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新首都圏ネットワーク


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Academia e-Network Letter No 40 (2003.12.13 Sat)
全文 http://letter.ac-net.org/03/12/13-40.php

━┫AcNet Letter 40 目次┣━━━━━━━━━ 2003.12.13 ━━━━

【1】ブログ紹介 :全国国公私立大学の事件簿
http://university.main.jp/blog/

【2】ブログ紹介:田中浩朗氏「15分間大学改革研究」
http://voice.kir.jp/kaikaku

【3】「意見広告の会」ニュース
#(東京に事務局があり、重要な一次情報がしばしば配信されます。
配信申込先:意見広告の会 qahoujin@magellan.c.u-tokyo.ac.jp )

【4】石井郁子衆議院議員質問趣意書(11/26)と政府回答(12/9)全文
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a158010.htm
http://www.jcp.or.jp/tokusyu/daigaku/20031210_syuisyo.htmll
http://www.shutoken-net.jp/web031211_4shinagawa.html

【5】国立大学法人法の凍結を求める東京大学職員組合声明
2003年12月10日   
http://www.shutoken-net.jp/web031211_5toshoku.html

【6】国立大学協会臨時総会12/11の議論について(速報)
2003年12月12日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局
http://www.shutoken-net.jp/web031211_10jimukyoku.html

【7】『科学新聞』2003年12月12日付
 国立大学法人に借財1兆数千億
 文科省 財投借入金、分配へ 法人制度設計に盛り込む
http://www.shutoken-net.jp/web031212_6kagaku.html

【8】『東京新聞』2003年12月12日付
4教員 相次ぎ辞任 都立大・法科大学院
http://www.shutoken-net.jp/web031212_7tokyo.html

【9】 鹿児島国際大学三教授解雇事件裁判における意見書
2003年7月11日 下山房雄氏(下関市立大学学長)
http://www.shimonoseki-cu.ac.jp/%7Eshimoyama/ikensho.html
  http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Esaiban/archives1-2.html

【10】伊豆利彦氏 日々通信 いまを生きる 第83号 2003年12月12日
http://homepage2.nifty.com/tizu/tusin/tu@83.htm
配信申込:fwie8781@mb.infoweb.ne.jp
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━ AcNet Letter 40 【1】━━━━━━━━━━ 2003.12.13 ━━━

ブログ紹介 :全国国公私立大学の事件簿
http://university.main.jp/blog/
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鹿児島国際大学三教授を支援する全国連絡会が運営するMovable
Type(*1) によるブログ(*2)。(会の連絡先:hosokawa@biz.ryukoku.ac.jp)
(*1) フリーなブログツール: http://www.movabletype.org/
(*2) cf:http://www.hotwired.co.jp/matrix/0305/index.html
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記事の分類カテゴリー:(括弧内は記事数)
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公立大学の事件情報 (16)
http://university.main.jp/blog/archives/cat_oeiacoeioeieeo.html
国立大学の事件情報 (18)
http://university.main.jp/blog/archives/cat_niacoeioeieeo.html
最近の労働判例 (2)
http://university.main.jp/blog/archives/cat_caiieeia.html
最近の労働法制 (2)
http://university.main.jp/blog/archives/cat_caiieeea.html
最近の労働問題 (4)
http://university.main.jp/blog/archives/cat_caiieiaeae.html
司法制度の動向 (6)
http://university.main.jp/blog/archives/cat_eeeaui.html
私大教連の運動 (1)
http://university.main.jp/blog/archives/cat_aeaciei.html
私立大学の事件情報 (23)
http://university.main.jp/blog/archives/cat_aeiacoeioeieeo.html
鹿国大の情報 (5)
http://university.main.jp/blog/archives/cat_nacieo.html
鹿国大解雇事件本訴裁判 (3)
http://university.main.jp/blog/archives/cat_nacouoeieeeueaeue.html
政府行政の動向 (4)
http://university.main.jp/blog/archives/cat_aeueoai.html
全国連絡会の情報 (4)
http://university.main.jp/blog/archives/cat_anieiinieo.html
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最近のエントリー
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■山形大教育学部存続問題−2003年12月12日
http://university.main.jp/blog/archives/000100.html
■富士大学解雇事件   「富士大教育裁判の真相を語る会」(11/29花巻市)を
開催−2003年12月12日
http://university.main.jp/blog/archives/000099.html
■富士大学解雇事件本訴裁判   大学側「答弁書」の求釈明事項に対して,原
告側が「準備書面1」(11月28日付)を盛岡地裁に提出−2003年12月12日
http://university.main.jp/blog/archives/000098.html
■国立大学学生納付金の引き上げ提案−2003年12月11日
http://university.main.jp/blog/archives/000097.html
■自由法曹団  「弁護士報酬の敗訴者負担制度」の論議のあり方に対する声明
−2003年12月11日
http://university.main.jp/blog/archives/000096.html
■北陸大学  第7回、第8回(12/2・3)団体交渉の結果−2003年12月10日
http://university.main.jp/blog/archives/000095.html
■北陸大学   トップは今こそ総退陣を!−2003年12月10日
http://university.main.jp/blog/archives/000094.html
■国立大学等への運営費交付金問題−2003年12月09日
http://university.main.jp/blog/archives/000093.html
■予算削減で国立大学協会が文科省に抗議−2003年12月09日
http://university.main.jp/blog/archives/000092.html
■昭和大医学部、学内の調査委、論文捏造を否定−2003年12月09日
http://university.main.jp/blog/archives/000091.html
■国立大交付金を年2%削減、他法人並みを財務省提示−2003年12月07日
http://university.main.jp/blog/archives/000089.html
■私立大学の改革と連帯−2003年12月07日
http://university.main.jp/blog/archives/000088.html
■横浜市立大学を考える市民の会 陳情書−2003年12月06日
http://university.main.jp/blog/archives/000087.html
■都立大学問題と石原都政ー「慎太郎流トップダウン」はなにをもたらすか−2003
年12月06日
http://university.main.jp/blog/archives/000086.html
■京都大学再任拒否事件 −2003年12月06日
http://university.main.jp/blog/archives/000085.html
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月別アーカイブ
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2003年12月 http://university.main.jp/blog/archives/2003_12.html
2003年11月 http://university.main.jp/blog/archives/2003_11.html
2003年10月 http://university.main.jp/blog/archives/2003_10.html
2003年09月 http://university.main.jp/blog/archives/2003_09.html
2003年08月 http://university.main.jp/blog/archives/2003_08.html

