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新首都圏ネットワーク



   東京都立大学の将来に関する最近の事態を憂慮する共同声明


 私たちがかつて在職した東京都立大学において、昨夏以来生じている事態に
は、まことに憂慮に耐えないものがあります。

 一九四九年に開学した東京都立大学は、長い大学の歴史のなかでは半世紀の
歩みを有するものに過ぎませんが、自由で開放的な市民の大学を日本で初めて
創ろうという輝かしい理念を掲げ、その特色を発揮してきました。そこにおい
て学問と教育に従事した私たちは、その理念と特色に相応しい数々の成果を生
み出してきたという自負と誇りをもっています。

 もちろん、学問の府は、不断の自戒と反省を重ねながら、自己の自主的変革
に努めていかなければならないことはいうまでもありません。私たちの後に大
学を担っている人たちは、そのために多大の努力を積み重ね、その成果として
の改革案もすでに取りまとめられていました。その改革案が激変する時代や社
会の流れやニーズに十分に応えるものではなかったかも知れません。しかし、
たとえそうであっても、これに対する内外からの意見・批判を聴き、さらにそ
れを相互の理解の上で完成させていくのが『教育・研究の場』である大学とそ
の設置者の採るべき道であると考えます。

 ところが、この教育的努力を全く無視して都当局から突然提示された、東京
都立大学の廃止を含む新大学設置の提案は、手続上穏当を欠くだけでなく、そ
の内容についても不明確な点が多く、また多くの疑問が存し、これをそのまま
進めることは決して正しくありません。大学という学問の府が、このように一
朝一夕に廃止されたり、新設されるのは、社会的にも到底評価されるものでは
ないことを、私たちは世界の多くの例で知っています。

 私たちは、都当局が、大学の評議会、教授会、その他の職員学生など、すべ
ての構成員と十分に意見を交え、また良識ある都民の声にも広く耳を傾け、開
かれた手続を経て、今後の百年を展望した都立の大学のあるべき姿を真剣に模
索するという、大学の研究と教育の本来のあり方を尊重する民主国家の首府の
名に恥じない道に立ち返るよう、切に要望します。

   二〇〇四年三月一五日
           東京都立大学名誉教授一二二名(三月一四日現在)註一



註一 現在までに名誉教授号を授与された者の総数は三三○名であるが、物故
者と病気のため意見表明を遠慮された方を除いた数は二〇四名である。そのう
ち、一一名についてはまだ住所が判明せず、連絡がついていない。残りの一九
三名中一三四名から回答があり、そのうちの賛同者が一二二名であり、反対ま
たは不参加者は一二名である。五九名からは三月一四日現在回答がない。賛同
者は増えるものと思われ、確定結果は、近日中に発表する予定である。

註二 氏名の文字は、本人の署名に従った。在職時所属の学部(部署)は、東
京都立大学発行の『本学の現況』に依った。

註三 賛成者のうち一名は、列記署名には加わらないことを信条とされている
ので、名前は記さなかった。

後記 署名書に個人意見が付記されている場合があるが、その付記は最終発表
のさいに示すこととする。

賛同署名者氏名(五〇音順)註二    (以下略)