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  新首都圏ネットワーク


『河北新報』社説 2003年12月26日付

国立大予算/一律削減では乱暴すぎる 


 来春に法人化される国立大の予算が、2005年度以降、一律に削減されて
しまいそうな雲行きになっている。

 大学ごとに教育・研究分野や経営改善面の目標を設定し、その達成度合いを
評価して、それぞれの予算配分に反映させる。法人化後の国費支援は、そんな
ルールになるというのが、一般的な理解ではなかったか。

 ほかの行政機関の法人化と同一視しないで、大学の教育・研究機能に悪影響
を及ぼさないような配慮が欠かせない。国会での法案審議でも再三強調された
ことである。

 財務省の一律削減方針に国立大が反発するのは当然のことだ。教育・研究費
も含めて毎年、総枠を削減していくという手法では、やはり乱暴すぎる。

 文部科学省がこのまま財務省方針を受け入れるとなれば、国立大側から背信
行為とみなされても仕方がない。国立大の新生への意欲が一気になえるだけだ。
文科省は財務省に再考を迫るべき重い責を負っている。

 国立大学協会に財務省の方針が伝わったのは11月。04年度予算編成と絡
んで年内に確定する見通しだった。結局、04年度は本年度とほぼ同額を維持
することになったものの、その後についての協議は、年明けに持ち越された。

 財務省が打ち出したのは、毎年、一定の割合で総枠を削減する「効率化係数」
を、国立大への運営費交付金にも当てはめる方式だ。ほかの独立行政法人と同
様に導入されれば、05年度以降、2―3%ずつ減額されることになるという。

 「国立大だけを特別扱いするわけにはいかない」という考え方が、一律削減
方針の土台になっている。

 国立大を法人化すること自体については、反対する動きがあまり広がらなかっ
たのは確かである。その限りでは財務省の考えにも一面の説得力がある。しか
し、教育・研究機能の再編・強化という視点を忘れるわけにはいかない。

 今年7月、国立大法人法が成立した際の審議経過を振り返っておこう。付帯
決議に「国立大の教育・研究の特性に十分配慮する」「法人化前の公費投入額
を十分確保するよう求める」といった文言が盛り込まれていたことを思い起こ
す必要がある。

 法人化後の運営費交付金の配分には、第三者機関の評価を反映させるはずだっ
た。既にその国立大法人評価委員会(野依良治委員長)が発足し、各大学から
中期目標・計画(6年計画)の原案が提出されている。

 「大学の自主的、自律的な運営の尊重」。法成立時の付帯決議がこの点を強
調したのは、目標・計画の策定、評価をめぐって、文科省が介入しすぎる弊害
を恐れたからである。

 第三者評価の仕組みが動きだしたばかりというのに、一律の減額方針が示さ
れるというのでは、国立大関係者が憤るのも無理はない。「文科省支配」をう
んぬんする以前に、新しい評価システムが無視されている。

 少なくとも、教育・研究分野への支援と、運営管理面の効率化を分けて考え
るぐらいの工夫が不可欠である。

 社会的な広がりには至らなかったとはいえ、国立大内部に根強い反対論を抱
え込んで、法人化は第一歩を踏み出した。軌道に乗るまでの配慮が要る。