トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク


国立大学法人法の凍結を求める
---法人化の前提が崩れた以上、学長諸氏は責任ある徹底した対応を

2003年12月10日   東京大学職員組合


1.東大の佐々木総長らは8日、国立大学の法人化に際して国からの予算が削減
される可能性が出ている問題で、国立大学協会理事会として文部科学大臣に対し
て、「(学長としての)業務の遂行に責任を負いかねる、(学長)指名の返上を
も念頭に置きつつ、重大な決意を持ってこの文書を提出する」とした要望書を提
出し、方針の見直しを求めた。(共同通信配信記事12月8日、など)私たちは、国
立大学法人法が国会で審議中に、またその以前から、今回の法人化は行財政改革
の一環として推進されてきたのであり、いずれこうした事態に直面することを、
再三警告してきた。今回の事態は、その懸念が法人化を前にして早くも表面化し
たものと言えよう。

2.文科省が示した平成17年度以降の運営費交付金の算定ルールとは、(1)人件
費・物件費の区分廃止(教職員人件費の保証を放棄)、(2)運営費交付金におけ
る収支差補填機能の放棄、(3)大学附属病院に対する独立採算性の導入、(4)
附属病院に係る長期借入金償還金の交付金による財源保証の放棄、などである。
つまり、国会審議などで文科省が繰り返し明言していたことにも、また衆参両院で
の附帯決議にも明確に反する算定ルールが検討されているのである。これは、法人
化の「前提」とされてきた条件が崩れたことを意味し、この間、文科省と共同歩調
をとってきた国大協理事会でさえ反発するのも当然である。

3.削減される運営費交付金のしわ寄せは、雇用の不安定な非常勤職員の首切りに
つながり、法人化後の労働時間の延長をはじめとする労働条件の不利益変更にも直
結する。これは明白な労働基準法(第1条2項)違反であり、職員組合として断固反
対である。さらに、こうした状況のままでは、組合や組合の推薦する過半数代表者
が労使協定を締結することさえ、労働条件の向上や労働者の健康維持を目的とする
組合として留保せざるを得ない。
また、マスコミでも、「「効率化係数は」は授業料の値上げに飛び火することにな
らないか。」といった懸念が表明されている。
(朝日新聞12月9日、ポリティカにっぽん)

4.私たちは、国立大学法人法案の国会審議において、大学教職員のみならず、学
生や院生、市民の方々など広範な人々と共に、法人法案の阻止に向けて全力で闘っ
た。一方、参議院文教科学委員会に参考人として出席した佐々木総長が、法人法案
を基本的に支持する意見陳述を行ったことは、私たちにはいまだ記憶に新しく、改
めて怒りを禁じ得ない。
しかし、運営費交付金が削減されようとしている現状において、上記のように、学
長職をかけて毅然とした対応を文科大臣に行ったことを、私たちは当然のこととし
つつも歓迎したい。

5.私たちは、法人化の前提条件が崩れた以上、国立学校設置法の廃止を中止して
国立大学法人法をいったん凍結し、国会の附帯決議にもあるような安定的な財政措
置を保証するよう、運営費交付金の算定ルールを含めた抜本的な再検討が行われる
べきだと考える。
佐々木総長をはじめ各国立大学の学長におかれては、高等教育と学問研究の健全な
発展・充実をはかる立場から、文科省や政府に対し、法人法の凍結にまで踏み込ん
だ要請・抗議を行い、学長としての責任をまっとうすることを求めたい。
また、私たちは、学長諸氏と共同で行動する用意があることを表明し、事態の打開
に向けて共にたたかうことを呼びかけるものである。