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新首都圏ネットワーク


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Academia e-Network Letter No 71 (2004.03.11 Thur)
http://letter.ac-net.org/04/03/11-71.php

━┫AcNet Letter 71 目次┣━━━━━━━━━ 2004.03.11 ━━━━

【1】東京都立大学評議会見解 2004.3.9

 【1-1】大学管理本部長・学長予定者から都立大学宛の文書2004.3.9
http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/yamaguchi-nishizawa030904.html

 【1-2】都立大の危機--やさしいFAQ L-13
http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/kiki-l.html#doukatsu

 【1-3】東京都立大学・短期大学教職員組合『手から手へ』
第2268号(2004年3月10日付)

 【1-4】新大学批判者に「最後通告」 東京都が都立大に文書送る
asahi.com 2004年3月10日付
http://www.asahi.com/edu/nyushi/TKY200403090390.html

 【1-5】意見広告の会ニュース111号 2004.3.10
「意見広告の会」事務局のコメント

【2】「大学を覆うモラルハザード 公共性危うくする「経営」先行」
岡山 茂氏(早稲田大学・フランス文学、アレゼール日本事務局長)
朝日新聞夕刊03/09

━ AcNet Letter 71 【1】━━━━━━━━━━ 2004.03.11 ━━━━━━

東京都立大学評議会見解 2004.3.9

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3月8日の総長と大学管理本部長の会見に係る評議会見解

                   2004年3月9日
                   東京都立大学評議会

3月8日、総長と大学管理本部長の会見が行われ、本部長は別紙
【1-1】(翌9日学長予定者との連名で大学宛送付)の内容を基本
とする発言を行った。

評議会は、本年1月27日付け評議会の「見解と要請」に照らして
も、これを受け入れることはできない。同時に、ここに重ねて、早
急に新大学準備のための開かれた協議を開始するよう求める。

                          以上。

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【1-1】大学管理本部長・学長予定者から都立大学宛の文書2004.3.9
http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/yamaguchi-nishizawa030904.html
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3月8日に都立大学総長に対して大学管理本部長として3点にわた
るコメントを申し上げました。その内容を、西澤学長予定者にも確
かめたところ、考え方が一致しておりましたのでお知らせいたしま
す。

   平成16年3月9日

                 学長予定者 西澤 潤一
               大学管理本部長  山口 一久




1 今後の改革の進め方

第1回都議会定例会での知事の施政方針のとおり、知事にはまった
く新しい大学として「首都大学東京」を17年度に断固として開学
する強い思いがある。

 改革の本旨に従い、引き続き教学準備委員会を中心に検討・準備
を進める。
 改革に積極的に取り組む先生方とともに、「首都大学東京」を創る。
 改革である以上、現大学との対話、協議に基づく妥協はありえない。

「首都大学東京」は、東京都がそこに学ぶ学生や東京で活躍するさ
まざまな人々のために設置するものであり、教員のためではないこ
とを再確認して欲しい。


2 大学院の検討

大学院の重要性は認識している。

教学準備委員会の下に、現状追認でない新しい大学院を検討するW
Gを設置する。

 ・メンバーは西澤学長予定者が指名する。

 ・第3回教学準備委員会で提示した、座長叩き台案、川勝専門
  委員案を出発点に検討を進める。


3 意思確認書提出の取扱い、混乱の責任

新大学に前向きな姿勢で期限を守って提出頂いた方々と3月に入っ
てから提出された方々を同様の取扱いとする訳にはいかない。何ら
かの仕切が必要である。

また、公に改革に批判を繰り返す人たち、意思確認書の提出を妨害
する人たちには、意思確認書が提出されたからといって、建設的な
議論が出来る保障がない。なんらかの担保がないかぎり、新大学に
は参加すべきでない。

学内を主導する立場にある、総長、学部長(研究科長)、教授クラ
スの教員にあっては、混乱を招いた社会的、道義的責任を自覚すべ
きである。


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【1-2】都立大の危機--やさしいFAQ L-13
http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/kiki-l.html#doukatsu

