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新首都圏ネットワーク


『岩手日報』夕刊 2004年3月26日付

国立大学法人岩手大の針路(5)開かれた大学へ


ニーズの見極め肝要

 岩手大の正門付近と工学部キャンパスに今月、「今日から岩手大学は変わり
ます?岩手の大地とひとと共に」という大きな看板が登場。地域との連携に法人
化後の活路を見いだしたい大学は、身近な存在であることを県民に積極的にP
Rしている。

 研究教育体制をいかに充実させても「象牙の塔」とも形容され、長年、閉鎖
的な印象のあった国立大のイメージを変えるには、地域の人々とのコミュニケー
ションづくりが不可欠だ。

 岩手大はボランティアをはじめ、学生の独創的な課外活動に補助金を交付す
る事業を行っており、法人化後は対象を拡大する方針。自主的な活動をバック
アップしながら、地域に根差した大学づくりを進める。

 雪が降り積もった2月の日曜日。県外出身の学生有志で結成するボランティ
ア団体「猫の手ぷろじぇくと」(長坂真理子代表=農学部3年、愛知県出身)
のメンバーは、盛岡市役所からトラックやスコップなどを借り、周辺道路の雪
かきに汗を流した。事前に告知したこともあり、多くの地域住民も協力してく
れたという。

 長坂代表は「盛岡は住みやすい環境だが、道路が狭く雪が積もると危ない。
県外出身の視点を生かし、今後も気付いたことはどんどん行動に移していきた
い」と奉仕活動を続ける考えだ。

 転居などに伴い捨てられる家具や家電の再利用を促進する「リユース市実行
委員会」(東條美由希代表=人文社会科学部3年)は、今が繁忙期。学生のほ
か一般家庭も積極的に訪問して、使用可能な冷蔵庫、洗濯機などを回収してお
り、新入生に無償で提供する。

 東條代表は「環境問題を考えても家電製品の再使用は大切。大学のPRでやっ
ているわけではないが、来年も補助金をもらえるように実績を挙げたい」と意
欲的だった。

 法人化の準備に奔走した平山健一学長は「教職員が初めて一体となった。地
域の人々にも大学の変化を感じ取ってほしい」と語ったが、学生の間には既に
「岩手のひと」とともに行動する土壌が育ちつつあるようだ。

 グローバル化が進行する現代社会では、地域に愛され必要とされる大学でな
ければ存在意義を確立することは難しい。あらゆる競争が激化する中、岩手大
が目標に掲げる「社会貢献」を果たすためには、地域のニーズをしっかり見極
めた柔軟な大学運営が必要だ。

(終わり)

(報道部・小林晃洋)

メ モ

 岩手大の「Let,Sびぎんプロジェクト」 学生の自主活動をサポートす
る事業で、1件当たり50万円まで補助金を配布する。98年度に始まり、0
3年度は「猫の手ぷろじぇくと」「リユース市実行委員会」など4件が支援対
象となった。学生の企画書を基に選考しており、法人化後は事業を拡大する予
定。