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BNN 2004年3月29日付 国立大法人化 北海道大学教官の「憂鬱」 第4回 文: 浅野 「国の方針にそぐわなければ、いずれ予算が削られてしまう」。 第4回は、法人化に対する学生の反応などを北海道大学の5人の教官に聞いた。 ――学生は、法人化の問題をどう捉えているのか。 D 我々が危惧していることを、学生はそれほど心配していない。大学で自 分のスキルアップを図りたいと思っている学生が多く、授業を選択する際も、 ずらりと並んでいる教授を見て、この教授は社会に貢献することを行っている とか、役立つ研究を行っているという基準で判断している学生が多いのが事実。 E 学生は大学で基礎知識を身に付けようというより、大学に専門学校的な 部分を要求している部分がある。 D 大学にとって改革が必要な側面があるのは当然だが、すべての国立大が 専門学校的に変えられるのはおかしい。 E 他国の国立大の場合、古臭いものは古臭いまま残っていながら、専門学 校的なところも併せ持ち、それぞれが個性を保持している。しかし日本の場合、 88の国立大が全部同じパターンになってしまうのではないかという危惧がある。 D 各大学が個性を輝かせたいと思っても、法人化すれば目標計画に「これ までの古い学問を堅持します」などということは書けないためだ。 ――文部科学省は、法人化の導入を「それぞれの創意工夫による『個性輝く 大学づくり』や世界最高水準の教育研究の展開」のためとしている。 A 法人化された後のほうが、各国立大はより没個性的になるのではないか。 E 例えば、コンビニには全国どこでも同じ商品が取り揃えてある。極端に 言えば、大学もそれと同じことになり、基礎知識や専門性は二の次になる。 A 国は、バイオ、ナノテクノロジーなど4つの分野の発展を重点項目に掲げ ている。基本的に、大学もそれらの発展に貢献するような形に再編したいわけ だ。 それにともない、国は国立大の法人化を進め、計画を自主的につくり、数値 目標化しなさいとし、評価は予算配分に直結させると言っている。国の方針に そぐわなければ、いずれ予算が削られてしまうことはみんな分かっている。 D 各国立大は教官の任期制の導入や、組織の再編、学生のニーズに合う学 科を揃えるなどを基本目標に盛り込んでいるが、基本的な方向性はすでに国が 固めているため、各大学が自由に個性を尊重しながら進めることのできる改革 ではない。 この法人化で、88の国立大が新たな企業となるが、本部は文部科学省なり内 閣府となる。民間企業と同じで、本部が経営目標を立て、各支社がそれに従っ て努力し、営業成績が評価されるという形だ。 ――国からの"束縛"を逃れることは可能か。 E 逃れたければ、民営化しなさいというのが国の考えだ。 C 私立大学においても、国費が投入されなければ運営できない状態にある ため、税金に頼らない大学は維持できないはずだ。 E もともと教育は、見返りが計算できた上で投資しているものではない。 法人化は見返りを期待することになるため、教育に対する根本的な見方が変わ ることになる。 以下、次回に続く。 |