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新首都圏ネットワーク


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Academia e-Network Letter No 83 (2004.03.29 Mon)
http://letter.ac-net.org/04/03/29-83.php

━┫AcNet Letter 83 目次┣━━━━━━━━━ 2004.03.29 ━━━

【1】大学評価 京都宣言=もう一つの「大学評価」宣言
http://university.main.jp/blog/sengen20040328.html

 【1-1】永岑氏の大学問題日誌より、設立総会の報告
http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/SaishinNisshi.htm

 【1-2】大学評価学会設立についての新聞報道より

  【1-2-1】『読売新聞』2004年3月28日付
国の大学評価に「待った」、教授らが"別組織"旗揚げ
http://www.shutoken-net.jp/web040328_3yomiuri.html

  【1-2-2】『毎日新聞』2004年3月29日付
大学:評価学会が設立 多様性考慮し独自評価


【2】加古陽治記者の最近の業績
Publicity 884:・・・「週刊文春」事前差し止め事件(その2)他
http://www.emaga.com/bn2004030082141890010148.7777

━ AcNet Letter 83 【1】━━━━━━━━━━ 2004.03.29 ━━━━━━

大学評価 京都宣言=もう一つの「大学評価」宣言
http://university.main.jp/blog/sengen20040328.html

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わたしたちは本日、大学のまち京都に集い、大学評価学会の設立に
向けて、議論を深めました。

本学会設立に至る直接的な契機は、学校教育法の一部改定(2002年
11月)によって、この4月1日より、文部科学省によって認証された
評価機関による大学評価が法的に義務づけられるようになったこと
です。大学評価は、教育や研究のありように直結しており、学問の
自由、そしてそれを制度化したものである大学の自治の根幹に関わ
るものです。

日本において、現在すすめられているさまざまな大学評価は、経済
的視点が一面的に強調されています。今まさに始まろうとしている
認証評価機関による「第三者評価」でもこの視点はいっそう強まっ
ており、大学評価本来のありようについての議論は軽視されている
のです。

この4月1日から発足する国立大学法人に対しては、さまざまな機関
(文部科学省、総務省、総合科学技術会議、外部委託機関等)によ
る評価が行われることが決まっています。既に行われている大学評
価・学位授与機構の評価結果にはさまざまな批判も出ています。評
価の在り方を真摯に捉え直すことが求められています。

今まさに大学評価の具体的ありようをめぐって議論する場の必要性
が切望されています。高等教育機関はこれまで人類の発展にとって
重要な貢献をしてきましたし、今日においてよりいっそう積極的な
役割を果たすことが期待されています。一方、今日の大学・短期大
学においてさまざまな問題があることは事実であり、大学人の自浄
能力が発揮されなければなりません。

わたしたちは、「第三者評価」の法的義務づけを、大学・短期大学
という高等教育機関のありようを考える契機として、真摯に受け止
めたいと思います。これまで狭い専門の領域に閉じこもりがちであっ
た教育・研究者と事務職員、そして大学が、自らの主体性を確立し、
学問の自由と大学の自治の現実的・具体的担い手となるために、大
学評価に関する議論を行うことは避けて通れない課題となっている
と言えるでしょう。

高等教育機関は、政府や産業界など特定の者のためだけに存在する
のではありません。公共的な存在として、すべての市民のために存
在しているのです。学生たちの学びの成果は彼ら自身の成果である
だけでなく、社会全体の貴重な成果として認識されなければなりま
せん。このような視点から、大学評価の基本に、学生の発達保障が
明確に位置づけられる必要があるでしょう。

今日、大学評価は、大学が社会的役割・貢献を行っていく上で必須
条件となっています。社会的役割・貢献は、経済的のみならず社会
的な広がりをもった多様で多元的な価値視点から求められるもので
す。この多様で多元的な視点から大学評価を行うことが必要となっ
ているのです。

わたしたちは、本日の議論を通じて、次の点を確認しました。

1.本学会は、「大学評価」そのものを相対化し、学問的検討の対
象とするため、大学評価学(論)という分野を設けます。これは、
従来からの大学論、高等教育論と重なるとともに、独自に評価とい
う視点から大学を論ずることを学会の目的とするということです。

2.本学会は、設置形態、教学内容、規模、立地など、それぞれの
大学・短期大学が持つ多様性を考慮した大学評価を行い、高等教育
研究機関の発展に貢献していきます。

3.本学会は、教育・研究者と事務職員だけでなく、法人理事・監
事やさらには広く市民の方々に参加をよびかけ、大学評価について
の研究を深めていきます。同時に、現代社会が直面する諸課題の解
決に資する高等教育研究機関を創造する営みをすすめていきます。