2004年3月10日に朝日新聞の「新大学批判者に『最後通告』」【1-4】
という記事を読んだんですが,「首大」についてはもう自由に批判
もできないということなんですか?
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ポーカス博士

まあ,最初に問題の文書【1-1】を読んでみてくれ。書いた人は,
明らかに大学管理本部長じゃ。内容を西澤学長予定者にも確かめた
というのだが,この文書を見せたかどうかは分からない。

まず全体は3部構成になっていて,最初が今後の改革の進め方。
「知事にはまったく新しい大学として『首都大学東京』を17年度
に断固として開学する強い思い」があると前書きをしておきながら,
「改革である以上、現大学との対話、協議に基づく妥協はありえな
い」として対話や協議をしないと宣言している。「『首都大学東京』
は、東京都がそこに学ぶ学生や東京で活躍するさまざまな人々のた
めに設置するものであり、教員のためではない」というのが面白い
点だが,だったら「学生や都民の意見を聞きなさい!」と言いたい。
現存する4つの大学の教員を吸収する形で作られるのに,その教員
と対話や協議をすることが,すなわち妥協である,という判断が子
どもじみている。建設的な話し合いをしようといっているのが分か
らないのが管理本部の中の強硬派のようじゃ。

第2点の大学院の検討じゃが,これも検討部会を教学準備委員会の
下に作って,第3回教学準備委員会で提示した川勝委員案を元に作
ると宣言している。ここでも話し合う様子がない。

そして第3点。意思確認書提出の取扱い、混乱の責任。これは,混
乱の原因が「改革」に批判をした教員にあるという,本末転倒の恫
喝じゃ。「何らかの仕切りが必要」とか,「なんらかの担保がない
かぎり」というのはいったい何を意味しているのか?こんな言葉で
大学の教育や研究を考えることができるのか?威嚇かと思ったら,
恫喝になっていた,という話じゃ。やれやれ。借金の取り立て業者
がやってきたような怖さがあるな。

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【1-3】東京都立大学・短期大学教職員組合『手から手へ』
第2268号(2004年3月10日付)
http://www5.ocn.ne.jp/~union-mu/0310-1.pdf
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信じがたい対話拒否と破廉恥な現大学切り捨て
─道理のない管理本部長、学長予定者の対応を糾弾する!!―

3月8日に都立大学茂木総長と管理本部の会談が行われ、添付のよ
うな書類【1-1】が管理本部側から提示されたと聞いています。都
立大学評議会が、この文書の内容に対して「受け入れることができ
ない」との見解を示したことや、「同時に、ここに重ねて、 早急
に新大学準備のための開かれた協議を開始するよう」求めたことは、
新大学に責任を負うものとしての当然の態度表明です。

この管理本部の文章は冷静に読めばすぐわかるように、自己矛盾を
多く含んでいますし、また、真に都民や国民に開かれた新大学を作
るために努力してきた都立の4大学の教員の努力を完全に踏みにじ
る内容になっています。管理本部側が真剣に「新大学」を作る意思
があるのかさえ疑わざるを得ない内容であり、憤りを通り越して呆
れ果ててしまいます。

1の本文の5行目に「改革である以上、現大学との対話、協議に基
づく妥協はありえない」と言う文章がありますが、これは日本語と
して意味をなしません。「改革である以上、・・・対話、協議に基
づく検討が必要」な筈です。したがって、「現大学との対話、協議
に基づく妥協はありえない」と言っているのは、もはや「4大学の
教員の英知を結集して改革を行うという気は全くない」と言い放っ
ていることであり、管理本部は4大学がこれまで長年培ってきた英
知(教育・研究)を無視し、かつ破壊し、真に都民や国民に開かれ
た大学を作る意思がないことを明言しているわけです。つまりこれ
は、憲法で保障されている「大学の自治」や「学問の自由」を敵視
し、無視する態度であります。

2では、新大学の大学院も学部と同様、現行の組織を無視して管理
本部と西澤学長予定者の恣意のままに設計することを宣言し、都立
大評議会の道理ある要望を真っ向から否定しています。

