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「恩恵」公表を…検査院要求に独立行政法人、頭抱える


読売新聞ニュース速報

 国から受けている「恩恵」を、どこまで公表すべきかを巡り、独立行政法人が
 頭を抱えている。国有施設の無償利用や税金免除分などについて、会計検査院
 が「国民に負担をかけているのだから、すべて開示する必要がある」と求め始
 めたためだ。

 国の付属機関だった時代には「タダ」が当然だっただけに、所管官庁に「どう
 すればいいか」と泣きつく法人もあり、“親離れ”できない独立行政法人の実
 態が垣間見える。

 独立行政法人は、行革の流れの中、国立の研究機関や特殊法人などを改組する
 形で誕生。“親方日の丸”から脱して経営感覚を持たせるため、2000年2
 月、民間に準じた会計基準が作られ、国や自治体から、〈1〉財産を無料また
 は安く提供された〈2〉出資を受けた〈3〉無利子や低利で融資を受けた――
 場合について、金額を算定して公表するよう義務付けられた。

 ところが、検査院は昨年以降、これに加えて「国が負担する費用は、会計基準
 に列挙されたもの以外も明示すべき」と求めた。

 例えば、農水省系の「農業環境技術研究所」(茨城)など10法人に対し、農
 水省のボイラーから受けている熱供給や、同省のスーパーコンピューターへの
 接続の料金を算定し、公表するよう要請した。

 各法人は指摘を渋々受け入れたが、「熱は国有財産か」「スパコンへの接続料
 をどう算定すればいいのか」と、農水省に泣きついた。同省は「来春の決算で
 は何とかしたい」と話すだけで、手をこまぬいている。

 また、検査院は今年、1万件以上の特許を保有する経済産業省系の「産業技術
 総合研究所」(茨城)に、特許庁への納付を免除されている特許料を開示すべ
 きと指摘した。その額は年間5億円と推計される。

 しかし、産総研は「会計基準には、免除されている特許料を記載するよう書か
 れてはいない」と猛反発。財務省なども同調し、検査院はほこを収めざるを得
 なかった。特許料を免除されている法人は産総研を含めて45法人あり、産総
 研は「会計基準で義務づけられていないことまで書くと、他の法人にも影響が
 出て混乱の元だ」と突っぱねている。

 こうした事態について、会計基準の策定に携わった関係者は「当時、法人が国
 から受ける便宜供与がどんなものか、見当が付かなかった」と明かす。一方、
 財務省公会計室は「会計基準に書かれていない要素は基本的に開示する必要は
 ないと、省庁からの問い合わせには答えている。ただ、想定していなかった問
 題が今後も相次げば、基準を改定することはあり得る」と話している。

 宮脇淳・北大教授(財政学)の話「独立行政法人は中央省庁から独立したこと
 になっているが、これまでの慣例で、国から設備の使用料免除などを受けてい
 る中途半端な存在だ。正当な便宜供与と思うなら隠さず開示し、本当に必要か
 どうか、国民の議論に委ねるべきだろう」

[2003-12-28-10:20]