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新首都圏ネットワーク

宮城労働局訪問の報告

高等教育フォーラム各位

 東北大学職員組合では、本日、宮城労働局を訪問して、労基法関連
事項に関して監督官に質問をしてきました。要点を報告します。なお、先
日の全大教北海道・東北地区単組代表者会議で、品川さんほかの皆様
に「質問して確かめてくる」とお約束した点も含んでおります。
 以下、Qは東北大学職組でAは監督官です。録音から起こしたもので
はなく、メモに基づく私の文責での要約です。

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Q:細則も含めて届け出なければ就業規則を届け出たことにはならない
と理解してよいか。
A:そのとおり。

Q:細則委任事項がある場合、委任先の細則をすべて届け出るべきか。
委任先でも就業規則体系に含まれないものがあってもよいのか。たとえ
ば勤務評定について「勤務評定規則は別に定める」と就業規則に書いて
あって、勤務評定規則は就業規則体系に含まれないというのはよいのか。
A:委任がある場合、委任先の細則もすべて就業規則であり、届け出て
もらうし、意見聴取もしてもらう。

Q:現在の非常勤職員の中にフルタイムの日日雇用職員がいる。こう
した職員を、1年の有期雇用職員とする案がある。そして、有期雇用職員
とパートタイマーの就業規則をいっしょにしようとする動きがある。短時間
勤務者とそうでない職員をいっしょにするのはよくないのではないか。
A:個々の内容が労基法に適っているかどうかが問題で、どのように
別規則をつくるかが問題なのではない。

Q:医師や技師が宿日直しながら本来の業務もする場合は、労基法では
「宿日直」とは認められないと聞いた。
A:そうだ。
Q:では、具体的にどういう労働時間にすればよいだろうか。
A:交替制か1ヶ月以内変形労働時間制だろう。ただ、病院でも夜間の緊
急の診療が必要か、必要でなく管理当直だけでよいかは、部門によっ
て実態が違うと思う。

Q:給与の口座振り込みには労使協定が必要と考えるか。
A:そうだ。また、まず本人が同意していることが大前提だ。
Q:口座振り込みに労使協定が必要となると、過半数代表選出の母体に
口座振り込みを行う対象すべて、具体的には非常勤講師を含めなければ
ならないということになるのか。
A:いや、まず非常勤講師の労働者性を判断するのが先だ。労働者性が
ないということになれば、労使協定の対象ではなくなる。
Q:非常勤講師と大学の関係を業務委託契約にするという動きが一部の
大学であるが、これに対して労働局や厚労省の見解はあるか。
A:ない。実態に即して適切かどうか判断する。業務命令が出るのか、
かわりの人を送って行える仕事なのか、教材等は自由に選べるのか、な
どが基準となる。

Q:国立大学のセクハラ防止規程を就業規則にとりこむのは問題があると
思う。学生間のセクハラなど労使の問題でないものが含まれているし、
均等法が要請する雇用の平等に関する事項に対応した苦情処理制度が
ない。
A:就業規則になじまないというのはその通り。就業規則に入れても、
労使の問題でない部分は意味がない。
 均等法上の苦情処理制度は必ずつくらなければならないというもので
はなく、努力義務である。
Q:セクハラ防止委員会が教授会の代表、副総長、学生相談所長などで、
教授会自治に対応した構成になっている。労使代表を含めたものではない
のだが、これは望ましくないのでは。
A:確かに、労働者委員を入れた方がよい。

Q:勤務時間の割り振りという考え方はできるのか。たとえば、いまは、私学の
非常勤講師を兼業する場合、勤務時間外兼業となっている。昼間に数時間出
かけ、その時間はもともとの職場に勤務しないことになる。しかし、別の日に
長時間勤務するよう事前に割り振りを行って、週40時間になるようにしている。
このやり方は、面倒ではあるが維持できると教員としては助かる。しかし、労
基法上許されるのか。
A:業務命令で兼業するならば、それも大学の労働ということになるが。
Q:そういうものではなく、個人が兼業願いを出し、教授会で承認する。
A:始業・終業時刻の繰り上げ、繰り下げとみなしうる範囲かとは思うが。
ひんぱんにあることか。事前に予測可能か。
Q:通年で1コマなどと引き受ければ頻繁にある。また予測可能だ。
A:……。兼業先で労働者ということになると、労働時間の通算という問題が
出てくる。
(川端:あまりなじみのない話だったようで、回答も必ずしも明確ではない。業務
命令ではなく、かつ平日の真っ昼間に行う兼業が許可されるというのが、民間
企業では考えにくいからだろうか。いずれにせよ、理屈としては結構ややこしい
問題であることが判明した。私学の教員も兼業している以上、実際には解決
可能なことなのだろうが)

Q:休息時間を廃止する案がある。これは労基法を理由とした不利益変更に当
たるのではないか。終業時刻の15分繰り下げと相まって、実質30分も労働時
間延長になる。
A:制度の変わり目のところでそうなる場合、労基署では取り扱いにくい。労使
関係で対処して欲しい。

