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新首都圏ネットワーク

陳 情 書

平成16年2月12日

横浜市会議長 相川 光正 殿

            
 陳情者 〒236-0028 横浜市金沢区洲崎町 5-52
                          横浜市立大学を考える市民の会
                           代表 長谷川 洋 印

件 名

横浜市立大学の地方独立行政法人化に関する定款等の審議に関するお願い

陳情項目

1 横浜市立大学の地方独立行政法人化にともなう法人の役員について、その理事長を学長が兼務せず、副理事長として理事長の下位におかれることの問題点を、市会としても充分に検討した上で、横浜市に対してその是正を図るよう申し入れて頂きたいこと。

2 横浜市立大学の地方独立行政法人化にともなう「改革」について、その学部・コース・カリキュラムなどに、広く市民、および学生を含めた学内の意見を取り入れるよう横浜市ならびに横浜市立大学に申し入れていただきたいこと。

3 横浜市立大学の地方独立行政法人化にともなう「改革」について、行政の介入を受けずに全学の総意にもとづいて行われたのかどうかを市会として独自に調査した上で、横浜市に質していただきたいこと。



陳情の理由・経緯等

1 今回の公立大学法人の定款(案)におきましては、「ただし・・・学長を理事長と別に任命するものとすることができる」との地方独立行政法人法第71条の但し書きにしたがうかたちで、学長が理事長を兼ねない旨が示されております。しかし、同71条冒頭には、「公立大学法人の理事長は、当該公立大学法人が設置する大学の学長となるものとする」とあり、この4月に独立行政法人化される国立大学においても、法人の理事長は学長が兼ねることになっております。これは、研究・教育、とりわけ社会的影響力の大きい教育を担う公器としての大学というものの性質を考えた場合、理事長職を別に設けることはデメリットが大きいと判断されるからに他なりません。
その中でも最も危惧されるのは、@ 経営審議機関の長となる理事長が学長より大きい権限を持つことは、教学における自主性、自律性を損なう恐れがあること、A 理事長の任命に関して大学が関与できない場合、理事長を通して大学における研究・教育に他者(公立大学の場合は行政)が介入する恐れが強いこと、という2点です。昨年10月に「横浜市立大学の新たな大学像について」は、この点については言及せず、学長・理事長を分離するメリットについて、@ 学長が、横浜市との関係が1対1で緊密であることによって生ずる法人の長としての負担の重さを避けられること、A 病院経営による学長の負担を軽減できること、B 経営と教学の担当者を分離することで、それぞれに専心できること、C ともに優れた人材を得やすいこと、など(他の2点は果たしてメリットなのかも明らかでないので割愛)を挙げております。しかし、学長が理事長と対等の立場であるならともかく、副理事長として理事長の下位に置かれれば、教学の場である大学が経営を優先するようになり、大学における「学問の自由」が侵され、大学が大学でなくなる危険性が大であります。大学が大学でなくなる恐れと、学長の負担軽減、運営の効率化を秤にかけるなら、どちらを重視すべきであるかは明白であります。
「横浜市立大学を考える市民の会」は、市民が大学を有することを望むものであり、大学という名を冠した「大学でないもの」を有することは望まないと考えております。したがって、今回の市会におかれましては、横浜市立大学の地方独立行政法人化にともなう法人の役員について、その理事長を学長が兼務せず、副理事長として理事長の下位に置かれることの問題点を市会も充分に検討した上で、横浜市にも質していただくようお願い申し上げます。

