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新首都圏ネットワーク


公立大学法人横浜市立大学定款(案)に関する見解


平成16年2月25日
横浜市立大学を考える市民の会
代表  長谷川 洋

 市第111号議案として2月18日に市会に提出された公立大学法人横浜市立大学
定款(以下定款)について「横浜市立大学を考える市民の会」(以下「市民の
会」)の見解を以下に記す。

 定款に示される公立大学法人横浜市立大学(以下法人)の理事長が、法人の
設置する大学(横浜市立大学)の学長とならないことに対する懸念はすでに
「市民の会」が2月12日に行った横浜市会への陳情書に明らかにしている。ま
た、横浜市立大学教員組合が2月12日に発表した「公立大学法人横浜市立大学
定款(案)の問題点」(以下「問題点」)(註1)が指摘する各項目はすべて、
「市民の会」も同様に危惧する所である。したがって、本見解にて述べるのは
上記の指摘以外に「市民の会」として問題視する部分である。

1 理事長の資質およびその任命に関して

 この点に関しては横浜市立大学教員組合も「問題点」の中で触れているが、
「市民の会」として、いま少し敷衍して述べておきたい。

 理事長の任命に関しては「市長が任命する」とだけ記され、理事長の資質に
ついて定款はまったく触れていない。一方、地方独立行政法人法第71条6項は、
学長となる理事長に関して「人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学における
教育研究活動を適切かつ効果的に運営することができる能力を有する者」と規
定しているが、学長を別に任命する法人の理事長に関してはその資質に言及し
ていない。したがって、理事長はその資質に関して何らの規定もなく、たんに
市長が任命するということになるが、果たして大学を設置する法人の長たるべ
き資質を規定せずにおいて良いのであろうか。

 「市民の会」は「公立大学法人の理事長は、当該公立大学法人が設置する大
学の学長となるものとする」という地方独立行政法人法第71条1項にのっとっ
て理事長を学長が兼ねるべきと主張してきたが(註2)、仮に学長が理事長と
は別に任命されるとしても、「人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学におけ
る教育研究活動を適切かつ効果的に運営することができる能力を有する者」と
いう学長の資質に関する規定は理事長の資質に関しても適用されるべきである
と考える。

 市長が「人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学における教育研究活動を適
切かつ効果的に運営することができる能力を有する」者を任命する資質がある
と言い切れない以上、理事長は、学長となるのが妥当であると考える。

2 附則(経過措置)第2項に関して

 理事長の資質に関して述べた1の結論からして、「大学設置後最初の学長の
任命は、選考会議の選考に基づくことを要しないものとし、理事長が行う」と
いう附則(経過措置)第2項の規定(註3)も問題がある。すなわち、仮に経
過措置として「大学設置後最初の学長の任命は…理事長が行う」としても、理
事長がそうした資質を有する者でなければ、「人格が高潔で、学識が優れ、か
つ、大学における教育研究活動を適切かつ効果的に運営することができる能力
を有する」学長を任命することができるかどうか疑わしく、その理事長が市長
によって任命されるということであれば、市長が「人格が高潔で、学識が優れ、
かつ、大学における教育研究活動を適切かつ効果的に運営することができる能
力を有する」必要があるが、1で述べたとおり、市長がかならずしもそうした
資質を持ち合わせているとは言えない以上、理事長は、学長となるのが妥当で
あると「市民の会」は考える。

 また付け加えるならば、すでに理事長予定者として孫福弘氏の名前が発表さ
れ、「コース案等検討プロジェクト部会」の顧問に就任、さらには大学改革推
進専門委員会にも名を連ねているが、いかなる機関あるいは組織ないしは人物
が、孫福氏の理事長としての資質を検討したのか不明である。確かに法的には
問題ないかも知れないが、一般論としてはきわめて問題があると思われる。

 大学がみずから変わることを望む市長であれば、仮に学長を理事長と別に任
命するとしても、大学の総意のもとに理事長が決定され、その理事長によって
学長が任命されるのを当然とすべきであり、法的問題はないと主張するなら、
「まず決めるのは、大学自身です」という市長の言葉は虚言であったことにな
る。

3 理事の定数について

 定款の第8条に記された役員の定数のうち、理事の定数について「市民の会」
は疑義を抱いている。すなわち、「理事10人以内」という記述はあきらかに理
事を10人まで置けるということであり、さらに、学長が法人の理事長でないこ
とから、理事長、副理事長(学長たる副理事長を除き1名)を含め12名までの
理事を置けることになる。この定数を国立大学法人法に示された各国立大学の
理事定数と比較してみよう。国立大学法人法附則別表第一によれば、理事定数
は最大で8名以内(筑波大学、神戸大学、九州大学)最小2名以内(小樽商科
大学、帯広畜産大学、北見工業大学、大阪外語大学、奈良教育大学、鹿屋体育
大学等)であるが、横浜市立大学と同様に医学部を持ち、やや規模の大きい徳
島大学、山口大学などが理事の定数を5名以内としていることから見て、定款
に示された理事定数は過大であると言わざるを得ない。

 理事はもちろん名誉職ではあるまいから、当然のことながら人件費が必要と
なり、理事の数が増えることは、その分教育・研究の費用が減ることになる。
さらに理事は理事長によって任命されるものであり、法人の内部はもとより市
会等によるチェックも働かず、悪くすれば利権、天下りの温床となる危険を孕
んでいると言えよう。理事定数は横浜市立大学の規模、および運営の効率を考
えれば、学長を理事長と別に任命するとして、理事長1名、副理事長を含めて
理事5名以内、理事長が学長であるとして、理事長1名、副理事長2名、理事
4名以内とすべきものであり、かつ、理事の任命に関しても市会等のチェック
が働くようなシステムを定款に明記すべきであると考える。

 註1 http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/ を参照のこと。

 註2 すでに「横浜市立大学の新たな大学像について」への見解
(2003.11.21)において、学長を理事長とし、その下に経営担当と病院担当の
副理事長を置くよう提言している。

 註3 地方独立行政法人法第71条第2項の規定、「学長を別に任命する大学
の学長の当該学長を別に任命する大学の設置後最初の任命については、前項第
5項の既定にかかわらず、当該学長を別に任命する大学に係る先行機関の選考
に基づくことを要しないものとし、定款で定めるところにより、理事長が任命
するものとする」にもとづくものである。

以上