Q:交替制に近い数パターンの始業・終業時刻を定める案がある。そして、その
間での変更が、勤務時間の臨時的な変更の一種として扱われている。これはお
かしいのではないか。
A:確かにおかしい。恒常的に、何種類かの始業・就業時刻があるという話にす
るのがスジだ。
Q:あるパターンから他のパターンへの変更のルールが書いていない。これは不
十分ではないか。「今日はパターンAだったけど明日はパターンBで頼む」と上司
が言えることになってしまう。また、1ヶ月単位変形労働時間制も規定されているが、
これも勤務カレンダー作成ルールが書かれていない。全基連のマニュアルの
規定にも反している。
A:確かにもう少し書いてくれないといけない。

Q:任期付き教員も育児休業・介護休業を取得できる案が出ているが、任期が
あまり長くなく業績審査もあるので、事実上、育児休業は取得しにくいと思う。
そこで、組合は育児休業・介護休業中は任期進行を停止すべきだと主張している。
これは労使関係事項だとは思うが、任期進行の停止は法律上は問題ないか。
A:ない。労使が合意すれば可能だ。

Q:懲戒の公正さについて、労基法上の考え方はあるか。給与減額の限度などは
承知しているが。
A:それ以外はとくになく、労使の合意次第だろう。民間企業で組合が大きいところは、
懲戒委員会に労働組合代表が入っていて、そこで懲戒の決定をする例がある。

Q:教員任期について、退職の自由が発生するのは任期開始後3年たってからと
いう案があるのだが、労基法から見ても任期法から見ても1年とすべきではないか。
A:そのとおりだ。

Q:非正規の職員について、厚労省の考えている均衡処遇というのは、処遇の決定
方式をそろえることだという。理屈はわかるが、具体的にはどういうことなのか。
A:いちばん大きいのは賃金で、格差が大きすぎるということだ。

Q:パートの女性労働者に生理休暇を認めない案がある。労基法68条で認められる
はずだが。
A:そのとおりだ。

Q:就業規則や労使協定は厳密に4月1日にそろえて届出なければならないものか。
A:就業規則は、制定して周知して意見聴取して届け出るわけだから、4月1日でな
ければならないということはない。ただ協定類は、それがないとたとえば時間外労働
を実行できない。だから、4月1日に調印して届け出ていただく必要がある。
Q:しかし、労使協定について事業場での交渉がもめることだってあるだろう。実際
には、2月、3月から話し合っておいて合意し、4月1日にサインだけするということ
でないとまにあわないのではないか。
A:事前に話し合っておかれるのがよいだろう。

Q:就業規則への意見表明と労使協定締結の単位は事業場と聞いている。すると、
全学で一本の就業規則に対して、事業場の数だけ意見書が出て来るし、労使協定
も事業場毎に話し合ってサインするというイメージで間違いないか。
A:そうなると思う。
Q:事業場毎で話しあうならば、そこに出てくる使用者代表に当事者能力が必要
と思う。部局毎に事業場となると部局長が使用者代表だが、それで当事者能力が
あるのかどうか心配している。
A:当事者能力は必要だ。
Q:管理者訓練をしなければ大丈夫とは思えない。困難があれば、人事労務担当理
事に出てきてもらうしかない。
A:そうだろう。大学もそう考えているのではないか。
Q:そうすると、多数の事業場を人事労務担当理事が訪問してまわるので、それはそ
れで大学側もたいへんだと思う。
 労働者代表が全学協議会をつくってそこで人事労務担当理事と交渉し、それを
参考にして、あとは各事業場で最終的な詰めと調印を行う、というのはどうか。
A:それは大学内で合意があればそうしてもよい。特に法には触れない。
Q:ともあれ、使用者代表には当事者能力が必要という点をご指導いただきたい。

Q:労使協定の有効期間は、法的に決まっているのとそうでないのがあると聞いている。
A:そうだ。有効期間が定まっていない場合は、改正の発議の仕方を決めておけば
よい。
Q:期間の定めのあるものについては、最長1年と厚労省が指導されていると聞いた。
A:そうだ。残業などは、1年たつと状況が変わるだろうから。
Q:過半数代表の任期についての考え方はあるか。たとえば、有効期間1年の協定が
期限切れになった場合、その時点で新たに過半数代表を選ぶべきか。それとも、任期
2年の過半数代表といったしくみでもよいか。
A:協定を結びなおす場合は、その時点で代表を選びなおすべきだ。いちど選出された
人が2回結ぶというのでは、外から見ると何も話し合わずに決めているように見える。
Q:過半数代表が人事異動や死亡や退職で、その事業場からいなくなってしまったら
どうするか。
A:有効期限の間は協定は有効だ。その後、別の人を選べばよい。

(川端:過半数代表の任期については、品川氏の投稿にあった指摘と同じで、全大教
のQ&Aとは異なる回答であった)

東北大学職員組合教文部長
川端 望
mailto:kawabata@econ.tohoku.ac.jp