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Academia e-Network Letter No 26 (2003.11.17 Mon)
http://letter.ac-net.org/03/11/17-26.php

━ AcNet Letter 26 【1】━━━━━━━━━━ 2003.11.17 ━━━━━━

国立大学法人化に関する質問主意書への小泉首相答弁書全文 QA形式
質問:http://www.uranus.dti.ne.jp/~sakurai/q-03.htm#031007l
答弁書画像ファイル:http://ac-net.org/dgh/03/b14-shuisho-kaitou/

参考:第一次質問主意書と答弁書:
http://www.uranus.dti.ne.jp/~sakurai/q-03.htm#030725
QA 形式:http://ac-net.org/kd/03/903.html

───────────────────────────────
質問第8号

 国立大学法人化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

平成十五年十月七日
櫻 井 充

参議院議長 倉 田 寛 之 殿

───────────────────────────────
目次

一 国立大学の通常の教育研究活動について

二 準用される独立行政法人通則法第三十四条について

三 国立大学法人の評価について

四 国立大学における労働問題について

五 本年九月二日付け国立大学法人化に関する質問に対する答弁書について

六 東京都立四大学の統廃合について

───────────────────────────────
#(縦棒から始まる行が答弁書部分)

 国会での審議の時間が十分に取られなかったことや、前回の質問
主意書の答弁が不十分であるために、なお国立大学法人法の条文の
意図が不明なものや、条文間の整合性に問題がある場合が見受けら
れるので、質問を通し、明らかにしていきたい。以下質問する。

 | 内閣参質一五七第八号
 |  平成十五年十一月十四日
 | 
 |                 内閣総理大臣 小 泉 純一郎
 | 
 | 参議院議長 倉 田 寛 之 殿
 | 
 | 参議院議員櫻井充君提出
 |  国立大学法人化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


一  国立大学の通常の教育研究活動について

1  現在の国立大学で行われている通常の教育研究活動は、国立
大学法人の業務を規定する国立大学法人法第二十二条にある七項目
のいずれにも該当しない。通常の教育研究活動は、国立大学の業務
であって、国立大学法人の業務ではないと考えてよいか。

2  もし、国立大学で行われている通常の教育研究活動が、国立
大学の業務であって国立大学法人の業務でないならば、中期目標と
中期計画に通常の教育研究活動に係る内容は含まれないはずである。
しかし、本年七月下旬に各国立大学に対し、中期目標・中期計画に
記載すべき内容として文部科学省が指示したものは、国会審議で問
題となった昨年十二月の指示と実質的には同じものであり、国立大
学における通常の教育研究活動全体に係る詳細な内容が含まれてい
る。これでは、文部科学省は国立大学法人を介さずに直接国立大学
の業務を指示することにならないのか。また、国立大学と国立大学
法人とを別にすることにより国立大学が政府から直接管理されるこ
とを防止できる、という制度設計の意義が失なわれるのではないか。

3  もし、国立大学で行われているすべての教育研究活動が国立
大学法人の業務であるとすれば、国立大学と国立大学法人とを区別
したことには、国立大学に対する国の財政的負担が免除されたこと
以外にどのような意義があるのか。

 | 一について
 | 
 |  現在の各国立大学において行われている教育研究活動は、国立大
 | 学法人の成立後は、各国立大学法人の設置する国立大学において行
 | われることとなるが、各国立大学で行われる教育研究活動の業務主
 | 体は、国立大学法人の成立前はその設置者である国であり、国立大
 | 学法人の成立後においては、その設置者である国立大学法人となる。
 | このような趣旨で、国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)
 | 第二十二条第一項第一号において「国立大学を設置し、これを運営
 | すること」を国立大学法人の業務として規定しており、国立大学に
 | おいて行われる教育研究活動は、当該国立大学を設置する国立大学
 | 法人の業務に含まれることとなる。
 | 
 |  なお、同法において、国立大学法人が国立大学を設置することと
 | しているのは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)におい
 | て、大学その他の学校は、それ自体として法人格を有するものでは
 | なく、所定の設置者のみがこれを設置し、その管理を行うこととさ
 | れていることから、国立大学法人が大学を設置するという形態を採っ
 | たものである。これにより、国立大学を国家行政組織から独立させ、
 | その自主性・自律性を一層高め、自らの経営方針に基づき個性豊か
 | な大学づくりが進められることが期待されるものである。