「意思確認書」に関して、みずから2月18日付けで人文、経済、
理の学部長、研究科長に対して提出を要請したにもかかわらず、3
の2行目で3月になってからの提出を「同様の取り扱いをする訳に
はいかない。何らかの仕切が必要である。」というのは良い大学を
作ろうと譲歩した教員の意思を完全に踏みにじっています。それに
続く「なんらかの担保がない限り、新大学には参加すべきでない」
も具体的にどういう「担保」を期待しているのか全く理解に苦しむ
内容で、低劣なやくざまがいの脅しです。最後から2行目分はもっ
と問題です。「総長、学部長(研究科長)、教授クラスの教員にあっ
ては、混乱を招いた社会的、道義的責任を自覚すべきである。」と
はよくもこういうことが言えると驚かざるを得ません。この間、真
に都民や国民に開かれた大学を作るために誠実に協議を要請し、提
案をしてきたのは、都立大総長であり、学部長(研究科長)であり、
かたくなに協議を拒否し、計画を河合塾に丸投げし、大企業や秋葉
原再開発などで利益を得るほんの一握りの人たちのために大学を利
用する計画を秘密裏に進めて、「混乱を招いた社会的、道義的責任
を自覚すべき」なのはまさに管理本部の方なのです。

今重要なのは、管理本部が1月の評議会声明を真摯に受け止め、4
大学と民主的に話し合う機会を再構築すべき点です。

既に「意思確認書」を提出した教員も、まだ出していない教員も、
良い大学を作ろうという点では思いは同じです。管理本部がこのよ
うに乱暴に現大学を切り捨て、対話の拒否に出ようとしている今こ
そ、既に出したかどうかに関わらず一致団結して新大学を作るため
に奮闘しましょう。

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【1-4】新大学批判者に「最後通告」 東京都が都立大に文書送る
asahi.com 2004年3月10日付
http://www.asahi.com/edu/nyushi/TKY200403090390.html
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05年春開設予定の「首都大学東京」をめぐり、東京都は9日、異
論が強い都立大(八王子市)に対し、「批判を繰り返す教員は新大
学に参加すべきでない」などとする文書【1-1】を送った。反対運
動がやまないことへの「最後通告」とみられるが、教員らは「自由
な批判を封じ込める大学などありえない」と反発し、新大学への参
加を見合わす動きが出ている。

文科省への設置申請を来月に控え、教員が足りずに計画が立ち行か
なくなる可能性も出てきた。

関係者によると、文書は元東北大学長で学長予定者の西沢潤一氏と
都大学管理本部長の連名で出された。「石原慎太郎知事には新しい
大学を断固として開学する強い思いがある」「改革である以上、現
大学との対話、協議に基づく妥協はありえない」とした上で、「公
に改革に批判を繰り返す人たちには建設的な議論が出来る保障がな
い」などと述べている。

都立大の評議会は同日、この文書について議論し、「受け入れられ
ない」「早急に開かれた協議を開始するよう求める」とする見解を
まとめた。

都は、新大学に参加するかどうかを問う「意思確認書」を都立大な
ど廃止対象の4大学の教員に送っている。都は新大学の教員数につ
いて500人程度を予定しているが、都に出された「意思確認書」
は約400通にとどまり、提出済みの教員にも取り下げの動きが出
ている。


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【1-5】意見広告の会ニュース111号 2004.3.10
「意見広告の会」事務局のコメント
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目次
1 ついに始まった恫喝 西澤・山口文書が都立大学に 重要!【1-1】
2 都立大学評議会見解【1】 
3 会員制クラブの記事 読売新聞
4 「毎日新聞」コラム欄 「見ていて清々(すがすが)しい・西澤氏」
5 文科大臣の答弁2/27 「都民の会」のホームページより
6 大学を覆うモラルハザード 岡山茂氏(早稲田大学助教授)【2】
7 背景説明(3、4、5)
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7 背景説明:都立大学をめぐる現状 都立大学包囲網の形成

