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新首都圏ネットワーク


JANJAN (Japan Alternative News for Justices and New Culture)
2004年2月10日号

http://www.janjan.jp/culture/0402/040208957/1.php

迷走続く、「都立大改革」


 先月21日に東京都立大学(東京都八王子市)で「学生・院生集会」が開催
された。期末試験1週間前にもかかわらず、この種の集会では異例と言える、
約300人もの学生が会場に集まった。集会では、非民主的手法で「大学改革」
を推し進めている東京都に対する怒りや、学習・研究環境が破壊されるのはな
いかという不安の声が多く聞かれた。

 集会を主催したのは、都立大学の学生有志諸団体で構成する、「学生・院生
連絡会議」。連絡会議には、これまで個々に「都立大改革」問題に取り組んで
きた諸団体が集まり、学部・専攻の枠を超えて組織されている。集会は、東京
都の「大学改革」の進め方に抗議する「アピール」の採択をもって閉会となっ
た。

 10月7日に都立大総長が東京都に抗議する声明を発表して以降、学内の教
員、学生、学外の諸団体、都民の団体から多数の抗議声明が出された。集会と
同日には、都立4大学教員の過半数が賛同署名した抗議声明が発表された。昨
年度の1、2年生を対象としたアンケートで85パーセントの学生が「改革」
に反対であると回答していたが、今回の集会で、学生の抗議の意志を明確にし
たことになる。

 ことの発端は、昨年8月1日に石原慎太郎・東京都知事が記者会見で、これ
まで検討していた都立4大学を統合する改革案とは全く違う新大学構想(平成
17年4月開学予定)を突如発表したことだ。その「都市教養」、「都市環
境」、「システムデザイン」、「保健福祉」という学部構成を始めとした粗末
な内容もさることながら、正常な手続きを無視した改革強行の手法に非難が集
中した。

 実質的には東京都立大学および他の都立3大学の統合と新大学への組織再編
でありながら、東京都は「現行・都立4大学廃止と新大学新設」であるとして、
都立4大学再編の検討体制から都立4大学関係者のいっさいを排除した。昨年
9月には東京都は、「8月1日新構想」への都立4大学各教員に無条件の賛同
をさせる「同意書」の提出を求めた。その後も東京都の担当部局である「大学
管理本部」は各教員への圧力を強めているという。

 今月6日、石原都知事は記者会見で、新大学名を「首都大学東京」にすると
発表した。新大学発足と同時に大規模リストラが行われようとしていることか
ら、新大学名は「クビ大」と皮肉られている。「8月1日新構想」と同様、新
大学名も新奇なものにすることしか考えられていない。

 大学名に「首都」、学部名に「都市」という言葉が入っているが、東京都庁
は、首都であり大都市である「東京」にしか興味のない単一価値観が支配して
いる。単一の価値しか認めない都庁の異様さは、まさに「巨塔」である。複雑
な学問分野を「都市」という単一テーマでくくれるわけがない。

 また、新大学の理事長は高橋宏・郵船航空サービス取締役相談役に、学長は
西沢潤一・岩手県立大学長に打診しているという。総長および部局長を構成員
の選挙で選んできた東京都立大学にとって、石原氏の「お友達人事」は受け入
れがたい。

 都立高校での「日の丸掲揚・君が代斉唱」強制に始まった東京都の「教育管
理」は、大学の管理をもって最終段階を迎えようとしている。教員の任期制の
導入で東京都は「上意下達」のシステムをつくりあげようとしている。「下達」
の末端に位置するのが学生だ。管理されることで育つ学生を社会に輩出しよう
としている。

 文部科学省への認可申請が始まっているが、大学「新設」では平成17年開
学に間に合わないため、都立4大学の「改組転換」で乗り切ろうとしている。
改組転換の認可申請には、改組転換の審議を教授会が行ったという記録が必要
だ。前述の通り、都立4大学教員の過半数の教員が東京都に反対している状況
で、東京都がどうやって設置認可申請を乗り切るのか、稿を改めて報告したい
と考えている。

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東京都立大学危機の現状(2)
東京都立大学危機の現状

(河井相模)