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新首都圏ネットワーク


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Academia e-Network Letter No 56 (2004.02.16 Mon)
http://letter.ac-net.org/04/02/16-56.php

━┫AcNet Letter 56 目次┣━━━━━━━━━ 2004.02.16 ━━━━

【1】 永岑三千輝氏 大学問題日誌 2004.2.16(2)より
「緊急のお願い:市大「定款」の違法性の全面的指摘の大運動を
・・・・・・これはもはや大学ではなくて、各種学校であろう」
http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/SaishinNisshi.htm

【2】 横浜市議会議案111号:公立大学法人横浜市立大学定款(案)
http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/shiryo/k040218-1.pdf

【3】 公立大学法人横浜市立大学定款(案)の問題点
横浜市立大学教員組合 2004.2.12
http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/shiryo/k040212-1.pdf

【4】 横浜市立大学の改革案に反対する数学者の声明 平成16年2月14日
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040214sugakusha-seimei.htm

【5】横浜市議会への要望書、ネット署名(2003.11-)継続中
http://poll.ac-net.org/1a

━ AcNet Letter 56 【1】━━━━━━━━━━ 2004.02.16 ━━━━━━

永岑三千輝氏 大学問題日誌 2004.2.16 より

緊急のお願い:市大「定款」の違法性の全面的指摘の大運動を

http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/SaishinNisshi.htm
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2004年2月16日(2)

教員組合から、第111号議案「公立大学法人横浜市立大学の定款の
制定」【2】、およびこの重大問題を、国立大学法人法案と対比し
つつ指摘した「問題点」【3】の文書を頂戴した。定款も、問題点
の指摘も、すでに教員組合のHPには掲載されているものである。

教員組合の問題点指摘に共鳴した。教員組合の問題的指摘は、至極
妥当であり、わが国の憲法以下の法律体系に基づく「問題点」の指
摘だと感じた。逆に、議案は「横浜市に大学を持つ資格なし」と陰
口をたたかれていることを確認するものである。この議案どおりと
なれば、これはもはや大学ではなくて、各種学校であろう。

一昨年以来の事務局主導・行政主導の「改革」、「大学の自治」を
無視・軽視した「改革」案策定プロセスの根本的問題がまさに今回
の「議案」で浮き彫りになり、また全国・全世界にさらけ出された
ものと言えよう。これまで市大がいかに大学の自治を侵害されてき
たかと言うことを立証するような「定款」だと思われる。まさにこ
れまでやってきた「改革」を今後大手を振って、「定款」を武器に
して、「合法的に」やるための「定款」であろう。

経営による大学支配、経営による研究教育の支配(それを可能にす
る制度設計)がこれほどまでに首尾一貫している大学は、おそらく
「オンリーワン」、しかも全世界で「オンリーワン」であろう。
「大学の自治」や「学問の自由」の大切さなど何も分からない行政
がひねり出す大学とはこのようなものなのだろう 。この定款がそ
のまま通ると言うことになれば、憲法違反、学校教育法違反などの
訴訟を起こすべきようなわが国法律体系からして違法な諸規定を多
数含んだ「定款」と言うことになるのではないかと思われる。

全国の心ある憲法学者、学校教育法学者、その他、「大学の自治」、
「学問の自由」の法律的保障を研究する全国の研究者・大学人の総
決起を求めたいものである。市会は18日から始まる。緊急を要する
問題である。これを審議する市議会の見識が問題となろう。なによ
りもまず、本学の各教授会と評議会は、このような「大学の自治」
無視の「定款」の問題点(憲法違反、教育基本法違反、学校教育法
違反などを含むと考えられる)をはっきり認識し、しかるべき大学
人としての行動を取らなければならないであろう。

このような「定款」は、まさにわれわれ大学人がまったく知らない
で策定されたものであり、それにたいして「沈黙」することは、大
学人としての責任を放棄したものとして、歴史から、世界から、嘲
笑の的となるであろう。

