トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク

岐阜大定年制変更について

各位      1/21/04

     山形大学職員組合書記長 品川敦紀

岐阜大では、2004年度から、現行63才定年制を変更し、60−65才で本人の希望
を審査して学長が決定する制度とする、との報道があります。

しかし、詳細は承知しませんが、運用によっては少々問題があるように思えますので、私
見を述べたいと思います。

報道に従えば、現行63才の定年で雇用されている岐阜大学教員は、60−65才で、本
人が何歳を定年にするか希望を出し、学長が業績などを判断し、決定されるようになるよ
うです。では、現職教員全員が63歳以上を希望したとき、その全員が希望がかなえられ
るのでしょうか?もし、本人が63歳以上を希望していても、学長によって、「あなたは
業績がないから60才定年です。」とされるようなことはないのでしょうか?

もし、そのようなケースがあるとすれば、それは、労働条件の不利益変更であって、合理
的理由がない限り一方的変更は、認められません。

そして、その合理的理由の中には、第一に、同業種他社との比較や、一般通念に照らして
合理的か、第二に、会社がそうしないといけない必然的理由(経営状態の悪化)があるか
どうか、第三に、労働組合との誠実な協議をおこなったか、その結果、組合と合意したか
どうか、あるいは、対象従業員の大多数の同意を得たかどうか、第四に、その不利益変更
の代償措置(例えば退職金の上乗せ)がとられているか、また、激変緩和措置がとられて
いるか、などが含まれるとされます。

もし、岐阜大当局がそういった状況にあって、必要な手続き、措置をとっての変更で有れ
ば、許されるでしょうが、そうでない場合は、認められないように思えます。

こうした問題を回避するには、定年を就業規則によって、まず、一律に現行の63才か、
それ以上65才までに設定し、本人の意思によって(学長の判断は含まれない)60才ま
で繰り上げて定年とできる「選択的定年制」を認め、その場合には退職金の上乗せをする
。他方、逆に65才までは、学長が認めれば、定年に達した教職員を、退職させないでそ
のまま「継続雇用」できる、とするのが正しいように思えます。

よけいなお節介かもしれませんが、岐阜大職組の皆様のご検討をおすすめいたします。

報道***************
教官の定年を個別に決定 岐阜大、65歳以上も勤続可(1/21)

 岐阜大(岐阜市)は20日までに、現在63歳と定めている教官の定年退職の時期に
ついて、学長が研究や教育の成果を評価して個別に決める制度を2004年度から導入す
ることを決めた。

 新制度では60-65歳での定年を原則とし、さらに優れた実績があり、外から資金調
達して単独で研究室を運営できれば65歳を超えても勤務が可能。

 4月からの国立大の法人化に合わせて大学の競争力を高めるのが狙いで、文部科学省に
よると、教官の実力に応じて大学側が個別に定年が決まるのは珍しいとしている。

 同大総務課などによると、新制度では教官本人が希望する定年時期を自分で申請し、研
究実績などに応じて学長が定年を決める。評価方法は、学長とは別に機関を設けることを
検討しているという。対象は約730人。
(共同通信1月20日)

労働条件不利益変更に関する判例など*************

就業規則の変更による切り下げ

●就業規則が一方的に不利益に変更されたとき

就業規則の不利益変更についての合理性については、次のような判断基準が考えられます

(1) 改訂変更理由の合理性
(2)変更手続きの合理性
(3) 変更内容の合理性(不利益の内容・程度)
(4)適用上の合理性
(5)不利益の緩和・代替措置の状況
(6)社会的相当性等

就業規則の変更が合理的なものであれば、労働者もそれに拘束されます。

変更の合理性については、一律の判断基準はありませんが、裁判などでは次のような点に
より、合理性の有無を判断しています。(秋北バス事件最大判昭43.12.25、大曲市農協事
件最3小判昭63.2.16、第四銀行事件最2小判平9.2.28)

秋北バス事件 最高裁 s43.12.25
 
就業規則の作成又は変更によって既得の権利を失い、労働者に不利益な労働条件を一方的
に課することは、原則として許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特
にその統一的かつ、画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって当該規則条項が
合理的なものであるかぎり、個々の労働者においてこれに同意しないことを理由として、
その適用を拒否することは許されないと解べきである。
これに対する不服は団体交渉等の正当な手続による改善に待つほかはない。

第四銀行事件 最高裁 h9.2.28
 
就業規則の不利益変更の 合理性の有無は、具体的に就業規則の変更によって労働者が
被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体
の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経過
、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般状況等
を総合考慮して判断すべきである。

一方的に不利益に変更されても、法令や労働協約に違反する部分には拘束されません。(
労基法第92条)

また、違反しない部分であっても変更したことに合理性がなければ拘束されません。