2 「横浜市立大学を考える市民の会」は昨年2月以来、横浜市立大学の「改革」を見守り続けるとともに、大学ならびに市長にあてて、再三にわたる要請・提言を行ってまいりましたが、昨年10月に発表された「横浜市立大学の新たな大学像について」に示された「改革案」にそれが反映された形跡はなく、小川惠一横浜市立大学学長への会見要求も実現しませんでした。
また、大学の主催にて昨年7月20日に開催された「大学改革シンポジウム」においても、アンケートと称して簡単なメモ用紙が配布されたのみで、会場からの発言を再三にわたって封じるなど、市民からの充分な意見聴取が行われなかったというよりは、市民の意見を聞こうとしない様子がありありと見えました。
さらに遡れば、大学「改革」の方向性を決めた「市立大学の今後のあり方懇談会」委員の顔ぶれには横浜市民の代表たるにふさわしい名前は見受けられず、最近になってようやく、横浜市民の顔とも言える篠崎孝子氏が「大学改革推進専門委員会」に名を連ねましたが、それとて広く市民の声を聞くと言うことにはなりません。
いかに「大学の自治」が尊重されるべきとはいえ、それは無制限に存在するものではありません。「大学の自治」は、大学が市民、社会、国家、世界との関わりを充分に自覚しつつ、自らを律しながら外に向かって開かれた存在となる時にのみ保障されるべきものと考えます。75年の長きにわたってその前身から横浜市立大学を維持してきた横浜市民が、今このとき、大学の「改革」にたいし何の影響力も持てないということは、民主主義の原則を侵すとともに、市民を侮蔑するものです。
一方、大学は、「改革」案策定にあたって学生アンケートを行ったとしていますが、その結果は「横浜市立大学を考える市民の会」が独自に行った学生アンケート(約450名)の結果とは大きく食い違っており、本当に学生の意見を反映した「改革」案が策定されたのかどうか疑問の残るところであります。また、たとえ入学時のカリキュラムが保障されると言われても、実際には新カリキュラムの中から多くの単位を読み替えで取得することになるであろう在学生にとって、この先の勉学に直接関わるコース・カリキュラム等の決定に、その意見を反映させることができず、在学生にとって大幅な値上げは死活問題となる学費の問題についても明確な指針が示されないとするなら、それはあまりにも学生を無視した「改革」案であるとしか言いようがありません。
さらに、学内の複数の先生方から、コース・カリキュラム案がどのように話し合われているのかまったく見えてこないため、きわめて不安である旨のご意見が「横浜市立大学を考える市民の会」に寄せられており、コース・カリキュラムの決定に関しても、少数による非公開の検討という、学内の総意形成を無視した手法がとられていることが危惧されます。
こうした点から、今回の市会におかれましては、横浜市立大学の地方独立行政法人化にともなう「改革」について、横浜市立大学の学部・コース・カリキュラムなどに、広く市民、および学生を含めた学内の意見を取り入れるよう、横浜市ならびに横浜市立大学に強く申し入れていただきたく存じます。

3 「横浜市立大学を考える市民の会」は、今回の横浜市立大学の地方独立行政法人化にともなう「改革」案、すなわち「横浜市立大学の新たな大学像」の策定にあたって、「大学の自治」に対する行政の介入が行われた恐れがあるとともに、地方独立行政法人法に関する国会の付帯決議で確認されている「学問の自由と大学の自治」の尊重という点がないがしろにされた疑いがあると考えております。
「横浜市立大学の新たな大学像」策定の実質的な作業を行ったのは教員7名、職員7名からなる「市立大学改革推進・プラン策定委員会幹事会」でした。いかに全学的な作業とはいえ、大学の学部改編までともなう教学の大幅な変更に関わる「改革」案作りを行った組織において、教学の担当ではない職員が半数を占めたのかは、大いに疑問となる点です。実際に、「横浜市立大学の新たな大学像について」の教学にかかわる部分には明確な理念が示されない一方で、管理運営については、いかにも行政好みの上意下達のシステムが記されています。
さらに、昨年12月、横浜市大学改革推進本部から個々の教員宛てに「コース案等検討プロジェクト部会参加申込書」なるものが配布されたと聞き及びます。これは、教員が学内においてみずから組織すべきであるはずの教学に直接かかわる検討組織を、市が、学内の総意を形成できない形で押しつけたということで、「大学の自治」に対する行政の介入を大いに疑わせる点です。
また、昨年8月に発表された「大学改革案の大枠の整理について」、および昨年10月に発表された「横浜市立大学の新たな大学像」に対しては、横浜市立大学の各教授会から十指に余る決議・意見・見解などが出されており、それらはほぼ等しく、「改革」案の内容に反対あるいは疑義をとなえるものでありました。これらの意見を大学のホームページ上に掲載しないこと自体、「改革」が非民主的手続きのもとに行われたことを示すと言えますが、さらにその手続きに関しても各教授会から疑義の声があがっている点と合わせて、今回の「横浜市立大学の新たな大学像」の策定過程が、国会の付帯決議に反する疑いがもたれます。
行政の思惑を排除できずに、そして学内の民主的手続き抜きに「改革」が進められる限り、横浜市立大学が市民にとって望ましい大学とはなりえないと「横浜市立大学を考える市民の会」は考え、今回の市会におかれましては、横浜市立大学の地方独立行政法人化にともなう「改革」について、行政の介入を受けずに全学の総意にもとづいて行われたのかどうかを慎重に調査して、その実質的な手続きに違法性がないかどうかを質していただきたくようお願い申し上げます。