(*1)http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/shiryo/k040218-1.pdf
(*2)http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/shiryo/k040212-1.pdf
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━ AcNet Letter 56 【2】━━━━━━━━━━ 2004.02.16 ━━━━━━

横浜市議会議案111号:公立大学法人横浜市立大学定款(案)
http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/shiryo/k040218-1.pdf

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#(抜粋)

市111号議案

公立大学法人横浜市立大学の制定

横浜市立大学の設置及び管理を行う公立大学法人横浜市立大学を
設立するため、その定款を次のように定める。

平成16年2月18日提出
横浜市長 中 田 宏

公立大学法人横浜市立大学定款


第一章 総則(第1条〜第7条)

第1条 この公立大学法人は、自主的かつ自律的な経営のもとに、
国際都市・横浜にふさわしい国際性、創造性及び倫理性を有する人
材を育成し、卓越した知的資源の開発に務め、もって横浜市民及び
地域社会はもとより、世界に貢献することを目指す大学を設置し、
及び管理することを目的とする。

第3条 法人は、第1条の目的を達成するため、横浜市立大学を設
置する。

第4条 法人の設立団体は、横浜市とする。

第6条 法人は、特定地方独立行政法人以外の地方独立行政法人と
する。

第2章 役員(第8条〜第17条)

第8条 法人に、役員として、理事長1人、副理事長2人、理事1
0人以内及び監事2人を置く。

第9条 理事長は法人を代表し、その業務を総理する。・・・

第10条 理事長は、市長が任命する。

第11条 大学の学長は、理事長と別に任命するものとする。

第3章 審議機関

第1節 経営審議会(第14条〜第17条)

第2節 教育研究審議会(第18条〜第21条)

第4章 業務の範囲及びその執行(第22条・第23条)

第5章 資本金等(第24条・第25条)

第6章 委任(第26条)

附則
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━ AcNet Letter 56 【3】━━━━━━━━━━ 2004.02.16 ━━━━━━

公立大学法人横浜市立大学定款(案)の問題点
2004.2.12 横浜市立大学教員組合
http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/shiryo/k040212-1.pdf

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#(見出しのみ)

問題点

1. 学長とは別に理事長をおいていること。

2. 理事長の権限が強大すぎること。

3. 理事長・理事に教育研究に関する識見を有しない者を選出しうる
かのような規定となっていること。

4. 教員人事の権限が教育研究審議会にないこと

5. 教育研究審議会のメンバーに学部長が入っていないこと

6. 教育研究審議会のメンバーに学外者が含まれていること。さらに
学長選考メンバーにもなるとされていること。

7. 教育研究に係る学則その他の規則の制定・改廃などが教育研究審
議会の審議事項とされていないこと。

8. 教育研究組織の設置・廃止や教育仮定など、教育研究に関する事
項にもかかわらず経営審議会の審議事項としていること。

9. 経営審議会の学外者メンバーの任命にあたって、教育研究審議会
の意見を反映するシステムを欠いていること。
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━ AcNet Letter 56 【4】━━━━━━━━━━ 2004.02.16 ━━━━━━

横浜市立大学の改革案に反対する数学者の声明
平成16年2月14日

http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040214sugakusha-seimei.htm
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私たち数学者は、先般明らかにされた横浜市立大学の改革案(「横
浜市立大学の新たな大学像」、以下「大学像」)には基礎学問の研
究に携わる数学者として看過出来ない問題が多々あり、この案が実
行されればひとり市大の問題でなく日本の大学の在り方に負の影響
を与えることは必至と考え、ここに反対の意志を表明します。

「大学像」には、数理科学科をひきつぐものと考えられる「数理情
報コース」の理念・内容として次のように書かれています。

「数理科学と情報科学の基礎学問を教育し、IT技術やシミュレー
ション等に習熟した人材の育成を行う数理情報コースを置く。」
「数理科学の基礎理論や情報理論の教育を行い、IT・計算機、シ
ミュレーションなどを支える現代社会の情報技術を含む、基盤科学
技術の基礎を担う人材を育成する。」