━ AcNet Letter 40 【2】━━━━━━━━━━ 2003.12.13 ━━━

ブログ紹介:田中浩朗氏「15分間大学改革研究」
http://voice.kir.jp/kaikaku

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Movable Type による、田中浩朗氏(福岡教育大学)のブログ。
講義でブログを使用する試みも紹介されている。種々の具体的アイ
ディアの提案や紹介(講義のテープ起しをネット公開している京都
精華大学の例)があり、今後の発展が期待される独創的ブログ。

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記事の分類カテゴリー
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FD, GPA,このサイトについて,ウェブサイト,カリキュラ
ム,シラバス,ネットワーク利用,中期目標・中期計画,他
大学,入試,図書館,大学の使命, 大学の履歴,大学教育,
大学評価,学生参加,学生指導,学長のリーダーシップ,広
報,情報管理, 成績評価,授業,授業公開,授業方法,授業
評価,教員評価,教員養成, 教育現場, 教養教育,文献,文
部科学省,本学の履歴,独立行政法人化,理想の大学, 研
究評価,社会貢献,第2回中間報告について,管理運営,言
論の自由
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最近のエントリー
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大学改革関係の本
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000228.html
真のエリート教育の必要
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000221.html
キャリア開発
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000218.html
情報共有のための電子メールの活用
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000217.html
国立大学の中期目標・中期計画(素案)出揃う
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000215.html
学生参加のFD
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000207.html
本学の履歴を探る
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000206.html
教職員の資質向上、キャリア開発
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000205.html
一元的評価の危険性
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000198.html
Blog of the Yeah! 2003
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000195.html
学習意欲を高める授業
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000192.html
MTによる授業ホームページの作成
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000183.html
学内意見交換のためのネットワーク利用
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000181.html
本学に必要な新ポスト:生活科担当専任教官
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000178.html
本学に必要な新組織:教育学習支援センター
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000177.html
本学に必要な新組織:事業部
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000175.html
学内のサーバから自分の大学を批判するのはいけないことか
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000174.html
私立大学業界から学ぶ
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000173.html
北大の教養教育
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/000172.html
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月別ログ
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2003年11月
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/2003_11.html
2003年10月
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/2003_10.html
2003年09月
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/2003_09.html
2003年08月
http://voice.kir.jp/kaikaku/archives/2003_08.html 


━ AcNet Letter 40 【3】━━━━━━━━━━ 2003.12.13 ━━━

「意見広告の会」ニュース No 69,70,71
#(首都圏に事務局があり、重要な一次情報がしばしば配信されます。
配信申込先:意見広告の会 qahoujin@magellan.c.u-tokyo.ac.jp )

