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新首都圏ネットワーク


石原東京都知事記者会見 2003年12月24日

http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/kako.htm

知事

 新しい大学を東京で、日本に先駆けて作りたいと思っているが、大学関係者
にはいろんな人がいて、大体学者さんというのは、理科系の人はそんなことも
ないだろうけどが、文科系の人は古い発想力のない非常に保守的な人が多くて、
そういう人たちが主になって反対している。メディアの大方の諸君も、そっち
に加担して石原の足を引っ張れば、なかなか痛快なのかもしれないが、やっぱ
り、よく物をみて、総体的に判断してもらいたい。

 第一段階としては、随分いろいろ批判があるようなので、それに対する今日
はその反論に止めまして、年が明けたらもう少し具体的な提案を示し、主にこ
れからそれをそこで学ぶ学生がどう評価するか、世間がどう評価するかをその
批判に待ちたいと思いますけど。

 新大学構想に反対し批判的な人たちは、自分たちの言い分をよしとしている
が、その人たちの主張を一言にして言えば、現状温存でしかない。保守ですな。
悪く言えば保身。現在ある4大学の単なる統合以外の何ものでもない。

 たとえば、私がトップダウンで急にこんなことを言い出したという非難もあ
るが、全然これは筋違いであり、就任以来、ずっと外部監査を入れてきた。そ
れで、都立の大学もその対象で、その監査を受けて、いろいろな不都合な点が
指摘されましたが、個々のトリビアルなディテールの問題についての指摘もあっ
たが、それを総じて、外部監査の総合批評の中には、都立の大学は従来の学問
縦割りの学部構成では特徴がなくて、その存在意義が問われている。教員にもっ
とインセンティブを与えるべきと、そういう多くの指摘がされてもきました。
それは、とっくに学校当局に取次いで、個々の改善も要求してきました。

 また、都立大学の人文学部では、驚くべきことに都立大学を卒業した学生諸
君の就職率が、20%にも達していない。この責任は教授にもあるし、学校の事
務局にもあり、学校全体にある。卒業生の三分の二は、卒業後の進路すら把握
できておらず、社会に貢献する姿勢が見られない。

 しかし、彼等の、反対派の案では、外部監査の指摘やこうした点を改善しよ
うという意向は全く感じられない。案もない。さらに、徒弟制度の中で、自由
な教育・研究を阻害してきた講座制についても、一向に見直そうとする姿勢も
ありません。旧弊のある仕組みを守るだけでは、世界のレベルからどんどん取
り残されてしまう。国立の大学やその他の大学も、世界の流れを眺めながら、
自らの改修改善を図っているんだけど、肝心の都立大学の中で、特に人文系の
先生の中には、こうした意向が全くない。

 こういう大学の現状に、学生諸君や父兄は果たして満足しているのかどうか。
さらに、これをこのまま大温存しようとする、すべてとは言いませんけど、学
校側の動きに都民が納得するかどうか、やはり象牙の塔をふみだして、世間の
風に身をさらしながら、先生方に考えてもらいたい。

 これから作ろうとする新しい大学は、都市問題などの大都市の大学としての
現実に立脚した研究を行い、大都市に求められる有能な人材を都立大学こそ育
成することで、都民にもわかる形でその成果を還元して行こうと狙いとしてい
るわけです。従って、学部構成も学問体系も学際的で、現代社会に必要な幅広
い教養と能力をきっちりと学生に身につけさせた上で社会に送り出そうという
つもりでいる。さらに講座制についても、新大学では廃止して、任期制・年棒
制を導入する中で、若い先生も自立してのびのびと授業や研究をしてもらうつ
もりである。

 我々はすでに示した構想に基づいて、現在、具体的な肉付けを行っており、
来年早々には学生諸君も、楽しくて有意義な大学生活を送ることができるよう
なメニューや具体的な教育内容を発表して、新大学設立に向けた動きを加速さ
せて行くつもりである。

 ちなみに、わかりやすい数字のデータがあるが、都立大学の他の大学、特に
私立大学を比べてみると、支出の合計とうちの人件費の比率が、都立大学は
59.4%、私立大学では51.6%。教員の数は限られているわけですけど、教員一
人あたりの学生の数が都立大学の場合は、これは良いと言う人もいるかもしれ
ないが10.9人、私立大学では35人。収入に占める補助金の率、主要財源は都民
の税金だが、都立大学では72%、私立大学の場合には平均12%。教員一人あた
りの学生の数は、これは極端に少ない、都立大学の場合は、4.6人。上智大学は
25.4人、ICU人文科学科は15.0人、千葉大学文学部は12人、東北大学文学部は
17人。比べて、都立大学は4.6人。これは学生にとって深刻な問題だが、極端に
就職率が低くて17.6%。しかもその他に未把握の部分が67.9%。全国の人文系
の就職率は大体53%が平均。未把握の部分はわずか6%。それからもっと具体的
な小さな例をあげると、ほとんど希望者のない専攻科がある。独文は2人。
仏文は0人。ところが独文の教員が18人。仏文の教員が12人。こういった、非
常にいびつな数字が示すように、やっぱりこういう大学は経営の視点から合理
化されなくてはならないし、合理化されることで、学生たちが都立の大学で学
んで良かったということになると思う。

 一部、人文科学系の先生方の反対というのは、自分たちの責任を棚上げにし
た、本当にただの保守、悪く言えば保身、退嬰的なものでしかないと私は思う。
近いうちに、我々が何を具体的に用意しているかということは、年を明けてか
ら具体的に、先生方も含めて、今いる学生諸君、これから受験をする学生諸君、
その父兄の方々に、わかりやすく、たぶん強い共感をもっていただけると思う。
年を明けてから、具体的に説明をする。

東京新聞

 この間の知事の会見で対案を出せば良いという話があったが、実際に対案を
作る動きが、都立大学の中であるようだが、それについてはどうか。

知事

 だから、具体的な対案を出してくれれば、それは、私たちの方に勉強をさせ
てもらう。具体的な案がなくて、今言っているように、ただただ保守、現状維
持ということでは、これは対案にもならない。それほど本気で今ある大学を憂
いを抱き、行き先を案じているんだったら、ただただこんな形の反対では済ま
ないはず。