二  準用される独立行政法人通則法第三十四条について

参議院文教科学委員会(本年七月八日)の審議において総務省の田
村政志政府参考人は、「勧告の対象となります国立大学法人の主要
な事務及び事業とは、・・・一般的には、中期目標、中期計画に記
載される主要な事務事業程度のものを想定しておりまして、これに
は大学本体や学部等の具体的な組織そのものは含まれないと考えて
おります。」、「総務省の評価委員会が勧告を行うに当たっては、
法案第三条の規定の趣旨を踏まえ、必要な資料等の提出等の依頼は
直接大学に対して行うのではなく、文部科学大臣に対して行うこと
とすることを検討中でございます。」と述べている。

 しかし、国立大学法人法の成立した翌日の七月十日付けの科学新
聞に、「・・・総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会は、各
府省が必要だと主張しても独自の判断基準で不必要とした場合には、
主務大臣に廃止勧告をする方向で検討していることが明らかになっ
た。個別事業の改廃のみならず、法人そのものについても廃止勧告
する。・・・法制度論上、来年四月に発足する国立大学法人も対象
となるため、業務の効率性のみで教育や研究を評価し、大学が廃止
される可能性もある。・・・ 同委員会は、各府省の独立行政法人
評価委員会による第一次的な判断を前提に二次的判断をするのでは
なく、各法人の年度評価と中期目標期間終了時の評価を独自に行い、
自ら直接判断する。また、勧告を行う際は、局所的な改廃を求める
のではなく、法人の主要な事務・事業を把握し、その具体的改廃措
置の検討を集中的・重点的に行い、法人ごと改廃を求める。中期目
標期間の終了時、通常であれば五年目に勧告を行い、二年以内には
勧告の内容を具体化するよう求める。・・・現在の法律では、来年
四月に発足する国立大学法人も同委員会の評価対象となる。同委員
会の視点で評価した場合、二十年後には国立大学法人自体が存在し
得なくなる可能性もある。・・・」との記事がある。

 この記事が事実であるならば、国立大学の設置のもととなる国立
大学法人が同委員会の主観のみでその存否が決まってしまい、学問
の自由が脅かされかねない。右国会答弁からすれば、総務省の政策
評価・独立行政法人評価委員会による独立行政法人評価の見直しは、
国立大学法人は適用外とすべきではないか。

 | 二について
 | 
 |  政策評価・独立行政法人評価委員会は、国立大学法人法第三十五
 | 条において準用する独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)
 | 第三十二条第五項、第三十四条第三項および第三十五条第三項にお
 | いて、国立大学法人評価委員会の行った評価の結果について、必要
 | があると認めるときに国立大学法人評価委員会に対して意見を述べ
 | ること、並びに中期目標の期間終了時において、主要な事務および
 | 事業の改廃に関し、文部科学大臣に勧告することが出来るとされて
 | いる。
 | 
 |  このように、政策評価・独立行政法人評価委員会は、国立大学又
 | はその改廃自体に関して勧告を行う権限を有するものではない。


三  国立大学法人の評価について

国立大学法人法が成立して以降、国立大学評価を自ら行う政府機関
が二つ増えた。

1  本年八月一日に閣議決定された「中期目標期間終了時におけ
る独立行政法人の組織・業務全般の見直しについて」においては
「主務大臣は、予算編成の過程において、審議会(総務省政策評価・
独立行政法人評価委員会)による勧告の方向性等の指摘の趣旨が最
大限いかされるように見直し内容を検討し、概算要求を行った見直
し案に対して所要の修正を加えた上、予算概算決定の時までに、行
政改革推進本部に説明し、その議を経た上で決定するものとする。
その際、行政改革推進本部は審議会の意見を聴かなければならな
い。」とあり、今まで、独立行政法人の改廃等について主務省と総
務省だけで最終的判断を下していたものに、行政改革推進本部が最
終的判断に直接関与できる形に変更することを政府は決定したが、
この「見直しについて」では国立大学法人もその対象になるのか。

 | 三の1について
 | 
 |  ご指摘の「中期目標期間終了時における独立行政法人の組織・業
 | 務全般の見直しについて」(平成十五年八月閣議決定)の対象とな
 | るのは、独立行政法人通則法に規定する独立行政法人であって、国
 | 立大学法人には直ちには適用されない。
 | 
 |  なお、国立大学法人については、同法第三十五条が準用されてお
 | り、中期目標期間終了時に組織及び業務全般の検討が行われること
 | とされているが、その具体的な方法については、当該閣議決定の趣
 | 旨をふまえつつ、国立大学の教育研究の特性に十分に配慮するとの
 | 国立大学法人法の国会審議における附帯決議等にのっとり、今後検
 | 討する予定である。