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No 71 (2003.12.13 )
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000351.html
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1 4教員辞任 東京新聞12/12
2 「読売」解説12/12
3 都議会文教委員会速報
4 都民の会シンポジウム
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No 70 (2003.12.12 )
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000349.html
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1 都立大学関連ーー都議会報告
 1−1 都知事定例会見(12月5日)
 1−2 都の新大学構想に注文 (東京新聞)
 1−3 12/9 都議会本会議 民主党代表質問

2 国立大学法人の財政的危機ーー東大声明、東職声明
 2−1 東大部局長声明
 2−2 東職声明:国立大学法人法の凍結を求める
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ニュース No 69 (2003.12.11)
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国立大学法人の財政的危機 05年度以下の試算の紹介

━ AcNet Letter 40 【9】━━━━━━━━━━ 2003.12.13 ━━━

鹿児島国際大学三教授解雇事件裁判における意見書2003年7月11日
  下山房雄氏(下関市立大学学長)
  http://www.shimonoseki-cu.ac.jp/%7Eshimoyama/ikensho.html
 (http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Esaiban/archives1-2.html
   よりリンク)
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「はじめに

 2002年春に為された鹿児島国際大学三教授解雇事件の中核部分は、
同大学経済学部教授会が仲村政文氏を「人事管理論および労使関係
論」の担当教員として採用することを決定した営為が、懲戒解雇に
値する非行を含むものであるのかどうかという点にある。この点に
つきまず、戦後日本において、大学教員の適格性をかなり日常的に
判定する機会をもつてきた国公立のすべての大学および相当数の私
立大学の教授会と、文部省「大学設置・学校法人審議会」傘下の
「審査会」(以下「設置審査会」と表現する)という二つの場にお
ける手続きと結果についての特徴的状況を、私の40年近い教員経験
を踏まえ提示する(1節)。ついで、その状況にみられる大学教員
の適格性をめぐる判断の分岐あるいは多義性の根拠につき論ずる
(2節)。以上の論述を踏まえた結論として最後に、本件・仲村政
文氏の大学教員適格性について鹿児島経済大学経済学部教授会のとっ
た判断が適正なものであることを述べる(3節)。以上が本意見書
の内容構成である。・・・・・・」


━ AcNet Letter 40 【10】━━━━━━━━━━ 2003.12.13 ━━━
From: "IzuToshihiko" <fwie8781@mb.infoweb.ne.jp>
Date: Fri, 12 Dec 2003 11:17:45 +0900
伊豆利彦氏 日々通信 いまを生きる 第83号 2003年12月12日
http://homepage2.nifty.com/tizu/tusin/tu@83.htm
配信申込:fwie8781@mb.infoweb.ne.jp
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 62年前の12月8日、その朝、私は軍事教練の服装をして、赤羽に
近い荒川の河川敷にいた。私は中学3年だったから、銃は持ってい
なかったかも知れない。寒い朝だった。
 その頃は年に一度、軍の査閲というものがあって、それは軍事教
練にとって大変大事な行事だった。その予行演習のために全学生が
集合していたのだ。

 日本が西太平洋上で米英と交戦状態にはいったと聞いたのは、そ
の全員集合の隊列のなかでのことだった。
 朝のニュースを聞かずに家を出たものが多く、その情報は口から
口へとささやくように伝えられて行った。

 西太平洋とはどこなのか、交戦状態に入ったというのはどういう
ことかと、私たちは低い声で話し合った。それがあんな大きな戦争
だとは誰も知らなかった。
 日中戦争がはじまった時のことを思い出し、あるいは偶発的な小
競り合いかも知れないと、私は言った。

 先生たちも落ちつかなかったのだろう。その日は野外教練は中止
され、私たちは、三々五々、帰宅の途についた。
 帰り道で、少しずつ様子がわかった。歩きながら、店先から聞こ
えてくるラジオを聞いたのだ。
 家に帰ったころ、宣戦の詔勅が放送された。
 重々しい、威圧するような声だったと思う。
 アナウンサーも興奮していたが、町の様子は日頃と変わらなかっ
たと思う。
 勅語のあとで、「君が代」と「海行かば」が歌われたのではなかっ
たかと思うが、このことについての記憶はたしかでない。

 伊藤整の「太平洋戦争日記」は、午後になるとラジオが日米の戦
争、ハワイの軍港へ決死的大空襲をしたこと、タイに進駐した事等
を報じ、「敵は幾万ありとても」などが放送されていたと記してい
る。
 私が中止された教練からの帰り道で聞いたのは、こんなニュース
であったろう。
 伊藤はまわりの様子があまりいつもとかわらないので変な気がし
たと書いている。
 私にはなにか魂の抜けた非現実的な世界を歩くような気がしてい
た記憶がある。