         2004年3月28日   大学評価学会 設立大会  

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【1-1】永岑氏の大学問題日誌 2004.3.29
http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/SaishinNisshi.htm
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2004年3月29日 昨日、京都で、大学評価学会設立大会(04-03-28:
京都)が開催された。都立大学と横浜市大などで直面している任期
制問題のシンポジウム(横浜)と重なってしまい、どちらか一つし
か出ることができないため、松井先生がシンポジウムの討論者となっ
ておられる横浜のほうは後でお話を伺うことにして出席は断念し、
京都に出向いた。盛会であり、非常に有意義な設立大会だった。設
立発起人が142名(3月26日現在)に増えていた。法律で義務付けら
れた大学評価をどのような視点、基準で大学人が行っていくべきか、
考えるべき論点は実に多くまた奥が深いものであった。まさに学問・
科学論の総体に関係してくるものであり、現代社会(日本と世界)
のあり方と深く関連する問題であることが明らかとなった。三年間
の着実な活動を積み重ねて、日本学術会議登録団体となることを計
画している。社会学、教育学、哲学の三つの研究連絡委員会に関係
学会として登録することを目指している。


冒頭の記念講演・益川敏英京都大学名誉教授・現京都産業大学教授
(後の総会で副会長に選出された)は、基礎科学の評価のあり方に
ついて、根本的な問題提起をした。京都大学で基礎物理学研究所の
所長をしていたとき「評議会で15分間もらって一席ぶった」内容を
含めての報告であった。ガロアの二十歳の仕事が150年後の今日、
情報通信・暗号分野で不可欠の数学理論となっていることなど、興
味つきない話しであった。その科学発達の世界的長期的見地から、
教育はすくなくとも15年程度の評価タイムスパンで行わなければな
らないこと、基礎科学は100年の単位で評価がなされなければなら
ないこと、したがって現在の法律による中期目標・中期計画による
評価が基礎科学を駄目にしてしまうことを、最先端の研究者・世界
的な研究者として、説得的に語っておられた。研究実績を背景にし
ているだけに重みがあった。

ついで、第1報告で、国立天文台長の海部宣男教授は、天文学と言
う学問への社会的理解・支持をえるための努力の必要性・重要性を
強調され、国立の全国大学の共同利用機関としての国立天文台も全
国の国立大学法人の各大学も、それぞれの存在意義と密接に関わる
科学上・学問上の評価をきちんと行っていく必要があることを強調
された。英米の評価システム・評価の歴史が非常に長い歴史を持っ
て質が高いこと、それに対比しての日本での評価のシステム・人材・
歴史の不足・欠如を具体的に指摘された。これまた重要な指摘だっ
た。

日本のようにしっかりした大学評価のシステム・人材・歴史がない
ところで、今回出されてきた政府側の組織(そのガイドライン)は
実に、大学評価の点から問題があることを、詳しく説明された。と
りわけ、数値目標・数値化が繰り返し強調されている点を問題とし、
官僚が点数をつけやすいような配慮だけが先行していることを厳し
く解明された。全世界的なピア・レヴュー(研究者仲間による学問
的科学的評価)[1]の導入、その制度化、能力養成が絶対不可欠で
あり、それこそが大学・共同利用機関の研究教育を本当にはってさ
せていくために、重要だと強調されたが、そのとおりだと感じた。

第二報告(田中京都大学名誉教授…後の総会で会長に選出された)
も重要であり、とくに学生の勉学権と言う観点から、授業料問題の
深刻な意味が指摘された。国連やユネスコ宣言など世界的スタンダー
ドで、高等教育の無料化を推進すべきこと、先進国のなかでもとり
わけGDP比率で低い教育研究予算の比率を是正すべきこをなど、大
切な論点が史適された。

第三報告・篠原三郎・日本社会福祉大学元教授も、一〇〇年ほどの
日本史を振りかえりつつ、「大学の自治」・「学問の自由」の大切
さをあらためて強調された。これまた、現在のわが大学や都立大学、
それに全国の大学でいくつこ発生している経営優位の改革で「大学
の自治」「学問の自由」が危機にある大学が増えている現状から、
大学人の責任を見据えるように訴えるものだった。

求められて、20人の運営委員の一人になった。大学評価などという
のは素人に過ぎないが、大学が社会のなかで存在意義を確認し、学
問・科学の研究教育のあり方、それらの評価のあり方を考える課題
自体は、どんな学問分野の研究者でも考えてみるべきことであり、
勉強していきたい。海部氏の説明のように、日本ではそもそも評価
システム・評価のノウハウなどが欧米に比べて蓄積されていないの
で、まさにこれから全大学人が関心を持って評価の理論・視点・方
法を磨き、知識と能力を蓄積していくべきものであろうから、その
問題意識を持って、この学会に参加し、自分や自分の所属する大学、
そして全国の大学について研鑽を積んでいきたい。