2  また、本年八月十八日付けの日本経済新聞では、「国の総合
科学技術会議(議長・小泉純一郎首相)は、来年四月に法人化する
国立大学の運営方法について、科学技術振興の観点から独自評価を
開始する。若手研究者の活用や任期制導入など研究開発の進め方な
どを評価し、公表する。国の研究費の三分の一が国立大に流れてお
り、科学技術政策を企画立案する立場からチェックする。国立大の
評価は、総合科技会議の評価専門調査会を中心に実施する見通し。
詳細は今後詰める。全大学を一律の尺度に照らして評価するのでは
なく、『ユニークな手法を取り入れる大学をプラス評価していきた
い』(総合科学技術会議の有識者議員)という意見が出ており、人
材の流動化につながる任期制導入や産学連携などが評価項目になり
そうだ。」とあるが、この内容は事実か。

 | 三の2について
 | 
 |  総合科学技術会議は、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)
 | 第二十六条第一項の規定に基づき、科学技術に関する大規模な研究
 | 開発その他の国家的に重要な研究開発についての評価を行うほか、
 | 独立行政法人や国立大学法人の自律・自発的運営と特性に配慮しつ
 | つその主要な科学技術関係業務の優先度等について検討を行うもの
 | であり、国立大学法人自体の評価を行うものではない。



3  以上の二つの新しい評価機関を加えると、国立大学法人を評
価する公的・準公的機関数が左記の六つとなる。

(1) 独立行政法人大学評価・学位授与機構

(2) 国立大学法人評価委員会(文部科学省)

(3) 政策評価・独立行政法人評価委員会(総務省)

(4) 行政改革推進本部

(5) 総合科学技術会議(内閣府)

(6) 経済産業省(三菱総研と河合塾に委託)

このように多数の政府機関が、資源配分に直結する国立大学評価を
行うことは、国立大学を評価で疲労困させるだけでなく、国立大学
における教育研究活動の自律性を著しく損ない、国立大学は短期間
に活性を失う懸念がある。特殊な科学技術政策の実現は競争的資金
を通してのみ行うべきであり、政府内部で複数の省庁が国立大学を
直接評価することは極力抑制し、総合的な評価のみに限定し、国立
大学の偏らない健全な発展を期すべきと思うがいかがか。

 | 三の3について
 | 
 |  独立行政法人大学評価・学位授与機構が行う国立大学の教育研究
 | の状況に関する評価は、国立大学法人法第三十五条において準用す
 | る独立行政法人通則法第三十四条第二項に基づいて、国立大学法人
 | 評価委員会が行う国立大学法人評価の一環として同委員会からの要
 | 請により行われるものである。同委員会はこの評価の結果を尊重す
 | ることとされており、両者が同じ評価項目に関して重ねて国立大学
 | 法人に資料等を要求するなどの負担をかけることのないように措置
 | をしているところである。
 | 
 |  また、政策評価・独立行政法人評価委員会は、政府全体の立場か
 | ら、国立大学法人法第三十五条において準用する独立行政法人通則
 | 法第三十二条第五項、第三十四条第三項及び第三十五条第三項にお
 | いて国立大学法人評価委員会の行った評価の結果について、必要が
 | あると認めるときに国立大学法人評価委員会に対して意見を述べる
 | ことと、並びに中期目標の期間の終了時において、主要な事務及び
 | 事業の改廃に関し、文部科学大臣に勧告することができることとさ
 | れており、国立大学法人の評価を直接行うものではない。
 | 
 |  なお、行政改革推進本部の関与は、三の1についてで述べたとお
 | り、国立大学法人には直ちには適用されるものではなく、また、総
 | 合科学技術会議は三の2についてで述べたとおり、科学技術に関す
 | る大規模な研究開発その他の国家的に重要な研究開発について評価
 | 等を行うものであり、さらに、経済産業省から委託された民間団体
 | は、産業界の視点から大学を評価する手法を開発しているところで
 | あるが、これらの評価や評価手法の開発はそれぞれ個別の観点から
 | 行われるものであり、国立大学法人の業務の全体を評価するもので
 | はないので、御指摘のように国立大学法人を評価で疲労困憊させる
 | ようなことにはならないと考えている。



