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新首都圏ネットワーク


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Academia e-Network Letter No 67 (2004.03.06 Sat)
http://letter.ac-net.org/04/03/06-67.php

━┫AcNet Letter 67 目次┣━━━━━━━━━ 2004.03.06 ━━━━

【1】東京大学史料編纂所教員有志声明
大学入試センター試験問題作成者公表方針「決定」について

【2】大学入試センターの出題者氏名公表についての報道
http://www.shutoken-net.jp/web040227_4yomiuri.html

 【2-1】読売2/27:センター試験の作成者名を公表、透明性確保へ方針転換

 【2-2】共同2/27:問題作成者を公表へ センター試験で文科省

 【2-3】朝日2/26:センター試験の問題作成者氏名を公表へ

 【2-4】東亜日報2/15:日本自民党「朝鮮人強制連行はなかった」


【3】日本言語学会から日本学術会議への要望書 2003.11.22
「都立四大学の統廃合問題と人文学軽視について」
  http://wwwsoc.nii.ac.jp/lsj2/doc/MetUniv_200312.pdf

【4】「国立大学法人の労働関係ハンドブック」
和田肇,野田進,中窪裕也 編
商事法務 2004年3月6日 \2,800 ISBN 4-7857-1126-4


━ AcNet Letter 67 【1】━━━━━━━━━━ 2004.03.06 ━━━━

東京大学史料編纂所教員有志声明
大学入試センター試験問題作成者公表方針「決定」について
                  
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#(賛同等の連絡先:
鶴田氏(tsuruta@hi.u−tokyo.ac.jp)
遠藤氏(endo@hi.u−tokyo.ac.jp)
アドレスは半角にしてご使用ください。)
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「新聞報道やインターネット上で配信されるニュースが伝えるとこ
ろによれば、本年1月17日に実施された大学入試センター試験の
「世界史」(A・B共通問題)で朝鮮人の「強制連行」が正解選択
肢であったことをめぐって、次のような事態が起きています。

・この試験問題について、1月23日に「新しい歴史教科書をつ
くる会」が、文部科学省に対して、「強制連行」の設問を採点
から除外するよう求める要望書を提出した。

・2月26日に文部科学省は、大学入試センター試験の問題作成
者について、今後(新規に委嘱される委員が関与する問題が役
割を終える2007年以降)氏名を公表する方針を決めた。

・2月27日付共同通信配信記事によれば、実際は「自民党議員
グループが反発し、公表を要求。文科省がこの日、公表方針を
同グループに伝えた。」であるが、「文科省は方針転換の理由
を『センターの業務運営の透明性を高めるため』などとしてい
る。」という。

・「新しい歴史教科書を作る会」のホームページによれば、自
民党の「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」が、2
月13日と2 6日の「総会」に文部省高等教育局の学生課長と大
学入試センター副所長を呼んで「問題作成者名を公開せよ」と
迫り、文科省側が公開を「確約」したとも言われている。

もしこのようなことが事実であるならば、歴史の研究と教育に携わ
る者として、私たちは重大な危惧をいだかずにはいられません。

まず疑問なのは、なぜ出題内容上の疑義が氏名公表要求や文科省の
担当者を呼ぶことに結び付くのでしょうか。もし内容について意見
や疑問があるならば、入試センターの問合せ窓口を通して行うのが
本来のルールであり、問題作成者の氏名公表を求めることは議論の
すり替えです。また、「議員有志」でしかない「若手議員の会」が、
文科省・入試センターの関係者に「確約」を要求するというのも、
政権政党の議員であることを利用した圧力もしくは恫喝だと言わな
ければなりません。

入学試験問題という特性上、問題作成者名の公開やその手法につい
ては、機密性や中立性・公正性の保持などの観点から慎重に検討さ
れるべきです。とくに客観的事実が重視される歴史の分野では、外
部圧力によって出題内容が左右されるようではいけません。今回の
文科省・センターの「約束」が事実であるとすれば、こうした問題
点を考慮しないままに、一部政治集団の圧力に屈する形になるので
はないでしょうか。現に今回のような政治的圧力が存在する状況下
で問題作成者名を公表するならば、出題内容に対する中立性・公平
性を本当に保つことができなくなる恐れがあります。もし文科省や
入試センターが、そうした検討を欠いたまま「方針転換」を決めた
とすれば、教育や入試に関する行政の任にある者として、自ら責任
を放棄するに等しい無責任な対応・行動であると言わざるを得ませ
ん。

「つくる会」・「若手議員の会」は、戦時下に行われたのは「国民
徴用令」に基づく合法的な徴用であり、強制連行は無かったと主張
しています。しかしそれは、当時の歴史状況や学界の研究蓄積を無
視した議論であると言わなければなりません。国民徴用令は、通常
のやり方では労働者が集まらないので、国民を強制的に徴発するこ
とができるという勅令であり、また徴用令の存在が、実際に強制連
行が存在しなかったことと同義でないことも明らかです。割り当て
られた人数を確保するために朝鮮半島で行われたことや、鉱山等に
おける労働実態については、これ までの研究が明らかにしていま
す。