2/28集会の成功が以下のような反動を引き起こしていると思わ
れます。

(i)国会・文科省(5)

2/28以前ですが、河村文科大臣は都立4大学の協議体制につい
て、「検討を進めていると聞く」と答弁しています。全く大学側の
意見を聞こうとしない東京都の態度は、明らかに大学教授会での審
議を定めた学校教育法、大学設置基準に違反していますが、それに
ついてほおかむりをしようとしています。河村文科大臣は自民党江
藤・亀井派に所属し石原知事・亀井氏との関連から派閥ないし自民
党タカ派の文科省締め付けが始まっているものと考えられます。

(ii) 財界(3)

また急遽「TheTokyoU―Club(仮称)」を発足させた
ことは、財界の一部の動員が始まったということでしょう。

(iii) 一部マスコミ(4)

更に「毎日」の川勝平太氏の「コラム」は驚くほど内容に乏しく、
「首都大学」の教学体制については、「首都東京の立地を生かし、
首都独自の地域学とでもいうべき学問を柱にしたカリキュラムを固
めたようである。」程度のことしか述べられていません。もちろん
この程度の教学理念も、受験予備校「河合塾」への丸投げ的業務委
託によって形成されつつあるわけです。

この種の「無内容記事」については都立大側の丁寧な反論が期待さ
れますし、特に「投稿」などの丁寧な反論にはそれなりの効き目が
あるもので、是非とも必要なことと考えられますが(ホームページ
掲載は効果無し)、問題はこれほどの無内容記事をマスコミが掲載
し始めたという点に求められましょう。

これまでメディアは、現場記者の頑張りなどによって、都立4大学
問題でのまともな記事が目立ちました。少なくとも「国立大学法人
法案」の時よりは。

この単に石原・西澤支持ムードを醸すだけの無内容記事の掲載は、
一部のマスコミ上層部が、何らかのきっかけで都立大つぶしへ転向
してゆく先駆けとなるやも知れません。

しかしながら、それもこれも都立大学の頑張りと2/28集会の大
成功という「石原プラン」にとっての危機的状況がもたらしたもの
と言えましょう。(1)の文書が最もその危機感を反映しています。
そもそもが、学長予定者に過ぎない人間が、いったい何の資格で現
職の大学管理本部長と名前を連ねて、公文書まがいの文書を教職員
に配布できるのでしょうか。西澤氏はまだ私的な斡旋程度の事柄し
か行い得ないはずなのでは。都は頭に血がのぼって、文書作成の基
本すら失念してしまっているのではないでしょうか。

また8日に予定されていた高橋理事長予定者との会合の中止(管理
本部長だけが大学を訪問)もなんだかおかしな話で、9日からのシ
ンガポール出張などもともと予定のうちに入っているはず。無責任
といえば無責任ですが、どうも石原・西澤・山口の強硬派が柔軟路
線の高橋氏を排除したというのが、事柄の真相のようです。そう考
えなければならないほど、文書(1)は強硬に見えます。

以上のように現状はますます深刻な状況に入り込みつつあります。

必要なのは支援です。

改めて「都民の会」への皆様のお便り・カンパなどのご支援を要請
致します。

「意見広告の会」事務局


━ AcNet Letter 71 【2】━━━━━━━━━━ 2004.03.11 ━━━

「大学を覆うモラルハザード 公共性危うくする「経営」先行」
岡山 茂氏(早稲田大学・フランス文学、アレゼール日本事務局長)
朝日新聞夕刊03/09

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早稲田実業学校の初等部が入学試験の面接で350万円もの寄付を保
護者に求めていたという。早稲田大学も責任を免れるものではない
だろう。白井克彦総長は早稲田実業学校の理事長でもあるし、寄付
金の額は保護者にとって、子弟を早稲田大学へと無試験で進学させ
るための条件と映ったはずだからである。しかしそこにおいて問わ
れているのは、一私立大学の学校法人としてのモラルばかりでなく、
公共サービスとしての高等教育を危うくしているネオ・リベラルな
大学改革の是非である。

