トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク

BNN 2004年3月26日付

国立大法人化 北海道大学教官の「憂鬱」 第3回

文: 浅野 

 学内で懸念される大学のコンビニ化。


 第3回は、北海道大学の5人の教官が懸念する共通認識。


 ――法人化のデメリットは。

 C 法人化のデメリットを見たいのであれば、東京都立大が現在置かれてい
る状況を見るといい。

 現在、東京都立大は産業と直結し、利益につながる大学を創設するため、不
必要な学部を排除している。東京都労働局は東京都立大の運営に関与し、それ
を支えている。こうしたことは、今後北大でも起こり得る。

 E 北大が産学連携を強め、産業支援大学になること自体は悪くない。しか
し、決断する過程で教育現場にいる我々が排除されることが問題だ。

 東京都立大の場合、決定権を握っているのは石原慎太郎知事。北大の場合、
誰が決定権を握ることになるかはまだ分からない。従来は学長が方針を出し、
教官がそれに対しどう思っているかを民主的に取りまとめてきた。

 それが今後はトップダウン的な物事の決め方になり、4月からは制度的にも許
されるようになる。

 ――法人化移行の過程で、すでに悪影響を及ぼしている点は。

 D 北大も肥大化し、大学院の中でも新たに学院という組織をつくろうとし
ている。教官の多くは反対しているが、現場の意向は無視されている。

 E 当然、中枢の人たちは、中間目標などについても、教員の人件費や任期
制の問題、研究学院の創設、構造改革の実行などを意識して盛り込まなければ
ならない。

 ともかく、国からの交付金が減るのではないかという不安ばかりが先行して
しまっている。4月からの法人化はすでに決まったことであるにもかかわらず、
中枢の人々は損得勘定が先行している。そのため、法人化後は、そうした損得
勘定が一層強まるのではないかと危惧している。

 逆に自分で何千万、何億単位のお金を引っ張ってくることができる教官には
好都合だろう。それでも中には、税金を使わなくてはできないような学問があ
る。そうした学問は切り捨てられてしまうのだろうか。学生が入学したときは
工学部に入ったつもりでも、知らぬ間に工学部の実態がでなくなり、情報科学
とかそんな形になるかもしれない。

 端的な事例が現在の都立大だ。石原都知事は、短期間で社会的需要がないと
みなすと学部を変更する仕組みに変えると言っている。

 例えば、東大ではアニメを教えるというように、大学はコンビニ的なものに
なると思う。要するに店に1週間、商品を並べて売れなければ、売れ筋商品だけ
を残し、売れないものは消していくといった"コンビニ大"になってしまうので
はないか。

 これまでは入学した学生に対して卒業するまでの期間、一貫した専門教育が
受けられる環境を保障してきた。しかし、コンビニ化すれば、単位がメニュー
化し、おいしそうなものは人気商品として継続され、必要であっても地味でウ
ケないものは、メニューから外そうというということになる。

 法人化後、何年か経過してみないと明確なことは言えないが、そもそも政府
が狙っているのは恐らくこうしたことだと思う。

 以下、次回に続く。