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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Academia e-Network Letter No 84 (2004.03.30 Tue) http://letter.ac-net.org/04/03/30-84.php ─────────────────────────────── 3月31日(火)午後4時、井上事件判決 京都地裁: 地下鉄丸太町駅1・3・5番出口から徒歩5分 ━┫AcNet Letter 84 目次┣━━━━━━━━━ 2004.03.30 ━━━━ 【1】都立大の危機 --- やさしいFAQ 【1-1】L-14 2004年3月29日配信の共同通信ニュースには,「教 員の96%新大学へ移行 都立大めぐる混乱収拾へ」とい う記事が出ていたのですが,その真相は? http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/kiki-l.html#ikaku-shinsou 【1-2】D-7 西澤学長予定者が,「科学」(2004年4月号,462-466) に書いた記事をどう思いましたか? http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/kiki-d.html#nishizawa-abstract 【2】永岑氏「大学改革日誌」 2004年3月30日(2) http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/SaishinNisshi.htm 【3】琉大教授ら撤回求める/文科省、センター試験作成者公表へ 沖縄タイムズ 2004.3.26 http://www.okinawatimes.co.jp/day/200403261300.html#no_4 【4】ビンソンマシフ氏(国立大学事務官)からのお便り 3/3,3/29,3/30 ─────────────────────────────── ━ AcNet Letter 84 【1】━━━━━━━━━━ 2004.03.30 ━━━━━━ 都立大の危機 --- やさしいFAQ より ─────────────────────────────── 【1-1】L-14 2004年3月29日配信の共同通信ニュースには,「教員の9 6%新大学へ移行 都立大めぐる混乱収拾へ」という記事が出 ていたのですが,その真相は? http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/kiki-l.html#ikaku-shinsou ─────────────────────────────── ポーカス博士 yahooニュース速報の共同通信ニュース(*1) に載っていたな。「東 京都が都立の4大学を統合して2005年4月に開設予定の「首都 大学東京」に4大学の教員の約96%が移行する見通しになったこ とが29日、分かった。」と報道された。さらに,「一時は新大学 構想に対する反発から都立大教員の6割近くが新大学への就任意思 確認書を提出せず混乱が広がっていたが、事実上収拾へ向かうとみ られる。都は教員配置を固めた上で4月下旬、文部科学省に設置認 可を申請する。」となっているが,その真相はちょっとこみいって いる。ここで意思確認書の話を書きたくても書けなかった事情があ る。簡単に説明しよう。 (*1)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040329-00000228-kyodo-soci (i) 3月4日(木): 都立4大学学長,理事長予定者,学長予定者, 管理本部長のトップ会談が開かれる予定だったが,よく分からない ところから横やりが入りキャンセルになった。 (ii) 3月8日(月): 急遽,都立大総長が管理本部に呼ばれ,説明 を受け,翌日には管理本部長と学長予定者連名の文書が配布される (いわゆる恫喝文書)。 (iii) 3月9日(火): 3月8日の総長と大学管理本部長の会見に係 る評議会見解が発表される。 (iv) 3月23日(火): 都立4大学学長,理事長予定者,管理本部長 のトップ会談が開かれる(学長予定者は欠席)。 (iv) 3月29日(月): 第7回教学準備委員会が開かれる。 まず,トップ会談(3/4)がキャンセルされてしまったこと。