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新首都圏ネットワーク

福岡教育大学の現状

*転載・転送歓迎します

福岡教育大学の教員有志です。
4月の法人化までの日数も迫っておりますが、私たちの大学が、今、どのような状況
にあるのかを、学外・特に福岡近郊以外のみなさまにもお知らせしたく、ご連絡いた
します。
福岡周辺地域では、2月16日より新聞・テレビ等でも報じられ*、状況の一端をご
存じの方もおられるかとは思いますが、それ以外の地域の方々には、本学の状況は全
く知られていないと思います。

*新聞では、2004.2.16:毎日新聞夕刊/2.17:朝日新聞朝刊、西日本新聞夕刊/
2.18:西日本新聞朝刊、朝日新聞朝刊/2.19:毎日新聞朝刊/2.20:毎日新聞夕刊、
読売新聞夕刊/2.21:読売新聞朝刊、西日本新聞朝刊

この間、私たちの大学では、法人化準備に乗じ、学長の大学に対するトップダウン的
運営が異常なまでに強化されています。
本学のような単科大学では、教授会が評議会の役割を兼ねており、「中期目標・計
画」をはじめ、法人化後の大学運営組織については、あくまで教授会で審議しなけれ
ばならないのですが、学長はそれを拒んでいます。
そこで、先週末、2月20日に、私たちは以下のように、学長の辞職を求める「声
明」を発表いたしました。賛同者は、24日現在、呼びかけ人を含め77名となって
おります(教授会構成員は208名)。
ぜひお読みいただき、私たちの立場をご理解いただけますと幸いです。

(なお、このメールに対するご意見・ご質問などをお送りいただく際には、下記の
メール・アドレスまでお願いいたします。)

連絡先:保条成宏(Hojo Masahiro)
     福岡教育大学教育学部福祉社会教育講座
     〒811-4192 福岡県宗像市赤間文教町1-1
     TEL 0940-35-1533(ダイヤルイン)
      E-mail: hojomasa@fukuoka-edu.ac.jp

    
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   声    明

 松尾祐作福岡教育大学学長は、2004年1月8日付の全教職員宛文書「法人化後の運営
組織について(報告)」(以下、「報告」とします)において、本学が国立大学法人
に移行した後の運営組織案(以下、「運営組織案」とします)を示し、全学に対して
理解と協力を求めました。これは、「運営組織案を教授会には一切諮らないこと」の
事実上の宣言に他なりません。すでに松尾学長は、教授会構成員が納得できる十分な
説明もないまま、法人移行準備を専決的に進めていますが、本来、国立大学法人への
移行準備という本学の目下の最重要事項については、すでに公表されている「国立大
学法人福岡教育大学中期目標・中期計画(素案)」の策定手続と同様に、教授会の審
議を経て最終決定されなければならないものであって、この過程を無視した学長の行
動は、現に、学内に多大なる不信と混乱を招いています。
 松尾学長は、「報告」において、「運営組織は大学法人全体の在り方と密接に関連
することから、教授会のみならず、事務協議会、附属学校からも意見をうかがい、全
構成員の意向を反映しつつ精力的に充分議論を尽くし、検討を進めてきた」と述べて
います。しかし、現状は、果たして、その通りになっているでしょうか。例えば、事
務組織は、もともとトップダウンで運営されており、運営組織案について、多くの事
務職員がその内容について熟慮できるだけの十分な説明を受けたうえで意見を自由に
表明できているのか、疑問です。また、教員にとっては、今回の運営組織案が今後の
教授会のあり方に対して大きな影響を与えるものであるにもかかわらず、当の教授会
は、この案件を審議する機会を一度も与えられていません。したがって、「全構成員
の意向を反映しつつ精力的に充分議論を尽くし、検討を進めてきた」とする学長の言
明は、事実に反するものであると言わざるを得ません。
 松尾学長は、さらに、法人化後の学長予定者の辞令を受けた者の責任と権限におい
て、運営組織作りを進めていくと通告しています。確かに、国立大学法人法が2003年
10月1日に施行され、全ての国立大学長が「国立大学法人の学長となるべき者」とし
ての「指名」を受けました。しかし、この法律に基づいて国立大学が国立大学法人へ
と移行するのは2004年4月1日です。したがって、この日までは、松尾学長が国立大学
法人の学長として「任命」されたことにはならず、その権限を行使することもできま
せん。松尾学長は、本学の運営に当たっては、依然として、現行の国立学校設置法及
びこれを踏まえた本学の規程に基づき、教授会に対して責任を負わなければなりませ
ん。
 にもかかわらず、松尾学長は、今もなお、専決的に法人移行準備を進めるという姿
勢を取り続けています。そこで、教授会有志は、松尾学長の大学運営方針を問うため
に、2004年1月16日及び2月6日の二度にわたって福岡教育大学教授会規程第3条第3項
(「教授会構成員6分の1以上の要求があったときには、これを開かなければならな
い。」)に則って教授会の開催を要求しました。要求者の数は、教授会構成員の過半
数に達しましたが、松尾学長はこれを拒否しました。こうした事態を受けて、教授会
有志は、2月12日、松尾学長の信を問う教授会の開催要求を規程に基づいて行いまし
た。松尾学長はこれも拒否しましたが、この要求者の数も過半数に達しています。
 国立大学法人法は、学長の権限を強化し、そのリーダーシップに期待しています。
しかし、こうした学長のリーダーシップは、決して恣意的なものであってはなりませ
ん。そのため、「中期目標・中期計画(素案)」では、本学の運営体制改善に関し
て、「トップ・マネジメントとボトム・アップの調和のとれた、民主的かつ機動的な
大学運営体制の確立を図る」ことを目標としています。松尾学長による現在の大学運
営は、すでに明らかにそれと矛盾し、トップダウンに終始するものです。このような
大学運営の手法が法人化後の本学に持ち込まれることになれば、先の非常勤講師予算
削減問題をめぐる混乱に示されるように、本年4月に新たに発足する国立大学法人福
岡教育大学の運営に大きな支障が生じるであろうことが容易に予測されます。
 松尾学長は、1月21日、2004年度の人件費不足を理由に、非常勤講師枠を半減する
旨の「学長裁定」なるものを一方的に下しました。その際、予算不足について、対応
策の検討を予算委員会に諮ることなく、しかも予算不足の根拠すら示していません。
このことで学内の不信感は一層増大しています。学内の批判と新聞報道を受けて、非
常勤講師予算半減方針は撤回したものの、松尾学長が大学の根幹である教育を犠牲に
するような判断を安易に下したことは、もはや教育機関である大学の長として不適格
であることを如実に示しています。そもそも国立大学法人法は、国立大学法人の学長
に必要とされる資質として、「人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学における教育
研究活動を適切かつ効果的に運営することができる能力を有する」ことを求めていま
す。
 今回の問題は、本来、大学の自治の範囲で解決すべきものであり、私たちは、学長
の主宰する教授会において、対話と審議を通して解決することを求めてきましたが、
残念ながら、学長の拒否によって果たせませんでした。このうえは、全構成員の相互
信頼と協力態勢のもと、学生の教育と社会への貢献にさらに尽力していくために、あ
えてここに松尾学長の速やかな辞職を要求します。

