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県政あれこれ 山大教育学部存続問題 6年間の一貫した教育で、優れた小中学校の教員を養成するという山形独自のシステム が見えてきた。 山形大、県、山形市の三者が同大教育学部の存続問題を話し合う三者懇談会の第7回会 合が今月11日、山形市内で開かれ、教育学部が姿を変えた新学部で、小学校教員50人、中 学校教員20人を「計画的に」養成していくことで三者が合意に達した。 この「計画的に」というところに重大な決意がこめられている。文部科学省が推し進め ようとする1万人の計画養成枠から外れても、それに負けない優秀な教員を地方独自に育 成していこうという気概あふれるプランが仕上がった。 教育学部が教員の計画養成を断念したのは昨年5月の教授会。それから1年半余。三者懇 の主役として、時に激論を交わしてきた仙道富士郎学長と高橋和雄知事の距離は徐々に縮 まり、今やパートナーとして互いに尊重し合う間柄となった。先の三者懇が終了した後の 記者会見で、市川昭男山形市長を交え、3人が手を握り合う光景が象徴的だった。 国立大は来年4月、いよいよ独立行政法人に移行する。どの大学も地域との結びつきを 重視するようになり、「孤高の学府」などと悠長に構えていられなくなった。「けがの功 名」と言うべきか、山形大は教育学部問題を通して、結果的には「地域との連携」という 財産を手にした。 教育学部の存続を求める県民集団の先頭に立ってきた高橋知事は、新学部から大学院に 進もうとする学生を財政面で支援するため、財団か基金を創設する考え。そこには元教員 らで構成する「山形大教育学部を存続・支援する会」による約1000万円の募金も注ぎ込ま れる見通しだ。 山形大、県、山形市、支援する会という4つのベクトルは当初、それぞれ向きが微妙に 違っていた。しかし今、「将来の県土を担う子どもたちのために、総合性・地域性・実践 性を備えた優秀な教員を育成する」という一点で、方向性がぴたりと重なり合った。大学 本部によると、吉村和夫前山形市長の遺言だった付属校・園の存続もかなうとみられる。 文科省との本格的な折衝はこれからで、新学部名すら決まっていないため、大学にとっ ては息の抜けない正念場が続く。しかし、「これほど県内の教育界が一体になったことは なかった」(ある教員OB)と言われるように、一連の経過は関係者の記憶に深く刻みこ まれた。 【メモ】南東北国立3大学の教員養成課程再編・統合協議に伴い、山形大教育学部が昨 年5月の教授会で教員の計画養成を断念したが、県と山形市の強い反発で路線転換。3者の 懇談会で1年半以上に及ぶ協議を継続、12月11日の第7回会合で新学部を開設して6年間の 一貫教育で小中学校の教員を養成するシステムで合意した。 山形新聞 2003年12月20日 |