トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク


『四国新聞』一日一言 2003年12月3日付


 元はと言えば行政改革の人減らしから始まった話だった。それを逃れようと
考え出したのが「国立大学法人」と言われているが、結局は人減らしに行き着
きそうな気配になってきた。

 来年度からのスタートを目前に国立大学法人の足元が揺れている。原因は
二〇〇五年度以降の「運営費交付金」の扱いをめぐる議論だ。国立大は自己収
入が半分以下、残りは国の一般会計からの繰入金でまかなわれてきた。

 これまでは額の増減に制度や法律変更が必要な「義務的経費」扱いだったが、
法人化によって「運営交付金」となるのを機に、財務省は増減しやすい「裁量
的経費」に変更するよう文部科学省に求めたのが騒ぎの発端だ。

 裁量的経費は来年度概算要求では2%減。文科省は来年度は対象にならない
としているが、このままでは〇五年以降の予算圧縮はほとんど確定。現在の義
務的経費の九割以上は人件費だから、確定すれば賃下げかリストラか研究費削
減しかない。

 硬直的な経費を弾力的に扱えるようにしようというねらいではあるが、国立
大にとっては屋台骨さえ揺るがす大問題だろう。国大協会長の佐々木毅東大学
長も「ほかの独立行政法人と同じ扱いで交付金が削減されてはならない」と反
発している。

 「大学は自主性、自発性が尊重されるべきだ」と大学法人法を制定し、「法
人化前の公費投入額を十分確保する」と国会決議までしたが、このままでは元
のもくあみ。反対を押し切って法人化をリードした学長たちは「話が違う」と
怒っている。

 何だか「朝三暮四」のような話だが、日本の未来と人々のために、開かれた
大学とする議論であってほしい。