これ以上の詳しい内容はまったく書かれていませんが、これを文字
通りに読めば、これまで市大の数理科学科が果たして来た数学とい
う基礎学問の研究教育とは相当異質である「IT・計算機、シミュ
レーション」などを教育することとなり、これまでの伝統を引き継
ぐものとはなっていません。

決して大規模ではありませんが、これまで実業界や教育界に多くの
人材を供給してきたことに加え、いくつかの世界的な数学研究を生
み出し、数学者の養成という意味でも数学界に一定の貢献をしてき
た市大の伝統がここで打ち切られることになるとすれば、これは日
本のいや世界の数学界にとって惜しむべきことです。

また、研究費については、次のように記述されています。

「研究は、外部資金を獲得して行う。」「一方、大学の経費を原資
とする研究費は、大学が地域貢献や若手人材育成等必要と認めた場
合、競争的資金として効果的に活用する。」

これでは、数学研究のような基礎学問の研究を続けていくことは出
来ません。数学研究は紙と鉛筆だけで出来るわけではありません。
学術雑誌という媒体を通し、あるいは、直接の研究集会を通して、
世界の研究が交流することによって初めて学問の発展があることは、
実際に数学研究に携わっている我々にとっては自明のことです。ま
た、数学のように直接の応用を目的としていない研究に対して外部
資金を獲得することは非常に困難です。もしも、この案が実行され
れば、実際に学術雑誌や学術書の購入が不可能となり数理科学の研
究はまったく不可能となるでしょう。

およそ、大学での研究は非常に専門性の高いものであり、数理科学
もその例外ではありません。案が示すように非専門家が多数入った
人事委員会で選考などの人事を行うとすれば、仮に意図的でなくと
も、専門的な観点からは不適当な人事が行われる可能性が生じます。
しかも、横浜市はすでに「学長と理事長の分離」を既成事実として
理事長予定者を発表しました。大学を独立法人にすることと学長と
理事長を分離することは、これから市会で議論することがらであり、
このふたつが決定してから理事長の決定が行われるのが筋です。こ
のように先走った行為は市民の代表たる市会を軽視するものであり、
まさに、大学を行政が不当に支配する恐れを感じさせるものです。
公立大学においても、学問の自由を担保するための教授会の自治は
尊重されなければなりません。国立の独立行政法人大学と同様、実
質的な選考は各教授会で行い、研究評議会で承認するという体制と
することが必要です。

また、「新たな大学像」では「原則として全教員を対象として任期
を定めて任用する制度とする」とし、教員全員の任期制を取るとし
ています。さらに、給与については「年俸制」を謳っています。

あらゆる学問研究が精神の集中を必要とすることは言うまでもあり
ませんが、とりわけ、数学研究のように頭脳を研究に集中させ、そ
れを持続し続けることによってしか研究成果を得ることが出来ない
学問分野にあっては、自分の待遇や任期について神経を取られるこ
とは研究にとって致命的な障害となり得るものです。流動性を確保
するために、一部の限られたポストに任期制や年俸制を導入するこ
とは、大学教員の任期法の趣旨にも合致し意味のあるものですが、
全教員を対象として任期制を採用することは、上に述べた理由に加
え、継続的な大学運営に責任を持つ体制がとれない恐れもあり、大
変乱暴な構想であると言わざるを得ません。このように教員の身分
を不安定化することは,非専門家による人事とあいまって,行政に
よる大学支配が現実のものとなる恐れが強く懸念されます。

以上の理由により、私たちは横浜市大の改革案を根本から再検討す
ることを要望するものです。


数学者有志 (現在116名)代表 玉野研一(横浜国立大学)

呼びかけ人(26名)

