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全員任期制の問題点

           佐賀大学教員
             遠藤 隆

最近,学部の教員全員に任期を付けるところが現れてきた。
それどころか,
「大学の全教員に任期を付ける」
と言っているところもある。

その際,当局から
「普通にやっていれば,ほぼ全員再任されるので心配ない」
という説明がされることがあるようだが,
説明が本当なら違法だし,
嘘なら詐欺である。

教員任期法の第4条第1項第1号を適用した場合,
その目的は
「多様な人材の確保」
すなわち
「人間の入れ替え」
にある。

だから,ほぼ全員が再任された場合は,
そもそも「多様な人材の確保」の必要性が否定され,
任期を付けたこと自体が無効になる。

再任されなかった教員は,
「必要のない任期制だった」
と主張して訴えることもできる。

あるいは,
「勤務成績を見て,原則再任」
という運用方法は,
実質的な
「長期間の試験採用」
であり,
再任は
「試用期間の延長」
に当たる。

不合理に長い試用期間も,
試用期間の延長も,
ともに違法であり無効である。

そのとき,法人の役員達は,
責任ある対応ができるであろうか。
損害賠償に耐えられるであろうか。

では法律の趣旨に従って,
多数の教員を再任しなかったらどうなるのか。
教育機関としては大きな障害が発生する。

また,学部のように教授会のある組織では,
後任人事を辞めていく教授達が行う事態となるが,
それでは責任ある人事が期待できない。

だから,学部のような教育機関において,
ほとんど全員が再任されるにしても,
かなり多数の教員が辞めていくにしても,
全員に任期を付けるのは無理がある。

佐賀大学では医学部で全員任期制を導入した。

これは大学の運命に関わることなので,
法人化に際して,
以上の問題点を提起したいと思っている。


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          遠藤 隆
佐賀大学 理工学部 物理科学科
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