4  国立大学法人評価委員会は、国立大学からだけでなく、政府
からも十分独立しているという意味での「第三者性」を持つことが、
法人化後の国立大学が健全に発展するために不可欠と思われる。し
かし、内定した文部科学省の国立大学法人評価委員会令では、委員
の選任方法についての規定がなく、審議会委員の任命と同様に、事
務局の裁量に委ねられており、この委員会の文部科学省からの独立
性は低く、「第三者性」が乏しい。これは、政府からの独立度を増
すという国立大学法人法の趣旨と相いれないのではないか。

 | 三の4について
 | 
 |  国立大学法人は、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と
 | 均衡ある発展を図ることを目的として設立されるものであり、国が
 | 責任を持って財政措置を行うことを踏まえ、その評価を行う国立大
 | 学法人評価委員会は文部科学省に置くこととしている。また、その
 | 委員については、国立大学法人評価委員会の重要な役割にふさわし
 | い者を文部科学大臣が任命することとしている。なお、同委員会が
 | 行う国立大学法人の評価は、各委員の見識に基づき、同委員会の権
 | 限と責任の下に行われるものである。



5  また、文部科学省が評価委員会の事務局となって実質的に評
価を行うことがないように、各評価委員に調査検討のための十分な
予算(人件費を含む)を配分し、独自の調査と検討を行い評価がで
きるようにすべきと思うが、そのような措置を行うつもりはあるか。

 | 三の5について
 | 
 |  国立大学法人の評価は、国立大学法人法第九条第二項第一号の規
 | 定に基づき国立大学法人評価委員会の権限と責任の下で行われるも
 | のである。また、委員の活動は各委員の見識に基づき行うものであ
 | るが、各委員が独自に行うものではなく、委員会の活動として行わ
 | れるものである。その委員会の活動に必要な経費については予算措
 | 置が行われているが、当該予算の具体の執行については、当該委員
 | 会が決定する活動の方針に従い行われることとなる。



四 国立大学における労働問題について

1  標準教員数に基づいて標準運営費交付金に人件費が算定され
るため、国立大学の諸活動を実質的に支えている多数の非常勤職員
の人件費は特定運営費交付金によることになる。この特定運営費交
付金については、平成十七年度以降は効率化係数が掛かり、一定の
比率で毎年減額されることが予想される。しかし一方で、大学の職
員の大多数はいわゆる「サービス残業」を余儀なくされ、労働基準
法の下では違法状態にある。長年継続してきたこの矛盾について政
府が責任を取ることなく、国立大学法人の労使関係に国立大学職員
の人件費の問題の解決を委ねてしまうことは無責任ではないのか。

 | 四の1について
 | 
 |  平成十六年度以降における国立大学法人に対する運営費交付金の
 | 算定方式については、効率化係数の在り方も含め検討を進めている
 | ところであるが、法人移行前の公費等入額を十分に踏まえるとの国
 | 立大学法人法の国会審議における附帯決議にのっとり、国立大学法
 | 人の業務が確実に実施されるように、運営費交付金を措置していく
 | ことが必要であると考えている。
 | 
 |  なお、国立大学法人に対する運営費交付金は、使途を特定しない
 | 交付金であることから、御質問の非常勤職員の人件費については、
 | 各国立大学法人の自主・自律性の下に、適切に措置されるものと考
 | えている。
 | 
 | また、文部科学省としては、従来より国立大学に対し、事務の簡
 | 素化や効率化等により、勤務時間内の事務能率の向上を図りつつ、
 | 超過勤務の縮減を図るよう指導してきたところであるが、国立大学
 | の法人化後は、各国立大学法人の自主的な判断により柔軟かつ機動
 | 的な組織編成や人員配置を行うことが可能となることから、各国立
 | 大学法人において、事務の簡素化や効率化等による超過勤務の縮減
 | に一層積極的に取り組むことが重要であると考えている。



