方々には申し訳ない思いがしています。特に、多忙の中、過半
数代表候補者として就業規則案を根本から検討し、多くの問題点を
指摘し改善に尽力しておられる、理学研究科の渡邊信久さんには敬
意の念を禁じえません。

国立大学にとっては全く経験のない大学経営という業務を、不明朗
な成果主義の圧力下で背負うことの困難は、想像するに余りありま
すが、北大のみなさまが、この困難だけに気をとられてしまうこと
なく、これを契機に、全構成員が創意工夫の意欲に満ちた大学に、
北大を変身させることを目指されることを期待しています。多くの
国立大学がそれを目指すことを期待しています。

明日からは私立大学教員として、これまでと同様に、教育と研究に
取組みます。大学教員は、日本にわずか十数万人しかいない、社会
的にマイナーな存在でしかありませんが、共有している価値観を明
確にしていくことで国公私を超えた連帯が形成され、発言力のある、
現代の価値観に埋没していないセクタが形成されていくことは、暗
雲が全世界に広がりつつある今、特に意義があることと思います。

ネットの世界では、関心の遠近以外には、距離というものはありま
せん。これまで同様に、よろしくお願いいたします。

辻下 徹
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#(国立大学を中途退職し、明日から私立大学で教育と研究に従事
します。AcNet Letterは諸般の事情が許す範囲で続けたいと思って
おります。)

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編集発行人:辻下 徹 admin@letter.ac-net.org
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