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新首都圏ネットワーク


『読売新聞』2004年3月26日付

国立大「経営協議会」に財界人ら集合


 4月から法人化される89の国立大学が、法人経営の核となる「経営協議会」
の学外委員に財界人や私学関係者を続々と集めている。

 読売新聞が25日までに名簿を公表した42大学分をまとめたところ、旧帝
大が全国区の著名人で顔ぶれを競い、地方の大学は地元の首長や企業人で地域
密着を打ち出している。元官僚を集めた大学もあり、大学ごとの戦略がうかが
える人選となった。

 ◆全国区アピール――

 法人化後の国立大は、学長の下に教育研究面を担当する「教育研究評議会」
と、経営面の方針を決める経営協議会の2つの機関が新設される。経営協は半
数以上を学外から招かなければならず、各大学は5―12人程の規模で人選を
進めてきた。

 東北大が公表した学外委員には、著名企業のトップに加え、安西祐一郎・慶
応義塾長、遠山敦子・前文部科学相、ノーベル賞候補と言われる化学者、飯島
澄男・名城大教授と"大物"が並んだ。「私たちもびっくりした」と東北大の事
務方。全国区の大学であることを強くアピールしたものと言えそうだ。

 ◆ライバルからも――

 全体に目立つのは、大企業からの招へい。延べ330人の学外委員のうち5
4人が全国的に著名な企業の幹部だった。旧帝大は特に多い。山形大や宮崎大
は、県出身の大企業幹部を招いた。いずれも経営感覚の重視を印象づけている。

 "ライバル"である私立大関係者も38人と多かった。京大には八田英二・同
志社大学長と大南正瑛・立命館大前学長が入り、東京農工大には白井克彦・早
稲田大総長、一橋大とお茶の水女子大には関昭太郎・早大副総長。慶応大の安
西塾長は九州大、筑波大でも委員になる。国立と私立の名門同士の協力体制が
どう進むか注目される。

 東北大が宮城県知事と仙台市長を入れるなど、地方行政人は38人起用され
ている。福島大は、県や市町の行政関係者を10人中5人、財界や私学関係者
も地元の人を選んで「地元重視」を明確に打ち出した。

 ◆官僚頼み――

 一方、東京農工大は、9人中4人が文部、経産、外務、農水の官僚OB。山
本順二・事務局長は「産学連携を売りにしている研究大学なので、国の全体の
研究開発動向に造詣(ぞうけい)の深い方にお願いした」と話す。

 官僚OBでは、文部省高等教育局長や文化庁長官を務めた佐々木正峰・国立
科学博物館長がひっぱりだこ。東大、東京芸大、東京農工大、福島大、上越教
育大、福井大、兵庫教育大と7校で委員に就く。佐々木氏は「運営諮問委員を
している大学や、先輩を通じて頼んできた大学の要請を断れなかった」と話し
ている。

 ◆ユニーク人材――

 ユニークな人材では、愛媛大が、松山市立子規記念博物館長を務めている縁
で、コラムニストの天野祐吉さんを入れた。国立で唯一の体育大学、鹿屋体育
大は、元NHKスポーツキャスターの西田善夫氏を招く。

 北海道大と愛媛大は、地元の県立高校長も入れた。

 一方、経営協とは別に、大学の最高意思決定機関となる役員会の理事に、お
茶の水女子大は広中平祐・前山口大学長を、東京芸術大はメセナ活動に熱心な
資生堂の福原義春名誉会長を迎えた。