        ◆          ◆

早稲田大学はいま財団法人あるいは株式会社への道をひた走ってい
る。奥島孝康前総長は学校法人としての公共性の強調を批判してい
るし(『大学時報』04年1月号)、財務担当の関昭太郎常任理事も、
日本の大学が「大学人」によっていかに不健全な経営に陥っている
かを指摘しつつ、私立大学が「学校法人」として甘やかされてきた
ことを批判している(日本経済新聞、03年12月13日)。

「財の独立なくして学の独立なし」という関氏の考えは、企業と同
じようなトップダウンの経営によって早稲田大学を世界レベルの大
学へと躍進させようというものである。しかしアメリカの有名私大
のように莫大な資産があるわけでもない日本の私立大学に、どうし
て自律した経営が可能だろうか。初年度納入金はすでにいくつかの
学部で120万円を超えており、学費の値上げも不可能である。学内
外に寄付を乞うのでなければ、事務職員のリストラや、資産を増や
すための投機的試みに走らざるをえないのは目に見ている。

じっさい早稲田大学は、創立125周年を記念した寄付を募るほかに
も、自らSPC(特定目的会社)を設立して不動産の証券化事業に取
り組んだりしている。しかしさらに問題なのは、理事会の力が強ま
るなかで、学生や教職員も知らないうちに新たなプロジェクトが始
まり、始まったあとも十分な説明がなされないということである。
4月から法人化される国立大学に対抗するためにも、よりスピーディ
な意思決定が必要であるとされ、学内での合意形成はほとんど無視
されている。たしかに早稲田大学は変わったけれども、学生は大学
問題に無関心になり、多くの教職員は理事会に対して疑心暗鬼になっ
ている。

       ◆          ◆

日本の大学は、民営化圧力の下で切磋琢磨しているというよりも、
目に見えない暴力のスパイラルに巻きこまれて自律性を失っている
というべきだ。私立大学の必死の経営努力は、法人化による混乱が
続いている国立大学や、改革をめぐって地方自治体の首長と深刻に
対立している公立大学にも圧力として働いている。個々の大学にとっ
ては真摯なものかもしれない改革への取り組みが、システム全体を
混乱させ、「生き残る」大学がはたしてよい大学なのかどうかもわ
からなくさせている。

この1月にイギリスでは、上限を六十数万円にして大学が独自に年
間授業料を設定できるようにするという法案が、僅差で議会を通過
した。サッチャーの過激な改革のあとでも大学の授業料は二十数万
円に抑えられていたが、ブレア首相が今回提出した法案はその枠を
取り払うものであったため、野党ばかりか、与党の内部にも激しい
反発が起きた。このことは、ネオ・リベラリズムの先進国であるイ
ギリスにおいてさえ、公共サービスとしての高等教育の存続を求め
る声がいまだに強いということ、そして大学が政界を揺るがすほど
の大問題になっているということを意味している。

日本において異様なことは、大学生の8割近くを受け入れている私
立大学の公共性が危機に瀕しているにもかかわらず、国・公・私立
からなる日本の大学システムをどうするのかをめぐって、文部科学
省が具体的なプランを示さず、国民的な議論も起きていないことで
ある。小泉首相による「聖域なき改革」の方針に文部科学省が従っ
ているというなら、その方針を批判する大学人、野党や与党の議員
たち、そして彼らを支えるメディアの力が、いまほど試されている
ときはない。

早稲田大学の白井総長は、学校法人が高額の寄付を求めること自体
には何の問題もないと考え、今回の事件もそのプロセスに問題があっ
た不幸なミスにすぎないとみなしている。日本の大学界全体を覆う
モラルハザードがそこに色濃く影を落としている。

おかやま・しげる 53年茨城県生まれ。早稲田大学大学院博士課程
中退、パリ第四大第三課程修了。「アレゼール日本」(高等教育と
研究の現在を考える会)事務局長。

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編集発行人:辻下 徹 admin@letter.ac-net.org
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