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  新首都圏ネットワーク


『新潟日報』社説 2003年12月30日付

国立大予算 法人化の趣旨はどこへ


 来年四月に法人化を控えた国立大は、国の予算配分をめぐって揺れたまま年
を越す。

 問題の発端は、財務省が法人化二年目の二〇〇五年度以降、予算を毎年削減
する新たな方針を文部科学省に示したことにある。

 国立大は授業料収入や付属病院収入などの自己収入は歳入全体の半分以下に
とどまり、残りの半分強は国の一般会計からの繰り入れで賄っている。

 その繰入金は、これまでは額を増減する場合は制度や法律変更が必要な「義
務的経費」とされていた。法人化に伴い、繰入金は「運営費交付金」となる。

 財務省はこれを機に、運営費交付金を政策的に増減しやすい「裁量的経費」
に変更するよう文科省に求めた。

 その上で、ほかの独立行政法人と同様に、毎年一定の割合で予算を削減する
「効率化係数」の導入も提起した。

 これに対して「話が違う」と国立大学協会が反発、財務省に方針の見直しを
求めて抗議している。国大協会長の佐々木毅・東大学長らは三カ月後に迫った
法人化を前に「学長返上も辞さない」との強い姿勢を見せており、そのため結
論は年明けに持ち越された。

 文科省は(1)係数の率を縮減する(2)効率化になじまない教育研究の基幹分野
は対象外とする―ことを求めて財務省と折衝している。全国の国立大学長を集
めた会議でもその方針が説明されたという。

 だが、学長の間からは「効率的な運営努力で浮いた予算を教育研究の質向上
につなげるのが法人化の趣旨ではないか」として、係数の導入そのものに反対
の声が出ている。無理もない。

 これでは法人化を「国立大再出発のチャンスとして生かそう」と現場をリー
ドしてきた学長らの見通しが甘かったことになる。大事な基礎研究の衰退を招
くと危ぐする声も強い。

 国立大の予算が縮小されていくことになれば、地方国立大にとっても影響は
大きい。学費の値上げにもつながる。

 国立大法人法の成立過程で、国会は「法人化前の公費投入額を十分確保する」
という付帯決議を行っている。国立大の役割に期待し、自主性を尊重してのこ
とだった。

 国立大がこれまで以上に厳しい経営努力を求められるのは言うまでもないが、
新たなスタートを前に国立大の意欲をそぐようなやり方は極めて問題がある。