 夜の9時のニュースで、ハワイ空襲の大戦果が伝えられた。「戦
カン二沈没、四隻大破、大形巡四隻大破、航空母一隻沈の由。立派
なり。日本のやり方日露戦と同様にてすばらしい」と伊藤の日記は
記している。

 相次ぐ戦果の発表で異常な興奮がひき起こされたが、なにか現実
感に乏しいふわふわした感じだった。
 電燈は暗くしたが、すべては昨日までと変わらない。それなのに
アナウンサーは興奮して、大戦果を伝えている。
 戦争を生きるとは、このような奇妙な落差を生きることなのだろ
う。

 いまこの時何がおこっているかを私たちは知らなかった。
 いまこの時がどこへつづくのかも知らなかった。
 野村大使が派遣されて、ハル国務長官と交渉しているということ
は、中学3年の私でも新聞紙上で知っていて、なんとか打開の道が
開かれるのだろうと思っていた。
 だから、日米開戦のニュースに驚き、それを理解することができ
なかったのだ。
 しかし、野村ハル会談が行われているあいだに、日本の連合艦隊
はハワイ進攻のために太平洋を東進していたのであり、フィリッピ
ンその他各戦線では奇襲攻撃の準備が進められていたのであった。

 それぞれの場所で、国民の一人一人は自分の知っていることだけ
を知って、全体の展望を持たずに生きている。
 新聞はその全体の展望を得るための唯一の情報源だった。
 もちろん当時はテレヴィはなかった。インターネットもなかった。
 ラジオは、次々と大本営発表のニュースを流し、国民を煽動した
が、国民に戦争の現実についての認識をあたえるためのものではな
かった。
 しかし、新聞も検閲や時代におもねる編集方針のために、ひたす
ら戦争を美化し、正当化し、国民を戦争に駆り立てる道具になって、
現実の真相に迫るための情報を提供するものではなかった。
 しかし、私たちはあたえられた情報を通してしか現実を知ること
はできない。
 伊藤整が「得能五郎の生活と意見」新聞読みに熱中する得能五郎
の姿を描き出したのは、当時の知識人の一般的な姿をあらわしたの
であったろう。

 たしかに、新聞なしには現実を知ることができない。
 しかし、いくら新聞を読んでも、真実はわからない。むしろ、新
聞を熱心に読めば読むほど、間違った認識に導かれるということが
あるのではないか。

 それは、昔のことだというのだろうか。いまは大丈夫だというの
であろうか。
 いまは、テレヴィという文明の利器があって、朝から晩まで情報
を流している。深夜の2時3時から夜明けまで、つまり24時間、それ
も衛星放送で海外のニュースがそのまま流される。
しかし、テレヴィを見ているから世界がわかるとは言えない。
 まして、意図的に国民を煽動することを目指す情報が、連続的に、
多重的に、くりかえしくりかえし流されている。これが、国民の意
識を操作する役割を担っているのだからおそろしい。

 いまではインターネットというものがあって、ここではもうほと
んど無数といっていい程の情報が日夜流れている。
 それを一生懸命に追いかけていれば、ほとんど何も手につかなく
なるほどで、あまりに多い、多様な情報に訳がわからなくなってし
まうほどだ。
 しかも、私たちには一番大事な情報はあたえられていないように
思われる。
 あの9・11を私たちは予知することが出来なかった。
 それからの展開も私たちの予測を越えている。そして、これから
どうなるかということになれば、分かっているようではあっても、
やはり、わからない。
 こうして私たちは歴史の大波に押し流されていくのであろうか。

 12月8日のことを考えるとき、12月9日に金子健太、宮本百合子、
守屋典郎ら396人が一斉に検挙されたことを忘れることはできない。
12月中には約1000人が検挙されたという。歌人の渡辺順三も、この
時検挙され、すぐれた獄中吟を残した。

 戦争をはじめる前には、戦争に反対する思想や運動に対する弾圧
が行われるが、いよいよ戦争がはじまると、いっそうそれがきびし
くなり、現になにかをやったというのではなく、なにかをやる危険
がある、可能性があるということで拘留されたのである。治安維持
法の予防拘禁といわれるものである。

 日本ではある思想をもっているというだけで治安維持法によって
犯罪になった。思想犯という言葉は私たちが子供のときからよく聞
いた言葉で、私の両親などはそれをもっとも恐れていた。日本の文
学が思想性や社会性を失い、身辺雑記に傾いたのはこのためだとい
う面もあるだろう。

