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新首都圏ネットワーク

就業規則案と意見書提出について

1/14/04    山形大学職員組合書記長 品川敦紀

4月1日の法人化を2ヶ月あまりに控え、各大学では、ようやく、就業規則案が出つつあ
るようです。ところが、それらの案を拝見しますと、共通していくつかの問題が有るよう
に思えます。

以前、文書、集会規制に関する問題を指摘させていただきましたが、今回、就業規則の要
件について指摘いたしたいと思います。

すなわち、私どもの山形大学の就業規則素案において、最も顕著に現れていますが、就業
規則に記載されなければならない記載事項の多くが、別規定に委任されているにもかかわ
らず、その委任先規定が示されていない点です。

皆様ご承知のように、労働基準法では、常時10名以上を使用する事業者は、就業規則を
作成し、従業員の過半数を組織する組合がある場合は組合の、ない場合は、従業員の過半
数を代表する者の意見を聞いて、その意見書を添付して、所轄労働基準監督署に提出しな
ければなりません。

問題は、就業規則の記載事項です。記載事項には、全ての事業場で記載しなければならな
い絶対的必要記載事項(下記の一〜三)と、定めをする場合は必ず記載しなければならな
い相対的必要記載事項(下記の三の二以下)があります。ここで、相対的必要記載事項と
いう言葉から誤解をされる方もいるようなのですが、例えば、退職手当に関する事項や、
安全衛生に関する事項は、退職手当を一切出さない場合や、安全衛生について規制や規定
を置かない場合は記載する必要がありませんが、そうでない場合は、必ず記載しなければ
なりません。

皆様ご承知のように、そういった規定の全ては、別規定に委任することが可能となってい
ますが、その場合は、委任先の規定をあわせてはじめて就業規則と見なされます。つまり
、委任先規定が添付されていなければ、その就業規則は、就業規則といえません。そうい
った欠陥就業規則に対しては、就業規則の要件を満たしていないことを指摘して、意見書
の提出を留保できます。

現在の進捗状況を判断すると、過半数代表者への意見聴取が相当遅れ、3月末ぎりぎりに
すらなるのではないかとも思われます。しかし、4月1日まで1週間やそこらに迫って、
意見を求められても、就業規則について詳細に検討し意見を提出するのは事実上不可能で
す。その場合、当然の権利として、時間的余裕を求めて意見書の提出を遅らせることが出
来ます。
 もちろん、組合や過半数代表者が、合理的理由もなく延々と意見書提出を拒んだ場合は
、使用者は、意見書を添付しなくても就業規則は受理されますので、不当に提出を遅らせ
ることは出来ません。しかし、最低でも1ヶ月前くらいには、組合や過半数代表者に必要
記載事項についての委任先規定を全て添えて就業規則を提示していただかなければ、過半
数代表者または過半数組合が意見書が提出できなくても、合理的理由がないとはいえない
でしょう。

就業規則の効力は、各種書類をそろえて労基署に提出し、これが受理されたときとされて
います。したがって、意見書の提出を留保すれば、就業規則は発効しません。すると、就
業規則なしで大学が運営されるという前代未聞の違法状態が生じることになります。

大学当局は、この点を十分理解しているのか疑問に思えてなりません。

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労働基準法第89条に示された就業規則記載事項

<絶対的必要記載事項>
 一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替
に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
 二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の
方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
 三 退職に関する事項

<相対的必要記載事項>
 三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の
決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
 四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、
これに関する事項
 五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに
関する事項
 六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
 七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
 八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する
事項
 九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
 十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする
場合においては、これに関する事項