2  厚生労働省は、労働基準法の一部を改正して、裁量労働の対
象となる業務として「学校教育法に規定する大学における教授研究
の業務(主として研究する業務に限る。)」を追加しようとしてお
り、九月十日付けでパブリックコメントを募集している。「主とし
て研究する業務」に就く教員はほとんど存在せず、このような中途
半端な施策はかえって国立大学の労働現場を混乱させるだけである。
通常の業務と異なる大学における業務に、労働基準法の体系を小手
先の修正で無理に適用しようとしても、結局は違法状態を発生させ
ることは不可避である。労働基準法の体系とは別に、大学における
労働に関する基準法のようなものを設け、その中で教職員の権利や
義務を規定すべきと考えるがどうか。

 | 四の2について
 | 
 |  平成十五年十月二十二日に、大学における教員の業務の実態等を
 | 踏まえ、労働基準法施行規則第二十四条の二の二第二項第六号の規
 | 定に基づき厚生労働大臣の指定する義務(平成九年労働省告示第七
 | 号)を改正し、平成十六年一月一日から、労働基準法(昭和二十二
 | 年法律第四十九号)第三十八条の三に規定する専門業務型裁量労働
 | 制の対象業務に「学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規
 | 定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するもの
 | に限る)」を追加したところである。このうち、「主として研究に
 | 従事する」とは、授業の時間が、週の所定労働時間等のおおむね五
 | 割に満たない程度であることをいうものとしており、実態として、
 | これに該当する国立大学法人の教員については、裁量労働制の対象
 | となるものである。
 | 
 |  文部科学省としては、国立大学法人の教員に対する裁量労働制の
 | 導入等によって、各国立大学法人において、より教職員の業務の実
 | 態等に即した労働時間の管理が可能になるものと考えている。



3  国立大学法人法の施行により、国立大学には十月一日から法
人移行の準備をする権限が付与され、大学は就業規則、労使協定の
作成準備を進めることになる。これに対して各大学の職員団体は来
年四月以降にようやく労働組合として認められるため、それまでは
団体交渉権すら無い。これに関しては、参議院の附帯決議があるの
みであり、新たな労使関係を構築すべき時期としては著しく労使の
平等を欠いている。早急に法を改正する等、しかるべき整備をすべ
きではないか。

 | 四の3について
 | 
 |  現在、各国立大学においては、平成十六年度からの国立大学の法
 | 人化に向けての準備作業を進めているところであるが、国立大学の
 | 法人化後の職員の労働条件について、法人化前にあらかじめ職員や
 | 職員団体に説明することや、その過程において職員団体からの意見
 | を聴取することは準備作業の一つであると考えており、各大学にお
 | いては、御指摘の附帯決議の趣旨を踏まえ、これらの作業を進める
 | ことが必要であると考えている。



4  大学全体における専任教員と非専任教員の待遇格差問題を政
府として調査し、その解決の検討をしているか。国立大学法人や私
立大学に対し、政府として、その解決について勧告する予定はある
か。

 | 四の4について
 | 
 |  大学の教員の給与等の待遇については、国立大学の教員は国家公
 | 務員法(昭和二十二年法律第百二十号)や一般職の職員の給与に関
 | する法律(昭和二十五年法律第九十五号)等、公立大学の教員は地
 | 方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)や各地方公共団体
 | の条例等、私立大学の教員は就業規則等に基づき定められているも
 | のであり、専任教員と非専任教員、又は常勤職員と非常勤職員との
 | 間で勤務時間数や経験年数、職務内容等に応じて給与等の待遇につ
 | いて差異が生じたとしても、直ちに適正を欠くことになるものでは
 | ないと考えており、大学の教員の待遇について政府として調査等を
 | 行う予定はない。


五 本年九月二日付け国立大学法人化に関する質問に対する答弁書
について

1  答弁書の「二について」の中で、「各国立大学法人の教員数
を標準教員数にまで削減すべきことを求めるものではない。」、
「平成十五年度末における各国立大学の教員数を踏まえ、標準運営
費交付金及び特定運営費交付金により必要な人件費は確実に措置し
ていくこととしている。」とあるが、研究所等の多い国立大学では、
標準教員数は現在の半数程度になってしまう。したがって、教員枠
の財政基盤の半分程度が毎年度見直され、六年ごとに大きく見直さ
れることとなる。これは、私立大学における学生・教員比に国立大
学のそれを近づけることにならないのか。

 | 五の1について 
 | 
 | 平成十六年度以降における国立大学法人に対する運営費交付金の算
 | 定方式については、現在、検討を進めているところであるが、法人
 | 移行前の公費投入額を十分に踏まえるとの国立大学法人法の国会審
 | 議における附帯決議にのっとり、国立大学法人の業務が確実に実施
 | されるよう、運営費交付金を措置していくことが必要であると考え
 | ている。
 | 
 |  なお、ご質問にあるように、従来の試算基準に基づけば、研究所
 | の多い国立大学においては標準教職員数の割合は全体の半分程度に
 | なる場合もあり得るものの、そのことのみを事由として直ちに教員
 | 数が削減されるようなことはないものと考えている。