もし伝えられるような「方針転換」が事実であるとすれば、私たち
は次のような危惧をいだかざるを得ません。

第一には、特定集団の政治的圧力によって、大学の入試に関わる重
要な方針の「転換」が決められていることです。入試問題について
の情報公開を進めようとするのであれば、メリット・デメリットや
公開の手法について慎重な検討を行なう必要があります。

第二に、「つくる会」・「若手議員の会」も文科省・入試センター
も、これまでの歴史学の研究成果を全く無視していることです。

第三に、今回のような形で問題作成者名が公開されることになれば、
問題作成者個人に対してさまざまな攻撃がかかる恐れがあります。
その場合、入試センター試験の質にも影響が及びかねませんし、戦
前・戦中において国家が研究・教育に対して過度に干渉した事への
反省から生まれ、憲法や教育基本法に盛り込まれた「学問の自由」
の破壊にもつながります。

この認識に立った上で、私たちは、文科省と大学入試センターに対
して、「氏名公表」「方針転換」と伝えられたことに関して、事実
関係を明らかにするよう求めるものです。あわせて、報道機関各社
もおいても、この件に関する事実関係究明に積極的に取り組んでい
ただくよう要請します。

            2003年3月5日
             東京大学史料編纂所教員有志(23名)


━ AcNet Letter 67 【2】━━━━━━━━━━ 2004.03.06 ━━━━

大学入試センターの出題者氏名公表についての報道 抜粋
http://www.shutoken-net.jp/web040227_4yomiuri.html

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【2-1】読売2/27: センター試験の作成者名を公表、透明性確保へ方針転換
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文部科学省と大学入試センターは26日、大学入試センター試験の
問題作成者を2007年度から公表する方針を固めた。1979年
に国公立大入試に共通1次試験が導入されて以降、問題作成者が公
表されるのは初めて。これまでは、問題漏えいにつながる恐れがあ
るとして非公表だったが、センター入試に対する透明性を高めるた
め、方針を転換した。

文科省などによると、問題作成に携わっているのは、同センターか
ら委嘱された国公私立大の教員約430人で、任期は2年。1年ご
とに問題作成委員の半数を入れ替える仕組みだ。委員は任期中に、
問題作成や、点検、過去の問題との難易度比較を行い、計3か年分
の問題作成に関与する。

このため、文科省は、今年4月に新たに委嘱される委員について、
関係した試験が終了後、氏名などを公表したいとしている。

問題作成者をめぐっては、今年1月の大学入試センター試験の世界
史の問題が「強制連行」を取り上げたことに自民党内の一部が「事
実かどうか検証できていない」と反発し、今年の問題作成者を明ら
かにするよう求めていた。しかし、文科省などは、今年の問題作成
者の公表には慎重な姿勢を崩していない。

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【2-2】共同2/27 問題作成者を公表へ センター試験で文科省
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文部科学省は26日、大学入試センター試験の問題作成者について、
任期終了後に公表する方針を決めた。

これまでは問題漏えい防止などを理由に公表しなかった。しかし、
今年のセンター試験の「世界史」の問題で「強制連行」の表現があっ
たことに自民党議員グループが反発し、公表を要求。文科省がこの
日、公表方針を同グループに伝えた。

文科省は方針転換の理由を「センターの業務運営の透明性を高める
ため」などとしている。

センター試験では、原則として各教科ごとに、大学教員で構成する
問題作成委員会を設置。委員の任期は2年で、毎年約半数ずつ交代
する。文科省は、委員の任期が終了し、作成に関与した試験が終わっ
た後であれば公表することにした。

ただ、現在の委員は、「氏名非公表」を前提に就任を要請してきた
経緯があり、公表の時期や方法はさらに検討する。

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【2-3】朝日2/26 センター試験の問題作成者氏名を公表へ 自民の抗議受け
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文部科学省は26日、大学入試センター試験の問題作成者の氏名を、
2年の任期終了後、原則として公表する方針を決めた。これまでは
漏洩(ろうえい)の恐れなどを理由に非公表としてきたが、今年の
「世界史」の設問に「強制連行」という表現が使われたことに反発
した自民党議員グループが出題者の公表を強く求めたため、任期終
了後の公表には応じざるをえないと判断した。

問題作成者の公表を求めていたのは自民党の「日本の前途と歴史教
育を考える若手議員の会」。26日の会合に文科省高等教育局の戸
渡速志学生課長が出席し、公表の方針を明らかにした。ただ、これ
までの問題作成者には「非公表」を前提に就任を要請してきたため、
具体的な公表の仕方については今後検討するとしている。

戸渡課長は方針転換の理由について、「大学入試センターの運営の
透明性や情報公開、問題を作成した教員の実績評価を進める観点か
ら公表に踏み切ることにした」と朝日新聞記者に語った。

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【2-4】東亜日報2/15 日本自民党「朝鮮人強制連行はなかった」
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#(東亜日報は韓国紙 http://japanese.donga.com/ )

