トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク


『熊本日日新聞』コラム新生面 2004年2月12日付

新生面 金太郎・桃太郎・慎太郎


 この人の周囲には騒動が絶えない。石原慎太郎・東京都知事が今般取り組む
のは都立大の改革。都立大、科学技術大、保健科学大、都立短大の四大学を
二〇〇五年から「首都大学東京」に統廃合するのだが、反対の声も強い▼斬新
なのは大学名だけではない。学生には介護や環境ボランティアなどを体験させ、
英語力試験の「TOEFL」で五百点取らないと卒業させない。教える側の環
境も厳しくなる。都立大の人文学部は大幅に縮小される。教授の任期は五年。
給与には業績を反映させる。大学も改革プランを準備していたが、石原知事は
トップダウンで決めた▼大学で重視すべきは教養か実学かという問題も問われ
ている。石原知事は実学を選んだようだ。就職に有利な実学路線を取る大学が
多いのも事実で、その方が学生も集まりやすいという▼「しかし、外国の主要
な大学は、学部で教養教育、高度な専門教育は大学院で、という流れです」と、
世界の教育事情に詳しい藤田英典・国際基督教大教授は語る。都立大は難関で、
学生募集には困っていない▼都立大の最高意思決定機関である評議会は異例の
反対声明を出した。「知事の手法が独裁的なパフォーマンスという反発でしょ
う」と藤田教授。パフォーマンスが得意な政治家が目立つのは、国民にも英雄
的な腕力を求める気分が強いためだろうが、そこに危うさはないのだろうか▼
「金太郎、桃太郎、慎太郎」。石原都知事のルポを書いた作家の佐野眞一さん
は、石原知事をこう表現する。確かに、やんちゃな感じが童話の英雄たちと重
なる。重なりすぎ、かもしれない。