是非多くの大学人がこの学会に参加され、適正な大学評価が行われ、
日本の学術が大きく発展するひとつの刺激となることを期待したい。


討議も活発で、発言者も多様であった。

全国各地の大学の研究者(岡山大学、千葉大学、立命館大学、日本
大学、桃山学院大学、その他)のほか、朝日新聞の記者など何人か
のジャーナリスト、大学院生(京都大学)、大学職員(岐阜大学)、
それに市民など、多彩であった。今回の国立大学法人化や公立大学
法人化の要請が、経済界からの要請を受けていることはもちろんで
あるが、大学改革には市民からの要求・希望にも強いものがある。
その市民からの要望にどのようにこたえていくのかも、大学評価の
観点として重要となろう。

都立大学と本学の「改革」問題は全国の関心の的となっているよう
で、懇親会で発言の機会が与えられた。いろいろたくさん問題はあ
るが、「改革」が大学人の沈黙を強制するようなやり方、「学問の
自由」を抑圧するやり方、批判者を恫喝し排除するやり方など、日
本の大学史上でも大変ゆゆしい問題状況となっているなかで、大学
評価の重要な評価基準として、「大学の自治」「学問の自由」のあ
り方が据えられなければならない、と発言した。この大学は「大学
の自治」の点でも、これこれこういう問題がある、「学問の自由」
の点でこのような抑圧状況がある、逆に、大学の自治はこの大学で
はこのような充実発展している、学問の自由がこのように花咲いて
いる、といった評価ポイントは、今後の大学評価において、決定的
に重要なものとなることが期待される。

なお、大会では、大学評価京都宣言=もう一つの「大学評価」宣言
が満場の拍手で承認された。

━ AcNet Letter 83 【2】━━━━━━━━━━ 2004.03.29 ━━━━━━

加古陽治記者の最近の業績

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Publicity 884:・・・「週刊文春」事前差し止め事件(その2)他
http://www.emaga.com/bn2004030082141890010148.7777
登録:http://www.emaga.com/info/7777.html
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#(竹山氏のコメントからの抜粋)

「・・・・・・差し止めだ、というニュースを聞いたとき、ぼ
くが即座に「まずい、小林信彦のコラムが読めない!」と思い、
コンビニに走った。

そう、事前差し止めによってぼくが受けた直接の影響は、真紀
子長女の記事以外の記事が読めなくなる、という危機感だった。

・・・・・・

差し止め箇所だけ切り取って売れ、というのが裁判所の趣旨だ
が、そんな無茶はねえだろ。しかし、週刊文春編集部は、実際
にそうするしかなかったのである。

3月20日付東京新聞31面の「解説」が、この問題を取り上
げている。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
たとえば、一つの特集を不当だとして、他の記事も全部差し止
めるのは、「テナントの不祥事が発覚したら、デパートは全館
営業停止」というようなもので、問題のない大多数の記事の「
表現の自由」を大きく損なう。

(竹山の註:19日に判断された仮処分は妥当との)決定では
、この点について「削除などすれば販売することは妨げられて
いない」と、非現実的な指摘をするだけで、深く検討した形跡
がない。

(加古陽治記者)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

▼パチパチパチ。加古記者、えらい。その通りである。「週刊
文春」4月1日号の「総力特集 裁判所には負けない 徹底検
証 田中真紀子長女記事 小誌はなぜ報じたか」で、田中康夫
・長野県知事も「記者の署名原稿で『表現の不自由』を看破し
た『東京新聞』の卓見は、例外中の例外」と評価している。大
いに同感である。・・・・・・」

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#(1999年初頭、国家機関の独立行政法人化に熱中していた太
田誠一氏(当時総務庁長官、先の衆院選で落選)に有馬朗人氏
(当時文部大臣)が国立大学の独立行政法人化を説得されたい
きさつを世に知らしめた以下の特集記事(1999-2000の国立大
学の動向のまとめ)で加古陽治記者の名前を記憶している大学
関係者は少くない。

「国立大学」が消える日、迫る独立行政法人化
http://ac-net.org/dgh/00212-tokyo-shinbun.html
東京新聞 2000.2
(1) 東大病院官僚支配に「反乱」
(2) 「公務員型なら」文相も転向
(3) 流れ読めなかった国大協
(4)「知の巨星」集め既定事実化
(5) 資金格差地方の不安大きく
(6) 分裂の危機 国大協"沈黙"
(7) 見えない高等教育の未来


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