 左翼思想が弾圧されてからは、世の中に氾濫する思想というもの
は、右翼的な、あるいは戦争肯定的な思想ばかりであった。考えて
みれば、1920年代の後半、昭和とよばれる時代の初年代は左翼思想
の花盛りだったのだが、1931年の満州事変に突入したころから、左
翼の言論に対する弾圧が強まった。

 前号でふれたように小林多喜二が殺され、滝川事件を契機とする
大弾圧で言論思想界は一変する。プロレタリア作家同盟をはじめと
する文化団体が次々に解体され、大学もまた国家主義適言論が支配
して、左翼的、民主的、自由主義的教授たちは次々に大学を追われ
た。

 左翼から右翼へ転向した知識人も多かった。青白きインテリとい
う言葉が流行し、インテリの弱さが嘲笑され、行動力が讃美された。
共産主義とか社会主義、自由主義などは観念的な西洋の思想である
として排撃され、民族への回帰が時代の趨勢になった。その背後に
はドイツにおけるナチスの勝利というものがあったと思う。

 ドイツは、世界恐慌で日本を含む世界経済が、失業者が続出し、
破滅の底に転落していったとき、驚くべき活力で復活をとげ、異常
な発展を遂げたのだ。
 西洋を非難する人々がヒトラーには心酔した。1936年のベルリン
オリンピックは、民族の祭典、美の祭典として、日本人の心をも強
くとらえた。

 思想を排撃し、西洋を非難する人々がナチスの思想に拝跪したの
は不思議なことだ。なるほどそれは知識人を排撃し、肉体と行動を
讃美した。懐疑を嘲笑し信仰と服従を強調した。しかし、彼等の讃
美する民族は西洋の民族ではなかったか。黄色人種の日本人に対す
る嫌悪と侮蔑を、彼らは隠そうともしなかったのではないか。

 しかし、ナチスは西欧を席捲した。美と文化の国フランスは、こ
のドイツに敗れ、英国もその空襲の恐怖におののいていた。
 日本はこのナチスの勝利に鼓舞されたのだ。ドイツの勝利に便乗
して、<仏印>、ヴェトナム、カンボジアに平和進駐し、フランス
の権益を奪い取った。

 いま、日本のイラク出兵に際し、日本の歴史がさまざまに思われ
る。
 国際強調とか、イラクの復興とか、平和とか民主主義とか、憲法
の前文までも引用し、コイズミ代官は美辞麗句を並べ立てる。
 あの戦争のときも、開戦の勅語をはじめ新聞に大活字で伝えられ
る東条その他の軍人たち、また、国粋的思想家たちの言葉は、東洋
永遠の平和とか、アジアの復興、共存共栄などという美辞麗句に飾
りたてられていた。

 思想とは美辞麗句のことであろうか。内容のない美辞麗句の氾濫
は無意味であるだけでなく、危険である。
 コイズミ代官の構造改革はいったい何であったのか。
 そうして、私はいま私が取り組んでいる横浜市大改革について思
うのである。
 それもまた、<市大よ生まれ変われ>をスローガンに<魅力ある
大学>をつくれとか美辞麗句に飾られているが、それはまったく無
内容な空中楼閣に過ぎない。なんのための改革か。言葉はあるが内
容はない。改革というものはどんな改革でも未来の夢を触発する要
素をはらんでいるものだが、この改革にはそれがない。これはなぜ
なのだろう。

 私は市大改革について書くつもりだったが、例によってあてのな
い脱線の連続で、本論にはいることが出来なかった。
 来週、私たちは記者会見をおこなう予定になっていて、その準備
で心が落ちつかず、この通信も遅れてしまった。

 もう一つ、11月30日に多喜二ライブラリー主催のシンポジウムが
行われ、私も、私なりに納得のいく報告をおこなうことができたこ
とをお伝えしておきたい。

この報告の草稿と大学問題については、いずれも、ホームページに
おさめておいた。関心のある方はご一読ください。

 いよいよ、12月も半ばになろうとしている。
 皆さん、風邪をひかぬよう、この一年の最後の日々をお元気にお
過ごしください。 

伊豆利彦のホームページ http://homepage2.nifty.com/tizu/

ところで、故障でインターネットに接続できないため、この通信の
発送はいつになるかわからない。

半身不随に陥った気分である。

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編集発行人:辻下 徹 admin@letter.ac-net.org
ログ:http://letter.ac-net.org/index.php
趣旨:http://letter.ac-net.org/intro.php
#( )の中は編集人コメント、「・・・・・」は編集時省略部分
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