松本幸夫(東京大学)、中神祥臣(日本女子大学)、鈴木俊夫(山
梨大学)、志賀徳造(東京工業大学)、秋山茂樹(新潟大学)、
高野恭一(神戸大学)、飯高茂(学習院大学)、平野載倫(横浜国
立大学)、津久井康之(専修大学)、今野紀雄(横浜国立大学)、
黒木哲徳(福井大学)、坂内英一(九州大学)、北田泰彦(横浜国立
大学)、野崎昭弘(大妻女子大)、山口孝男(筑波大学)、小林一章
(東京女子大学)、樋口保成(神戸大学)、松本堯生(広島大学)、
白岩謙一(名古屋大学名誉教授)、佐藤文広(立教大学理学部)、
石井仁司(早稲田大学)、岸本晶孝(北海道大学)、織田孝幸(東
京大学)、三井斌友(名古屋大学)、吉田克明(日本大学)

賛同者(90名)

保倉理美(福井大学)、稲葉尚志(千葉大学)、福原真二(津田塾
大学)、増島高敬(自由の森学園・和光学園)、井上尚夫(熊本大
学)、浅田明(Freelance Mathematician)、柳原二郎(千葉大学
名誉教授)、楫 元(早稲田大学)、石村隆一(千葉大学)、
土屋信雄(桐蔭横浜大学)、岡部恒治(埼玉大学)、浪川幸彦(名古屋
大学)、植野義明(東京工芸大学)、辻下 徹(北海道大学)、
二木昭人(東京工業大学)、関本年彦(成城大学)、瀬山士郎(群馬
大学)、一山稔之(亜細亜大学)、大森英樹(東京理科大学)、
吉田正章(九州大学)、坂内悦子(九州大学)、千原浩之(東北大
学)、大貫義郎(名古屋大学名誉教授)、西山 豊(大阪経済大学)、
西川青季(東北大学)、片瀬 潔(学習院大学)、風間英明(九州
大学)、田口雄一郎(九州大学)、宮崎直哉(慶應義塾大学)、
木村良夫(神戸商科大学)、浅野 洋(神奈川大学)、宮川鉄朗(金
沢大学)、前田定宏(島根大学)、隅山孝夫(愛知工業大学)、
渡辺敬一(日本大学)、横山良三(大阪教育大学)、池田敏春(九州工
業大学)、西田康二(千葉大学)、坂本隆則(福岡教育大)、牟田正憲
(九州産業大学)、吉川通彦(元島根大学)、三輪拓夫(島根大学)、
河部裕子(桐蔭横浜大学)、西森敏之(北海道大学)、深谷賢治
(京都大学)、佐藤篤之(明治大学)、黒木玄(東北大学)、
藤井道彦(京都大学)、中屋敷厚(九州大学)、谷口良明(西日本工
業大学)、松本重則(日本大学)、森 真(日本大学)、松山善男
(中央大学)、阿部孝順(信州大学)、吉川智教(早稲田大学)、
庵原謙治(神戸大学理学部)、梶原健司(九州大学)、中尾愼宏
(九州大学)、坂元国望(広島大学)、谷島賢二(学習院大学)、
増田哲(神戸大学)、金子晃(お茶の水女子大学)、儀我美一
(北海道大学)、宮岡洋一(東京大学)、高野清治(横浜国大)、
加藤久男(筑波大学)、伊藤光弘(筑波大学)、大塚厚二(広島国
際学院大学)、厚山健次(崇城大学)、藤原大輔(学習院大学)、
田中敏(八戸高専)、古用哲夫(島根大学)、高崎金久(京都大学)、
広中由美子(早稲田大学)、楳田登美男(姫路工業大学)、増田哲也
(筑波大学)、安藤 豊(東京水産大学名誉教授)、大河内広子
(東京薬科大学)、金戸武司(筑波大学)、水谷忠良(埼玉大学)、
福井敏純(埼玉大学)、御前憲廣(日本大学)、杉田公生(東海大学)、
一ノ瀬 弥(信州大学)、上坂洋司(日本大学)、川村一宏(筑波大学)、
佐藤 肇(名古屋大学)福田拓生(日本大学)、蓮井 敏(京都産産
業大学)、根上生也(横浜国立大学)

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編集発行人:辻下 徹 admin@letter.ac-net.org
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