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保健学科教職員各位

小林@理学です。

財政投融資からの借入金を国立大学の借金として扱う動きが具体化しています。
「かつては通常の概算要求では予算確保が難しかったために、施設整備費の多
くを財投からの借入金で賄ってい」て、その返済も文科省の予算の中にあった
ものです。

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[he-forum 6485] 科学新聞12/12

『科学新聞』2003年12月12日付

 国立大学法人に借財1兆数千億

 文科省 財投借入金、分配へ 法人制度設計に盛り込む

 国立大学法人は一兆数千億円の借金を抱えることになりそうだ。文部科学省
が現在検討している法人制度設計では財政投融資からの借入金一兆数千億円を
各国立大学がそのまま引き継ぐことになる。平成十七年度から運営費交付金に
効率化係数がかかるかどうかという問題とともに、国立大学法人が実際に自主
的、自律的な運営ができる体制が確保できるかどうかのキーポイントになる。
現在、各大学では法人化に向けた様々な検討が行われているが、こうしたこと
が現実のものとなると財政上の設計が大きく変わりかねない。

 今年度の国立学校特別会計を見てみると、予算規模二兆八千四十五億円で、
歳入は一般会計からの繰り入れが一兆五千二百五十六億円、授業料収入と入学
検定料三千五百九十五億円、附属病院収入五千九百五十七億円などとなってい
るが、その項目の一つに借入金五百五十三億円という項目がある。これは国の
財政投融資からの借入金で、文部科学省は公式発表していないが残高は一兆数
千億円にのぼる。財投からの借入金は、これまで国立大学等の施設整備費とし
て使われてきた。最近は投入資金が回収できる大学病院施設などに使途を限定
しているが、かつては通常の概算要求では予算確保が難しかったために、施設
整備費の多くを財投からの借入金で賄っていた。その結果、現在では借入金総
額は一兆数千億円に膨れあがった。しかも、十五年度国立学校特別会計で見て
みると、借入金償還費は一千八十四億円にものぼり、完全に債務超過を起こし
ている。

 こうした状況であるにもかかわらず、文部科学省が検討しているのは、各国
立大学にこの借金を分配してしまおうという法人設計だ。そのまま頭数で割る
と一大学百数十億円になるが、国立大学の半数は年間予算規模が百五十億円に
満たない(平成十四年度決算ベース)ため、予算規模による傾斜配分を検討して
いる。一方、先行して独立行政法人となった国立研究所の場合、債務清算組織
を作ったり、一般会計の中に含み込んだりと各省ごとに対応が違うものの、新
法人には借金は負わせていない。

 四日に行われた日本化学会のパネル討論会では、「法人化後は学長のトップ
マネジメントによって、大学の個性を発揮し国際競争力を付けることができる
ようになる」相澤益男・東京工業大学長、「運営費交付金制度によって財務的
に自由度が広がり自主的運営ができるようになる」宮田清蔵・東京農工大学長、
といった法人化後の大学のあり方について積極的に取り組む意見が出ている。
しかし、数百億円単位の借金を背負わされたら、経営的自由度は大幅に減って
しまう。

 また、法人化後はこれまでの国立学校施設整備費は、個別に申請が必要な施
設費補助金というかたちになる。各大学が自ら優先順位を付けることや予算の
流れが透明化されることは非常に大切なことだろう。自主的な運営にもつなが
る。

 しかし現実はそう甘くない。九州大学や京都大学の移転などによって、一千
八十七億千七百三十七万七千円(十六年度概算要求ベース)の一定部分は割かな
ければいけないため、どのように素晴らしい施設計画であれ、他の大学にはあ
まりダイナミックに予算は流れない。

 来年四月に国立大学法人は発足する。事務的なことや人事のことなどは二〜
三年の混乱期を経て落ち着いていくだろう。しかし、基本的な法人設計で失敗
してしまうと、修復不可能な事態にもなりかねない。今後、どのような具体的
法人設計ができるのかによって、日本の二十〜三十年後の姿が変わってしまう。
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小林邦彦 名大・医・保健・理 kobayasi@met.nagoya-u.ac.jp
http://www.met.nagoya-u.ac.jp/KOBAYASHI/index.html
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