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新首都圏ネットワーク

『東奥日報』2004年3月25日付

変わる弘大/国立大学法人化スタート目前

(中)求められる経営感覚/外部資金獲得に全力


 二〇〇四年度入試、弘前大学の志願者は前年度より九百人以上も減った。
「少子化で全国的に落ち込んではいるが―」「入試を抜本的に考え直す必要があ
る」。法人化を目前にして、教職員にずしりと重い課題が突きつけられた。

 入学検定料は一人一万七千円。これが法人化後であれば、およそ一千五百万
円も自己収入が落ち込んだことになる。

 これまでの国立大学の会計は、授業料などの収入はすべて国庫に納められ、
大学は収入の増減には大きく影響されず、規模や事業計画などに応じて、国か
ら毎年ほぼ一定額の予算が配分された。

 これからは自己収入を国に納めず、国から運営資金として交付される「運営
費交付金」と合わせ、各大学がやり繰りをしていく。収入が減ると、減った分
を外部資金などで得るか、支出を減らさなければならない。

COEに選ばれず

 入学検定料や授業料、入学料は法人化後、現行の10%増を上限に、各大学が
設定する。弘大は〇四年度については本年度と同額にすると決めた。今後は、
大学全体の収支や地域性、志願者数への影響などから判断し、経営感覚を持っ
て設定していくことになる。

 財務省は、事業費の一般管理費などを〇五年度から毎年1%ずつ削減する方
針を示している。経営環境は厳しくなっていくことが予想され、弘大は「科学
研究費補助金」「21世紀COEプログラム(卓越した研究教育拠点)」など、
公募を通じて研究費を獲得する競争的資金をめぐり、他大学と競い合わなけれ
ばならない。

 「弘大はCOEに選ばれたんですか?」。ある職員は今年、受験生にそう聞
かれて言葉に詰まったという。「申請はしているんですが・・・」

 弘大は、COEの公募が始まった昨年度から申請しているが選ばれたことは
ない。秋田大学は昨年度採択され、この二年間で約三億円の研究費を手に入れ
た。

 弘大の神田健策副学長は「COEの採択は大学のアピールにもなるのだが―。
弘大にもいい研究はあるが、世界のトップレベルにはなってないのだろう」と、
結果を厳粛に受け止める。

4月に『後援会』発足

 一方で弘大にも新たな収入源を模索する動きが出始めた。四月、弘大生を支
援するための「弘前大学後援会」が発足する。学生の保護者や教職員が会員と
なり、サークル活動費の補助などで学生を支援していく予定だ。

 また、事務組織を見直し、集中化や簡素化などによる経費節減の方法もいく
つか検討している。既に、学部ごとにある学生関係の事務組織を一元化し一カ
所に集める「学生センター構想」が具体化に向け進んでいる。

 付属病院も経営効率化を求められるが、四月に病院長に就任する棟方昭博教
授は「純粋に利益を求めたら、不採算部門を切らなければならない。しかし、
付属病院は教育や研究、地域に果たす役割がある。医療の質を落とさずに、収
支バランスの取れた経営をするのは難しい」と頭を抱える。

 法人化後は、病院独自で「経営戦力会議」を設置。企業社長や私立病院長ら
を招き、民間の意見を取り入れていく。