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新首都圏ネットワーク


BNN 2004年3月23日付

国立大法人化 北海道大学教官の「憂鬱」 第1回

文: 浅野 

 文部科学省が「100年に1度」を標榜する大改革の是非。

 3月18日、全国の国公私立大学151校の教員有志564人が、東京都議会文教委員
会の「首都大学東京」の審議に合わせ、都議会議員に意見書を提出した。

 意見書の概略は「東京都立4大学および横浜市立大学の法人化準備が、各地方
政府首長の強い関与の下で進められている。わたしたち大学教員有志は、両地
域の公立大学構成員の力強い動きを大学の自律の発現として全面的に支持し、
東京都議会および横浜市議会に対し、設置者権限を濫用する行政行為を看過し
ないよう要請する」というものだ。

 「首都大学東京」は、東京都立の4大学を統合し、05年4月に開校する予定の
新大学の名称。

 当初、石原慎太郎都知事は、東京都立大を含む4大学を統合し、新たな大学を
開校する方針を示していたが、昨年8月、4校を廃止し全く新しい大学を設立す
る構想を発表した。教官や学生の反発をよそに、トップダウンで改革を進めて
いる。

 上記の意見書は、石原都知事のこうした改革に警鐘を鳴らすものだが、改革
という名の下、同様の措置が、全国の国立大で講じられる可能性がある。

 文部科学省は、2001年6月に「国立大構造改革の方針」を発表。「国立大の再
編・統合を大胆に進める」「国立大に民間的発想の経営手法を導入」「大学に
第三者評価による競争原理を導入」という考えで、大学ごとの状況を踏まえた
再編や統合、国立大の大幅な削減進める方針を示している。その結果、全国に
99あった国立大は、再編や統合が進み、現在は88に減少している。

 さらに来年度からは、文科省が「100年に1度の大改革」と標榜する国立大学
の法人化が、全国でなされる。

 文科省は「今日、学術研究の推進や高度の人材育成、さらには社会経済の活
性化等の各側面で、国立大学への期待と関心はかつてないほど大きくなってい
る。大学運営上の自律性を拡大し、それぞれの創意工夫による『個性輝く大学
づくり』や世界最高水準の教育研究の展開のためには、各国立大学が独立した
法人格を持つことは大きな意義がある」として、国立大学法人法を03年7月に公
布、同年10月に施行した。

 法人化は、国立大を国の機関から自主運営する一法人に移行させようという
もので、各国立大は学長を最高責任者とし、自立した運営を行わなくければな
らない。また、法人化後は、文科省に6年間の中期目標を提出する義務があり、
達成状況は第3者機関によって評価され、国から拠出する運営交付金に反映され
る仕組みだ。

 会計が官庁会計から企業会計に移行するため、外部監査が必要となり、透明
性の高い運営が求められることになる。同時に教官は公務員でなく社員となり、
企業の役職員を兼務することができる。さらに外国人でも学部長に就任できる
など、一見、法人化は優れた大学改革に映る。

 しかし、文科省の指針に沿うだけで「個性輝く大学づくり」は実現するのか。

 国立大にとって法人格への移行は、第2次世界大戦後の新制大学設置に次ぐ大
きな変革だ。

 次回は改革の現場に直面する北大教官の懸念を報じる。