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新首都圏ネットワーク


『読売新聞』2004年2月10日付

新大学に残留しますか・・・都が教員518人に「確認書」


 都立の4大学を統合して来年春に開校予定の「首都大学東京」の設立準備の
ため、東京都は10日、4大学の教員計518人に、新大学の教員になる意思
があるかどうかを尋ねる「確認書」を送付した。

 石原慎太郎知事が推し進める新大学計画には、教員側から「強引だ」との批
判が出ており、確認書は、国への認可申請を前に、揺れる現場の1人1人に去
就の決断を迫り、教員数にめどをつける狙いがある。都は、残留希望が少なす
ぎると開校準備に支障を来すため、結果に気をもんでいる。

 都がこの日、確認書を送付したのは、開校時までに定年に達する教員を除く、
すべての教授、助教授、講師。都は、今年4月末までに、認可申請に必要な残
留希望の教員の「就任承諾書」をとりまとめ、文部科学省に提出する方針。今
回の「確認書」は、就任承諾書が何通集まるかを下調べする意味があり、確認
書が少なければ、新規募集で補う必要が出てくる。

 都が、二段構えで慎重に意思確認をする背景には、過去の"失敗"がある。新
大学に先駆け、今年4月に開校する都立大学・法科大学院(ロースクール)の
教員採用で、就任承諾書を出した教員4人が、都の改革方針への反発から、そ
の後、相次ぎ退職願を提出。その結果、大学院は設置基準に満たなくなり、入
試日程の見直しを余儀なくされた。文科省からは再発防止を強く求められたと
いう。

 都の大学管理本部は、今回の確認書送付を「事実上、最終の意思確認」(幹
部)と位置づけており、「予定通り準備を進めるには、少なくとも6、7割の
確認書が欲しい」とする。しかし、都が新大学構想を打ち出した直後の昨年9
月、新カリキュラムの策定などに参加するかどうかの意思を確かめるため、や
はり全教員に送った「同意書」は、約半数しか集まらなかった。今回の確認書
は、直接"進退"を問うものだけに、同意書よりは集まるだろうとの予測もある
が、予断を許さない状況だ。

 仮に欠員が多数出る結果になれば、新たに教員募集に時間を要し、最悪の場
合、設置認可の遅れや、一部のコース(学科)について初年度の設置を見送る
ことも考えられるという。

 都立大の南雲智・人文学部長は「就任承諾書の前段である確認書に法的根拠
はないはず。まだ勤務条件も提示されておらず、(去就を)判断できる状況で
はない」と反発。「都側に焦りがあるのかもしれないが、こうした手法はいた
ずらに教員側との溝を深めるだけ」と都への批判を強めている。

 都が設定した確認書の回答期限は今月16日。

 新大学計画を巡っては、4大学の計7学部を再編して4学部にする構想が昨
年8月に発表されると、専任教員が大幅に減る都立大・人文学部を中心に反発
の声が上がった。10月には茂木俊彦学長が「大学側と十分な協議がない」な
どと異例の抗議声明を発表。理学部や工学部などの教員有志からも抗議が相次
ぎ、先月下旬には、学部長らで組織する評議会が、「このままでは新大学は、
大学としての教育責任を果たし得ない」とする声明を発表した。