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新首都圏ネットワーク


『朝日新聞』2004年3月25日付

法人化目前 「国立大市場」に銀行過熱


 全国に89校ある国立の大学と短大が4月に一斉に法人化されるのを機に、
大手銀行が「国立大ビジネス」の開拓に力を入れている。国庫金として日本銀
行がまとめて面倒を見てきた国立大の予算も、法人化後は大学ごとに取引銀行
を決めて管理を任せる必要に迫られる。年間の予算規模は総計で約2兆8千億
円。銀行にとっては魅力的な市場が一気に現れるだけに、各行ともサービスの
提供に知恵を絞っている。

◇指定金融機関目指し 手数料値引きや経営「指南」も

「学問の府で、ダンピングだなんて」。大手行のある大学担当者は嘆く。有力
な国立大のメーンバンクの座を、ライバル行にさらわれたのが恨めしいからだ。

 メーンバンクの選考から漏れた最大の理由は、「大学の取引銀行を決める入
札時の提示価格」。直前になって、ライバル行は振込手数料の大幅値下げに踏
み切った。

 銀行間の競争が激化したのは、法人化に伴い、国立大が授業料の納入や給与
振り込みなどに使う「指定金融機関」の選定に一斉に乗り出したためだ。銀行
にすれば、取引の糸口さえつかめれば、収益をあげる機会が様々に広がる。

 4大銀行の中でも、東大、京大を始め33校との取引を獲得した三井住友銀
行は、今年に入って約10人の専従チームを発足させた。大学病院へのクレジッ
トカード導入や校内へのコンビニエンスストア誘致、産学連携によるベンチャー
企業の育成など、さまざまな提案を大学側に積極的に働きかけていく方針だ。

 財務の健全性が売り物の東京三菱銀行は、東京医科歯科大やお茶の水女子大、
東京学芸大など首都圏を中心に22校と取引する。受験人口の減少という厳し
い時代を迎える大学に対し、経費を節減しながら特色ある大学づくりを進める
アドバイス業務に力を入れる。

 みずほ銀行は、各都道府県に店舗網を持つ強みを生かし、東北大など30大
学の取引を得た。サービスの中心はグループで開発した「学納金管理システ
ム」。銀行以外にも、コンビニや郵便局での授業料の振り込みに対応し、延滞
金の有無をチェックできる。

 一方、大阪大や名古屋大など23大学と取引するUFJ銀行は、大学の資金
管理をサポートするほか、グループのUFJ信託銀行やUFJつばさ証券と連
携。特許など大学が持つ知的財産権の管理や、産学発ベンチャー企業の育成を
今後積極的に支援していく方針だ。

 多くの国立大はひとまず、6年間は同じ銀行との取引を続ける方針。効率化
を急ぐ国立大の経営パートナーとして付き合っていく工夫が、銀行側に求めら
れている。

【4大銀行が取引を獲得した主な国立大】

〈みずほ〉東北、一橋、神戸、宇都宮

〈三井住友〉東京、京都、一橋、東京工業、大阪、神戸、九州

〈東京三菱〉筑波、御茶の水女子、東京医科歯科、電気通信、東京学芸、東京
農工、一橋、神戸

〈UFJ〉大阪、名古屋、一橋、神戸

*太字はその大学のメーンバンク。重複あり。