トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク


『岩手日報』夕刊 2004年3月23日付

国立大学法人岩手大の針路(2)学生サポート強化

就職支援や生活相談


 厳しい経済事情の中、岩手大を今春卒業する学生の就職内定率は3月1日現
在で56・8%。今年になって改善したが、依然低調となっている。

 苦戦する4年生を横目に3年生の就職活動も既に本格化しており同大では先
日、独自に企業合同セミナーを開催。108社が参加し、真新しいスーツを着
た700人の学生が希望する企業と面談した。

 教育学部3年の幅将樹君は「大学のバックアップのおかげで多くの企業と接
触できた。求める人材を明確に聞くことができてためになった」と満足そうだっ
た。

 岩手大が目標に掲げる「地域に貢献できる人材育成」ができても、活躍の場
がなければ意味がない。法人化後は、就職支援を中心に学生へのサポート態勢
を強化する。

 合同セミナーに参加した川徳(盛岡市)の吉田寿志専門職係長は「物を売る
だけでなく、自分でさまざまなアイデアを出せる人材が欲しい。柔軟な判断力
があれば理想的」と求める学生像を挙げた。

 同大は各種ガイダンスのほか、就職前に現場の雰囲気を知ってもらおうと、
学部ごとに就業体験事業を行っている。03年度、工学部では3年生の約20
%に当たる102人が、夏休みを利用して企業で実務を経験。本格的に始まっ
た就職活動の参考にしている。

 離職率の増加とともに就業体験の重要性が高まっており、法人化後は新設さ
れる就職支援室が中心となって、全学的に事業を充実させる計画だ。

 学生生活の悩み事に対しては、学生センターに「何でも相談室」を設置し、
職員が対応している。相談件数は増加傾向にあり、今後は専門職員によるカウ
ンセリングや成績に対する苦情も受け付ける予定。

 保健管理センターと医療機関の連携も強化し、けがや病気の際の支援態勢を
整備するなど、あらゆる面で学生へのサービスを向上させる方針だ。

 法人化後、大学の自由裁量で実施できる事業が大幅に拡大するが、岩手大は
当面、授業料は文部科学省が定める標準額(現在は年間52万800円)で据
え置く。

 しかし、国の評価により与えられる交付金が減少すれば、授業料の値上げか、
事業の見直しをせざるを得なくなる。

 人文社会科学部3年の鈴木正人さんは「大学の支援も大切だが、就職などは
結局、自分で動き決断する問題。法人化が授業料の値上げにつながっては困る」
と心配顔だった。

メ モ

 国立大学法人の中期目標・計画 各大学が文部科学省に提出した法人化後6
年間の教育・研究の指針。文科省に置かれた評価委員会が達成状況を評価し、
大学への運営費交付金の配分に反映させる。岩手大は「学生への支援態勢の強
化」などを柱に据えた。