せっか く話し合いの場が設定されて,当事者が集まる予定になっていたの に,別の所からの圧力がかかりキャンセルになったという噂だ。そ の噂の背後には,大学管理本部と知事,副知事のあたりの力関係・ 人間関係がからまっているという噂で,真相は分からない。その結 果,総長が管理本部に呼ばれ(3/8)恫喝文書(3/9)と同じ内容を告げ るられることになった。話し合いの土壌はここで一旦とぎれてしまっ た。 都立大学総長や一部の学部,教員達は,管理本部との話し合いの場 所を作ろうと努力した(今度は,横やりが入らないように気を使っ た)。管理本部側も一部でかなり軟化し,話し合いの機運が高まっ た。教学準備委員会(3/29)に先立ち,管理本部の知事や副知事の所 でのブリーフィングが行われた。そして,そのあたりのタイミング を見計らって人文学部の意思確認書がまとめて事務局長に提出され た(3/22)。提出の仕方は,個人単位の署名・捺印を拒否して<まと めてドーン>方式だった (評議会決議の精神に反するという批判も あるが,このような裏技で,「威嚇」が無効になり,問題の焦点が 4月末の意思確認書に移ったという認識もある)。これで,管理本部 としては,「意思確認書が人文学部からでました」と胸を張って報 告でき,人文学部としては,「これを機会に話し合いをして大学院 を作っていきましょうね」という下地を作ったようだ。本当に有効 なのかどうかは分からない。その結果,経済のCOEグループとその 他の絶対意思確認書には屈しないという態度表明をしている一部の 教員を除くと,意思確認書が出そろったことになる(何が書いてあ るかは分からない意思確認書だが,管理本部は今回,その内容につ いては一切問題にしていない。とにかく提出者の数が欲しいよう だ。)。3 月23日にトップ会談が無事に開催され,今後,何らかの 形で「話し合い」をするという方針がようやく口頭で了解されたと いう噂だ(口約束というのが気になるが)。 3月29 日の教学準備 委員会の内容に関しては,まだ情報をつかんでいないが,人文学部 では緊急長時間教授会が開かれる予定だ。 さてさて,お待たせしたが,「教員の96%新大学へ移行 都立大 めぐる混乱収拾へ」というのは本当だろうか?それは,4月末の就 任承諾書の提出率を見ないと分からない。一時的に混乱が収拾され る方向に向かっているように見えても,4月末の就任承諾書提出を 巡る混乱,その何ヵ月か後に予定されている法人就任承諾書提出に あたっての混乱が確実に起きる。その前に定款の案が発表されるは ずなので,そこでも任期制に関する議論が高まるじゃろう。 ─────────────────────────────── 【1-2】D-7 西澤学長予定者が,「科学」(2004年4月号, 462-466)に書いた記事をどう思いましたか? http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/kiki-d.html#nishizawa-abstract ─────────────────────────────── ポーカス博士 公立大学協会会長でもある西澤学長予定者は,教学準備委員会の座 長でもあるので,これまでの「首大」に関する議論や経過を熟知し ているはずじゃが,これまであまり声が聞こえてこなかった(大学 院の理念には驚かされたが)。というのも,座長という職務上,積 極的に自分の意見を述べる機会がなかったからだろう。そこで,今 回の記事に期待をしておったが,結論から言うと幻滅した。まずは, 「公立大学の改革」と題された記事のアブストラクトを紹介しよう。 ───────────────────────── 国立大学は独立法人化によって給与を調整出来るように なるが,評価を受けるという新しい困難も得る.公立大 学は地方自治体密着なので外圧による改革を強いられる ことは少ない.しかし,地元対応を活かして,現物主義 の研究・教育の実施により人間としての使命感に基づい た研究から創造的研究を引き出し,人間愛に基づいた人 材を提供することが出来る.人間愛に目覚めた人間は, 単に資格取得を目標として,或は競争心で勉強する学生 よりも自主的に努力するから,公立大学はそうした学生 の育成に活路を見出すべきであろう.人間愛に目覚め仕 事を通じて人類愛を満足させていくことを知った人間は 最も強い. ───────────────────────── とまあこんな調子だ。論旨が非常にちぐはぐだ,という第一印象を 持った。どういうことかというと,話がつながっていないのじゃ。 