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『朝日新聞』2004年3月16日付 声欄 失いたくない都立大の価値 大学生 中川 光(東京都日野市 21歳) 新たに開学する首都大学東京の初代学長になる西澤潤一氏の記事を「ひと」 欄で読んだ。私は首都大学に統廃合される東京都立大で生物を学んでいる。 その私が今回の統廃合についてひとごとのように言うとおかしく聞こえるか もしれないが、実際にひとごとだ。石原知事は教員や学生の意見を聞かず、自 分の考えをひたすら押し通してきたようにみえる。私の周りの学生の間では怒 りを通り越し、無関心が蔓延している。 西澤氏は記事で「反対する人たちは、大学を変えたくないだけ」と語ってい る。確かに、私は大学を変えたくないと思っている。 動物生態学を学ぶため、私は進路に国公立大を選んだ。社会還元性が低いと みられる基礎研究の分野を扱うのは国公立大にほぼ限られるからだ。都立大は 動物生態学を学べる数少ない大学の一つである。 都市問題の解決をめざす大学の創設はおおいに結構だが、新しい大学の具体 像は公表されていない。現在の都立大が持つ価値を否定するものにならないよ う私は強く願う。 統廃合には教員のみならず多くの都立大生が反対している。私は石原知事や 西澤氏に問いたい。新大学の入学式で私のような立場の学生たちから「帰れ」 と言われる覚悟があるのかと。 |