2004年2月20日    
福岡教育大学教員有志


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【参考】

・朝日新聞西部本社朝刊(2月21日)
「学長権限 はや紛糾  福教大、非常勤講師手当巡る混乱」

 福岡教育大学(福岡県宗像市)の教授会(208人)の有志65人が20日,非常勤講師
の手当を半減する「学長裁定」を撤回した松尾祐作学長に対し,速やかな辞職を求め
る声明を発表した。学長権限が大幅に強まる4月の法人化。組織運営の在り方を巡る
教授会の開催要求を拒否するなど,「トップダウン」を先取りする学長の運営に,懸
念と反発が強まっている。             

 「学内を混乱させようという意図はない。大学の自治を取り戻したいだけだ」
 20日,学内で記者会見した有志代表の岡俊房教授(言語学)はこう強調した。
 辞職要求に至った直接の原因は,非常勤手当の半減を決めた1月の「学長裁定」
と,3回にわたる教授会の開催要求の拒否。裁定は事実上「撤回」されたが,法人化
後の運営の在り方を議題とした教授会の開催要求は,「組織運営は全学の問題。教授
会にはなじまない」などの理由で拒み続けている。
 規定では,構成員の6分の1の要求があれば,学長は教授会を開催しなければならな
い。過半数の開催要求署名が集まったり,「学長の信を問う」との議題に変えたりし
たが,学長は「開催理由に当たらない」との姿勢を崩していない。

発端は原案否決

 混乱の発端は,昨年の全学教授会までさかのぼる。法人化後の「中期目標・中期計
画」。昨年,計3回にわたって審議されたが,学長が提案した原案はいずれも拒否さ
れた。代わりに教授会有志が出した対案が賛成多数で可決され,文部科学省に送られ
た。
 学長に対する「不信任」ともいえる3回の否決を受け,一部教員から学長の辞職要
求が出た。2人の副学長が辞任したが,学長は続投を表明。以来,全学教授会は一度
も開かれないままになっている。
 今回,教授会開催要求が強まっているのは,可決した中期計画と,学長が1月に決
めた組織運営案に「開きがある」とき見方が出ているためだ。
 計画には「重要事項を審議する教授会の役割を踏まえた意思決定システムと運営体
制を整備・充実する」とある。しかし,組織運営案は,教授会の審議権を大幅に縮
小。学長が構成員の多くを自由に任命できる拡大役員会や戦略室を設けて,学長が意
思決定するシステムになっている。
 岡教授らは「この組織では,非常勤手当の半減も強行できる。教授会のチェック機
能も学内のコンセンサスも無視される可能性があり,問題だ」と指摘する。

法的拘束力なし

  朝日新聞の取材に対し松尾学長は「組織運営案が中期計画を踏まえているのは当
然。十分理解していない人が勝手に批判している」と反論。辞職要求については「法
人化を何としても実現するのが今の私の立場だ」と,あくまで職にとどまる考えを強
調した。
 辞職要求に法的な拘束力はなく,このまま教授会が開かれない可能性は高い。
 文科省大学課は「法人化の趣旨は学長が何でもできるということではない。学内の
コンセンサスを得る努力は常に求められる」と話している。

<非常勤講師の手当問題>
04年度の予算で,松尾祐作学長が教職員の定期昇給相当分の人件費が約4400万円不足
するのを補うとして,非常勤講師手当の約8900万円を半減させて「流用」する方針を
1月の「学長裁定」で決定。文部科学省は「人件費に定期昇給分は積算している」な
どと疑問視し,すでに約200人の講師を手配していた教員側は反発した。17日に学長
は「凍結する」と表明し,事実上撤回した。                  
                  
                                      
    (松田京平記者)