大学評価がこれからは非常に重要な課題になる,という認識は正し いのじゃが,「大学の教育には大別して2つある」と言っておきな がら,1つは人格教育と言い,もう1つが分からないような書き方 をしている。人間教育というのも登場するが,人格教育と同じ路線 の話のように思える。アブストラクトの中にあるように「地元対応 を活かして,現物主義の研究・教育の実施により人間としての使命 感に基づいた研究から創造的研究を引き出し,人間愛に基づいた人 材を提供することが出来る.」というのもぶっ飛んだ議論の仕方だ。 地元対応によって研究や教育を現物主義にするって何だ?人間とし ての使命感に基づいた研究って何だ?人間愛に基づいた人材がどう して育つのか?どうもよく分からない。 「基礎研究は産学共同をやると出来なくなるというのは誤ってい る。」と主張する根拠となるのがあくまでも物理や工学系の例にす ぎないところを見ても,この人は理学や人文の基礎研究の性質を全 く知らない人だと痛感してしまう。そんな下地で教養を語ろうとす るから無理があるのだ。論旨の飛躍には目をおおうばかりだ。そも そも講義や書物で勉強することを否定しているのが「現物主義」ら しいので,当然といえば当然な文章だ。最後に1つ。この人は, 「首大」のことは考えているらしいが,現都立の4大学のことは一 切考えていない。考える気すらないのだろう。 ───────────────────────── 米国においては,私立と並んで州立大学が最も高い評価 をうけているのが実情で,わが国においても,独立法人 化を機に,公立大学が評価を高める可能性がある. その原因となり得るものは,特徴のある教育を機動力を 生かして実施し得ることである.国立大学が10学部を 原則として,構成され,満遍ない学問の展開を標榜した のに対し,公立大学は地元の必要性を優先するから,特 に有力国立大学の近くに位置する公立大学は殊更特徴を 出すことを余儀なくされる.岩手県立大学は計算機応用 に重点を置いたし,首都大学東京は改革を実施するに当っ て今後急速に進むであろう東南アジアや,既に驚く程の 都市化が進んだ東アジアに共通な問題として,都市化の 問題を中心に教育研究を展開してゆく方針を採ったのは, その一例といえよう. 西澤潤一『公立大学の改革』「科学」 2004年4月号岩波 書店.P.465. ───────────────────────── ━ AcNet Letter 84 【2】━━━━━━━━━━ 2004.03.30 ━━━━━ 永岑氏「大学改革日誌」 2004年3月30日(2) http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/SaishinNisshi.htm ─────────────────────────────── 「都立大学問題では、まさに大変な「大学の自治」・「学問の自由」 の破壊、大学教員の奴隷化の強行的手段がとられているようである。 私の得た情報が正確であれば、「教学準備委員会」「経営準備室運 営委員会」が行われ、相変わらず都は「意思確認書」の不提出を理 由に経済学部のCOEグループを切り捨てる(コースの閉鎖)をち らつかせて教員の屈服を要求しています。また、中期目標、中期計 画も管理本部が一方的に準備する姿勢を見せています、と。研究の 最先端を行くとの誇り高い人々、COEをとって研究に専念しようと する人々を研究に専念させないようなやり方、強引にねじ伏せよう とする行政当局の恐るべきやり方! 行政的な強引な方法に恐れを なすような軟弱な人々では、日本と世界の最先端を行く研究、誇り 高く自主的で創造的な研究はできないのだ、ということが行政の役 人にはわからないのだ。上意下達の精神でなめされてしまい、「精 神なき専門人」となった役人には、新しい大学、自由で創造的な大 学など作り出せない。「正直に思ったことを言うために異端視され る」民間コンサルタントのある人の意見では、「企業だと極端な人 事をやると、モチベーションが下がって売上が下がったりしますが、 大学ではそんな現象が見えにくいです」と。だが、「大学」ではな くて、上意下達の役人の目に、大学人の心が見えないのである。と りわけ、誇り高く先進的な仕事をしている人々の気持ち=モチベー ション(自由で創造的批判的な精神であるだけに、抑圧や干渉に傷 つき反発し屈辱感を持つ)が見えない。上意下達の役人根性にとっ ては、自分のタイプ=上意下達の精神構造がいいのであり、従順な 服従心をもつ人々だけが、自分たちに都合がいいのである。