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新首都圏ネットワーク

『東奥日報』2004年3月26日付

変わる弘大/国立大学法人化スタート目前

(下)魅力づくり/就職、地域貢献に本腰


 「この一年で一番強化されたのは、就職対策ではないか」。学長特別補佐の
石堂哲也教授はそう指摘する。

 二月、弘大で初めて、学部を超えて連携した大規模な企業合同説明会が開か
れ、県内外の約百八十社が参加した。会場にはリクルートスーツ姿の学生だけ
でなく、企業担当者に積極的に話し掛け、人脈を広げようとする教官の姿もあっ
た。

 石堂教授は「学生の就職のため、普段から企業を自発的に回る教官が、弘大
にも現れ始めた」と言う。

 四月には「学生就職支援センター」ができる。民間企業出身のスタッフや各
学部の教官を配置。学生の就職を大学全体で支援する。学外の人に講義をして
もらい、職業観を育成する「キャリア教育」もスタートする。

 地方国立大学は学生を教育し、地域に人材を輩出するという大きな役割があ
る。長引く不況で雇用状況が厳しい中で、弘大も就職対策には力を入れてきて
いる。

 弘大は教育、研究、地域貢献を三本柱に掲げる。この方針は法人化後も変わ
らない。

 中でも出遅れた感のあった地域貢献は法人化を前に、本腰を入れ始めた。鰺
ケ沢町とは地域ぐるみで連携する。新年度には同町と「地域連携総合推進機構」
を設置。産業興しや生活改善、教育などの分野で協力しあう。

「中規模の総合大学」

 さらに、キャンパスを「公園化」し、地域にとって魅力ある大学に、外観か
ら生まれ変わろうとしている。三月末までの予定で工事を進めており、学外の
人が散歩したくなるように?と、歩道や樹木を整備。道路建設計画で取り壊しの
恐れのあった旧制弘前高校外国人教師宿舎を敷地内に移築し、正門を新しくす
るなど景観を整えている。

 「五学部からなり、幅広く学問領域をカバーする地方の中規模総合大学」。
弘大は自らをそう位置づける。それゆえか「弘大らしさ」や特色が何かを、明
確には発信しきれていない。大学側も「国立大学は特定の分野を切り捨てるこ
とができず、平均的にならざるを得ない」と認める。

 法人化後はどうなるのか。各大学は「国立大学法人評価委員会」から評価さ
れ、成果を出さない分野は最終的には国からの交付金を削減され、縮小せざる
を得なくなる。大学の意向とは違う位置付けの大学になる可能性もある。

少しずつ目標実現

 いずれにせよ、弘大が単独では魅力を発揮できなかったとき、岩手大、秋田
大との再編・統合問題は、より現実味を持って再浮上する。法人化の準備で話
し合いは滞っているが、国立大学に再編・統合を促す国の方針は変わっていな
い。

 三大学は「強い連携を進め、二〇〇六年度までに再編・統合に関する結論を
出す」と決めている。遠藤正彦学長は「再編・統合という前に、学内を強固に
する方が先だ」と方針を示すが、三年後に、その成果が問われる。

 四月一日に弘大の教育や研究、地域貢献が、がらりと変ぼうするわけではな
い。「弘大が遅れているのは率直に認める。厳しい状況下、夢のような秘策が
あるわけではない。教職員が一体となり、目標を少しずつ実現していくしかな
いんだ」。遠藤学長はそう語った。