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新首都圏ネットワーク


『毎日新聞』群馬版 2004年1月29日付

['04まえばし決戦]第3部 争点を追う/3 群馬大教育学部移転


 ◇現職も一転「存続方針」

 02年初頭に始まった群馬大と埼玉大の統合協議。群馬大の教育学部を埼玉
大に統合する方針が明らかになった同年10月、教育学部の統合反対運動が県
内全域で始まった。前橋市としても存続を積極的に求めていくよう、「群馬に
教育学部を残す会」(坂西輝雄代表)が市役所に陳情に訪れた。ここで萩原弥
惣治市長(70)が発した言葉がその後、波紋を広げた。

 「大学周辺の下宿屋が低迷したら前橋の経済がおかしくなるが、学生を減ら
すことはないと聞いており、賛否は差し控えたい」。存続に消極的ともとれる
萩原市長の発言に、会のメンバーは猛反発。「教育は経済の問題ではない」と
不満をあらわにし、陳情に同行していた市議が慌てる場面もあった。

 それから約1年3カ月後の今年1月5日。再度、存続運動への協力を求めて
要請に訪れた同会のメンバーに対し、萩原市長は「誤解を招く表現があった」
などとして存続に積極的に取り組む姿勢を示したという。

 3日後、自身の後援会の新年会では「これからは群馬大とも手を握りながら
高等教育機関の充実を図りたい。教育学部をさらに拡充し、前橋の人づくりの
一助にして頂きたい」とあいさつし、公の場でも存続を求める考えを初めて明
らかにした。

 また、同大が来年度から臨床面での研究に着手する、がんを切らずに治す最
先端の重粒子線治療の施設誘致も公約の一つに掲げ、「市長は群大も大事にす
るとアピールした」(ある選対幹部)。この姿勢に「言うことが変わった」と
驚く市職員も少なくなかった。

 これに対し、前県議会議長の高木政夫氏(53)陣営は昨秋ごろから、存続
を求めるグループと接触。かつての萩原市長の発言から、「市長は移転容認派」
というイメージを最大限「利用」し、後援会長には元群馬大教育学部長の松島
弥太郎・同大名誉教授が就任した。現在も「萩原市長は教育学部はいらないと
言っている」と公言してはばからず、「私は前橋の宝である教育学部を守ろう
とする側に立っている」と訴える。

 また、共産党前橋勢多地区委員長の生方秀男氏(55)も両大の統合そのも
のを「大学のリストラ」として、「強行することに反対」との姿勢だ。

 こうした中、埼玉大で統合慎重派の学長が4月に就任することが決まった。
学長懇談会は昨年12月に行われたのを最後に、次回開催日は決まっていない
のが現状で、「思わぬ形で争点がぼけてしまった」(群馬大関係者)との声も
聞かれるが、20万にも上った署名数は無視できず、3氏とも「教育学部死守」
を柱の一つに掲げている。=つづく