以下に 新聞記事に関する意味に関する都立大学の内部からの詳しい情報 (L14)【1-1】によれば、意思確認書→就任承諾書→法人就任承諾 書の何段階かにわけて、まだまだ相当な混乱が起きそうである。仮 にこれらを乗りきっても、来年度以降、脱出先が見つかれば、縛り が切れると同時に、任期制などの不安定要因・不利な要因が目の前 にぶら下がっていれば、脱出能力のあるものが脱出の可能性を探り、 つぎつぎと脱出が起きることになろう。」 ━ AcNet Letter 84 【3】━━━━━━━━━━ 2004.03.30 ━━ 琉大教授ら撤回求める/文科省、センター試験作成者公表へ 沖縄タイムズ 2004.3.26 http://www.okinawatimes.co.jp/day/200403261300.html#no_4 ─────────────────────────────── 文部科学省は、大学入試センター試験の問題作成者名を任期終了後 に公表する方針をこのほど決めた。これに対し、琉大教育学部(新 里里春学部長)教授会は二十五日、「作成に関する情報は秘密にし ておくことが公共的利益。情報公開法の公開対象外だ」として公表 方針の撤回を求める意見書を発表した。大学の学部単位で反対の意 見書を出すのは全国初という。 センター試験は原則として各教科ごとに、大学教員で構成する問題 作成委員会を設置する。委員の任期は二年で、毎年約半数ずつ交代 する。 今年の大学入試センター試験の世界史問題で、日本統治下の朝鮮に おける「強制連行」が歴史的事実として扱われたことに、自民党議 員グループなどが文科省などに抗議、作成者の氏名公表を求めた経 緯がある。 文科省は情報漏えいの恐れなどを理由に非公表としてきたが、透明 性を高めることを理由に、委員任期が切れ、作成に関与した試験終 了後であれば公表する方針にした。 新里学部長は「氏名が公表されると、作成者は自由な立場で問題を 作ることが困難になる」と説明。同学部の高嶋伸欣教授は「各大学 の二次試験や公立高校入試にまで悪影響が出る恐れがある。沖縄戦 という問題を抱える地元の教育者として、意見の表明が求められて いた。他大学も琉大に続いてほしい」と話した。 ─────────────────────────────── ━ AcNet Letter 84 【4】━━━━━━━━━━ 2004.03.30 ━━━ ビンソンマシフ氏(国立大学事務官)からのお便り ─2004.3.3 ───────────────────────── 非公務員化訴訟の話(ACNET LETTER 61)にお便りした後、次 のことを思い出しました。 --------- 教科書訴訟を起こした故家永三郎氏は次のようなことを言って いたとのことです。 「国(旧文部省)を相手に裁判を起こしたのは別に勝算があっ たからというわけではない。まして最高裁が国(行政)寄りの 判決ばかり出していることも知っていた。しかし裁判を起こせ ばその審理の過程で多くの人々の耳目を集めることはできるだ ろう。そのために提訴したのだ」と。 最終的な裁判の結果はやはり最高裁が家永氏の主張のわずかな 部分を認めただけでしたが、裁判の最中に旧文部省が検定の姿 勢を徐々に変え始め、実質的には最高裁判決に表れた以上の部 分で家永氏は勝ったと言えるのではないかと思います。(ちな みに佐高信氏は最高裁を「最低裁」だと揶揄(やゆ)していま すが) ─2004.3.29─────────────────────── 非公務員化!それなら公務員試験の再受験を若い事務官や技官 に勧めては? ─2004.3.30────────────────────── 非公務員化の問題は人事院(本院のほうがよい)の苦情相談を 利用してみるのがいいかもしれませんね。非公務員化された後 でも身分が復活する可能性があればとりあってもらえるかもし れません。 (参考)http://www.jinji.go.jp/counseling/f-coun.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集発行人連絡先: admin@letter.ac-net.org ログ:http://letter.ac-net.org/log.php 趣旨:http://letter.ac-net.org/index.php #( )の中は編集人コメント、「・・・・・」は編集時省略部分 スパム対策としてアドレスの一部を全角表示。使用時は半角に。 登録と解除の仕方:http://letter.ac-net.org/s.html |