「・・・・・・自民党所属の衆・参議員約80人が所属する「日本
の前途と歴史教育を考える若手議員の会」は13日に会議を開いた。
2年ぶりに開かれた会で、経済産業相に就任した中川昭一会長の後
任に古屋圭司衆院議員が選出された。

議員らは、1月に実施された「大学入学センター試験」(韓国の大
学入学修能試験に該当)の中で、世界史科目で出題された問題を重
点的に論議したと朝日新聞が14日付で伝えた。

出題された問題は、「次の中で日本統治下で朝鮮で起こったことは
何か」という選択問題だった。正解は「第二次世界大戦中、日本へ
の強制連行があった」。

議員たちは、試験問題の中で「強制連行」という表現に問題がある
ということで意見が一致したという。さらに歴史教科書で「強制連
行」関連の記述内容を削除することを求めた。・・・・・・」


━ AcNet Letter 67 【3】━━━━━━━━━━ 2004.03.06 ━━━━

日本言語学会から日本学術会議への要望書 2003.11.22
http://wwwsoc.nii.ac.jp/lsj2/doc/MetUniv_200312.pdf
  #(日本言語学会からのお知らせ 2004年2月26日より
    http://wwwsoc.nii.ac.jp/lsj2/j-news.html )
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要 望 書

2003年12月22日
日本学術会議
会長 黒川 清 殿

都立四大学の統廃合問題と人文学軽視について


本年8 月1 日に東京都の大学管理本部より、東京都立大学、同科学
技術大学、同保健科学大学、同短期大学の四大学を廃止し平成17
年度に新大学を設立するという「都立の新しい大学の構想」が発表
されました。

この構想では、新大学の都市教養学部に社会学コース、心理・教育
学コース、国際文化コースからなる人文・社会系が設けられること
になっています。しかし、その枠組みと教員の配置を考えるなら、
現在の都立大学人文学部で行われている哲学、史学、文学といった
人文学の核となる諸分野の研究と教育は、明らかに縮小されること
になります。そしてこれまで文学科の各専攻で行われてきた諸言語
の研究と教育も、大幅に縮小されることが予想されます。

現在の日本社会の趨勢を考えると、社会学や心理学といった分野に
多くの学生が集まることは事実であり、これらの分野に重点をおく
構想が一般社会の要求に応えようとするものであることも一面では
理解できます。しかし、一国の文化とその文化に基礎をおく社会の
健全な発展のためには、時流に流されることなく学問の独立を守り、
基礎的な分野の研究を継続して進めていくことが必要です。

文学と哲学は、洋の東西を問わず古代より、学問の根幹に位置する
ものとして重視されてきました。そしてこれらの分野の根底にある
のが言語の研究です。このような基礎的な学問分野を軽視した大学
の「改革」が、長期的に見て、日本の文化・学術の発展に益するも
のであるとは到底考えられません。そして、今回の構想のうちにあ
る人文学軽視の発想は、単に東京都立大学の人文学部のみに係わる
問題ではありません。日本言語学会は、今後、目先の効果や単純な
経済的効率を重視した同種の構想が「大学改革」の名のもとに全国
の他の大学に波及していくことを危惧するものです。

日本言語学会は以上の考えに立ち、我国の科学、学術に関する重要
事項を審議し、日本の学術行政の今後を方向付けていくことのでき
る機関として極めて重要な責務を負っておられる貴会議に、次の二
つの点について要望します。

1) 都立四大学の統廃合計画と新大学の構想について貴会議の立場
から検討し、その問題点を明らかにして意見表明を行い、文部科学
省に提言すること。

2) 今後も人文学を軽視する東京都立大学と同様の組織改編が全国
の他の大学に波及しないよう、十分な注意を払っていくこと。

この要望は、本年11 月22 日に開催された日本言語学会第127 回大
会に先立つ委員会において議題となり、以後今日まで同委員会なら
びに常任委員会において慎重かつ十分に議論を尽くしてきた結果で
す。よろしくご考慮のほどお願いいたします。

日本言語学会 会長 庄垣内正弘[印]


━ AcNet Letter 67 【4】━━━━━━━━━━ 2004.03.06 ━━━━

「国立大学法人の労働関係ハンドブック」
和田肇,野田進,中窪裕也 編
商事法務 2004年3月6日 \2,800 ISBN 4-7857-1126-4
http://www.gov-book.or.jp/shinkan/200403/104030203.html
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4785711264
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総説―公務員法から労働法の世界へ―
1.国立大学法人とは 2.職員身分の引き継ぎと国家公務員としての身分喪失
3.労働法の世界へ 4.労働条件の決定システム 5.就業規則について
第1章 労働条件の規制システム
第2章 採用、労働契約の締結
第3章 労働基本権
第4章 賃金・退職金
第5章 労働時間
第6章 休暇・休職・休業
第7章 安全衛生
第8章 服務規律
第9章 契約関係の変更と終了
第10章 その他の処遇
第11章 紛争解決

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編集発行人:辻下 徹 admin@letter.ac-net.org
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