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http://www.s.u-tokyo.ac.jp/info/running-expense/request1.html

国立大学等への運営費交付金についての要望書

衆議院文部科学委員及び参議院文教科学委員各位

2003年11月16日


 基礎科学研究は、人類共通の文化創造の一つであると同時に将来の産業を支
える技術の礎となっています。そのため、このような研究の推進とともに、そ
れを担う次世代研究者の育成は、国の将来を決すると言っても過言ではありま
せん。しかし、それらは必ずしも直ちに経済的価値に結びつくものではありま
せん。そのため、世界的に競争力のある基礎科学研究の推進とそれを担う人材
の育成には、長期的視野からの安定した公的財政支出がきわめて重要な役割を
果たしています。現在、基礎科学研究と次世代研究者の育成は国立大学を中心
として推進されていますが、平成16年4月から、すべての国立大学は法人へ
と転換されます。法人化後、国立大学は「個性豊かな大学へと変貌し、国際競
争力のある教育研究の展開」を行うことが期待されていますが、基礎科学の教
育研究においてもそのような競争力のある展開を行うためには、従来以上の公
的財政支出が必要であり、しかも、新たな研究分野の創出にあたっては、新規
の財政措置も機動的に行われる必要があります。

 独立行政法人法とは別の法律として提案された国立大学法人法は、国会での
審議にあたって衆参の文部科学委員会・文教科学委員会において、多くの附帯
決議がなされました。これは国立大学の教育研究の特性に十分配慮していただ
いた結果と拝察しております。とりわけ財務の観点からは、「法人化前の公費
投入額を十分に確保し、必要な運営費交付金等を措置するよう努めること」、
「法人化前の公費投入額を踏まえ、従来以上に各国立大学における教育研究が
確実に実施されるに必要な所要額を確保するよう努めること」との附帯決議が
なされています。これは、先行の独立行政法人と国立大学法人の果たすべき役
割の違いをご理解の上、委員各位が基礎科学の教育研究への十分な公的財政支
出の必要性に配慮していただいたおかげと推察しております。

 しかし先般、11月12日に開催された国立大学協会総会における国立大学
法人運営費交付金に係る議論によりますと、運営費交付金を裁量的経費と位置
づけ、先行の独立行政法人の場合と同じく、経費総額に対して毎年一定率の削
減を行うという方針が政府内部で検討されているとのことです。もしもこの方
針が採用されますと、法人化後の国立大学の財政基盤を大きく揺るがしかねず、
基礎科学研究はもとより、国の将来を担う人材育成の重要な部分である我が国
の高等教育は未曽有の危機に瀕することとなります。このことは、国立大学法
人法の趣旨にそぐわないばかりか、上に引用しました附帯決議の趣旨とも整合
していないと思われます。法人化後の国立大学等への公的財政支出につきまし
て、国立大学等の役割をご理解の上、附帯決議の趣旨に沿って公的財政支出が
確保され、基礎科学の研究と教育が今後ともいっそう発展できるよう是非とも
ご支援をお願い致します。

提出者リスト

北海道大学理学部長 岡田 尚武
弘前大学理工学部長 本瀬 香
東北大学理学部長 鈴木 厚人
山形大学理学部長 加藤 静吾
茨城大学理学部長 渡邉 堯
筑波大学数理物質科学研究科長 細見 彰
埼玉大学理学部長 中山 重蔵
千葉大学理学部長 小川 建吾
東京大学理学部長 岡村 定矩(世話人)
東京工業大学理学部長 中澤 清
お茶の水女子大学理学部長 室伏きみ子
新潟大学理学部長 増田 芳男
富山大学理学部長 平井 美朗
金沢大学理学部長 大村 明雄
信州大学理学部長 永井 寛之
静岡大学理学部長 石川 勝利
名古屋大学理学部長 大峯 巌
京都大学理学部長 笹尾 登
大阪大学理学部長 楠本 正一
神戸大学理学部長 武田 廣
奈良女子大学理学部長 野口 誠之
島根大学総合理工学部長 宅和 暁男
岡山大学理学部長 山本 啓司
広島大学理学部長 谷口 雅樹
山口大学理学部長 増山 博行
愛媛大学理学部長 柳澤 康信
高知大学理学部長 長沼 英久
九州大学理学部長 小田垣 孝
佐賀大学理工学部長 西河 貞捷
熊本大学理学部長 河野 實彦
鹿児島大学理学部長 井上 政義

北海道大学低温科学研究所長 本堂 武夫
東北大学電気通信研究所 中村 慶久
筑波大学計算物理学研究センター長 宇川 彰
千葉大学環境リモートセンシング研究センター長 高村民雄
東京大学医科学研究所長 山本 雅
東京大学地震研究所長 山下 輝夫(世話人)
東京大学東洋文化研究所長 田中 明彦
東京大学分子細胞生物学研究所長 宮島 篤
東京大学宇宙線研究所長 吉村 太彦
東京大学物性研究所長 上田 和夫
東京大学海洋研究所長 小池 勲夫
名古屋大学地球水循環研究センター長 中村 健治
名古屋大学太陽地球環境研究所 上出 洋介
京都大学化学研究所長 高野 幹夫
京都大学防災研究所長 井上 和也
京都大学基礎物理学研究所長 九後太一
京都大学原子炉実験所長 代谷 誠治
大阪大学核物理研究センター長 土岐 博