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新首都圏ネットワーク

『東奥日報』2004年3月24日付

変わる弘大/国立大学法人化スタート目前


(上)運営組織を再編成/学長に権限が集中

 「厳しい。状況を考えると危機的だ」。遠藤正彦学長はこれまで繰り返し、
学内外に向け訴えてきた。首都圏から離れた立地、地域の財政基盤、規模、旧
帝大などとの研究レベルの差―。明るい材料は見当たらない。

 四月一日、全国で八十九の国立大学法人が誕生する。国立大学・短大は国の
組織から独立した法人となる。経営権を与えられ、大学は自らの判断と責任で
戦略的に大学運営を展開する。

 少子化で大学が学生に選別される時代が到来する。大学を取り巻く環境は厳
しい。弘大は大規模大学とハンディが付いたまま、競争的環境に放り込まれる。

 法人化で大きく変わるのは運営組織だ。学長に権限が集中し、リーダーシッ
プを発揮しやすくなり、これまでの「評議会」に変わり「役員会」が重要事項
を決定する。

県との連携強化

 弘大の役員会は学長と理事五人で構成。学外理事を置くことが義務づけられ
ているが、弘大は県の関係団体から起用することで、県との連携強化の姿勢を
示した。

 また、経営に関する審議機関「経営協議会」は十六人の委員のうち、半数の
八人が外部委員で、県内の企業や自治体などから起用する。大学の経営に学外
の声が入る。

 さらに法人化を機に、形式的な委員会は廃止。同じ分野の委員会は統合して
半分以上減らし、スリム化する。その分、理事が責任を負って判断する場面が
増える。

 このように変えることで、迅速な意思決定など運営の効率化は実現できるの
か。昆正博副学長は「仕組みはつくり替えたが、結局は人。意識を変えて運用
しなければ、何も変わらない可能性もある」と言う。遠藤学長も「教職員の意
識が変わらないと生き残れない」と、危機感を募らす。

リストラを懸念

 弘大の教職員は千五百人強に上る。四月から国家公務員ではなく、団体職員
になる。

 研究はほとんどせず、学生に何年も同じノートで講義する―。そんな"問題教
授"もこれまでは国家公務員法や教育公務員特例法に守られていた。しかし、こ
れからは違う。

 弘大の教職員は法人化後、弘大が独自に設置する「評価室」で、総合的に判
断される。評価結果を給与に反映する仕組みがつくられる。高い評価を得た教
員には、ボーナスの支給などもあり得る。"問題教授"に対しては、改善のため
の研修システムが整えられる。

 大学側は「解雇、リストラはしない」と説明するが、今後は"問題教授"を解
雇できる仕組みになったのは事実だ。

 職員組合委員長の斉藤利男教授は現在策定中の弘大の就業規則について「解
雇につながるあいまいな表現があり、教職員から不安の声が上がっている」と
危ぐし「実際に運営していく"人"を大切にしてほしい」と訴える。