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新首都圏ネットワーク


『毎日新聞』2004年2月6日付

都立新大学:教員職思わぬ不人気 競争率6倍どまり


 東京都が来春開校を目指す都立新大学の教員を公募したところ、競争率は6
倍にとどまったことが6日、分かった。専門分野によっては応募者がわずか1
人のポストもあり、研究者の就職難が続く中、首都圏の大学では異例の低倍率
となった。新大学で導入される任期制など、石原慎太郎知事による改革の混乱
が、思わぬ不人気を招いたとみられる。

 都は昨年12月、新大学の都市教養学部とシステムデザイン学部の教授、准
教授(助教授)の計9ポストを公募し、先月末に締め切った。この結果、応募
者は計54人で、平均倍率は6倍。最も人気を集めた経営学(ベンチャービジ
ネス)でも応募者は9人で、「ヒューマンメカトロニクスシステムコース」の
ロボット専攻は1人だった。

 新大学の教員人事では、廃止される現在の都立大など4大学の教員が移籍す
るが、新設分野の不足分を都が公募した。教授、准教授とも任期5年で、准教
授は1回しか再任しないため、研究者の間には「短期の任期付き採用では、落
ち着いて研究できない」と懸念する声が広がっていた。

 都立大の理系助教授の一人は「研究者の職は買い手市場。都内の大学で公募
があると、競争率が100倍を超えるのも珍しくない。石原知事のトップダウ
ンの改革によるゴタゴタでそっぽを向かれた」と指摘。都立大の教職員組合も
「都の任期制・年俸制案が、いかに外部から人気のないものかを表した。優秀
な教員確保という点でも、極めて深刻な事態になる」と警告する。

 都は新大学設立に向けた教学準備委員会の下で、応募者の書類審査と論文選
考を進めており、2月中には採用候補者を決定する予定。都の大学管理本部は
新人事制度を「准教授は業績さえあげていれば教授職への昇格が可能。若い活
動力のある研究者・教育者が就任することで、大学に活力が生まれる」と説明。
教員の採用についても「都が独断で進めているわけではなく、現在の大学の先
生も入った教員選考委員会が選考にあたっている。手続きに問題はない」と話
している。【奥村隆】