2  答弁書「三の1について」の中で、「教育公務員特例法(昭
和二十四年法律第一号)は、公務員である国立又は公立の教員等に
ついて、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)の特例を定
めたものであり、法人化に伴って公務員ではなくなる国立大学の教
員に対しては教育公務員特例法の規定の適用は無くなるものであ
る。」としている。単にそういう理由であるとすれば、国立大学法
人法の中に、教育公務員特例法の内容を記載することは可能である
と思われるが、そのようにしなかった理由は何か。

 また、詳細な規則は大学ごとの自主性に委ねるべきだとしても、
教育公務員特例法の中で、教育基本法の趣旨に沿った人事条項は記
載すべきではなかったか。

 | 五の2について 
 | 
 | 教育公務員特例法(昭和二十四年法律第一号)は、国立大学の場合
 | については、国家公務員法により教員等の任命権を文部科学大臣が
 | 有することに対応し、大学の自治に由来する教員人事の自律性を保
 | 障するための特例として定められたものである。国立大学の法人化
 | に伴って国立大学の教員等は公務員ではなくなり、教員等の任命権
 | も文部科学大臣ではなく各国立大学法人の学長に属することとなる
 | ため、このような特例を引き続き設ける必要がなくなったものであ
 | る。
 | 
 |  なお、大学の自治の観点から、国立大学法人の学長の任命につい
 | ては、国立大学法人法第十二条第一項の規定により国立大学法人の
 | 申出に基づいて文部科学大臣が行うものとされているところである。
 | また、教員人事に関する事項については、同法第二十一条第三項第
 | 四号の規定により教育研究評議会の審議事項とされているところで
 | あり、教員人事の具体的な在り方については、各国立大学法人にお
 | いて自主的に定められるものである。



3  答弁書「四の1について」の中で、「各国立大学そのものの
設置根拠については国立大学法人法で定められていることから、国
立大学法人法第十一条第二項四号に基づいて当該国立大学を廃止す
ることが決定されたとしても、直ちに当該国立大学が廃止されると
いうこととなるものでない」旨述べている。それならば当初の原案
段階にはなかった、国立大学廃止を役員会の審議事項に加えた理由
は何か。大学外部者が過半数を占める役員会にそのような権限を持
たせることは、大学に対する「脅迫手段」を役員会に与えるもので
はないのか。

 | 五の3について 
 | 
 | 国立大学法人法第十一条第二項第四号において、学長が当該国立大
 | 学の廃止に関する事項について決定をしようとするときは、役員会
 | の議を経なければならないこととしているのは、主として国立大学
 | の再編・統合の場合を想定し、このような重要事項に関して、当事
 | 者となる国立大学法人としての意思決定を行う際には、判断の適正
 | を期す上で、役員会の議を経ることが適当であるためである。
 | 
 |  なお、役員会を構成することになる理事の任命に当たっては同法
 | 第十四条の規定により、その任命の際現に当該国立大学法人の役員
 | 又は職員でない者(以下「学外者」という。)が含まれるようにし
 | なければならないこととされているが、理事の過半数を学外者から
 | 任命しなければならないこととはされていない。



4  答弁書「八の2について」の中で、「各職員の人事上の希望
聴取については例年行っているところであり、今般、特別に全職員
から希望を聴取する考えはない。」としているが、人事上の希望聴
取が今年度既に終わっている大学がある。こうした大学の場合には、
国立大学法人法が制定された以上、改めて希望聴取を行うべきでは
ないか。

 | 五の4について 
 | 
 | 国立大学の法人化に伴い、国立大学の職員が公務員でなくなること
 | については、かねてより周知しているところであり、文部科学省と
 | しては、特別に全職員の希望を聴取する考えはない。なお、国立大
 | 学の職員の人事については、任命権者が、各職員の人事上の希望等
 | を勘案しつつ、適材適所の観点から行うものであると考えている。



5  答弁書「十二について」の中で、「国立大学法人への移行に
伴って生じる雇用保険料や会計監査に必要な費用等の義務的な経費
については、運営費交付金の算定において対応していくこととして
いるが、国立大学法人の予算全体においてはこの他にも増減要因が
あることから、運営費交付金への算定により直ちに国立大学法人に
対する国の財政支出が増加するものとは考えていない。」としてい
るが、この「増減要因」の「減」となる要因としてはどのようなも
のを想定しているのか。

 | 五の5について 
 | 
 | 国立大学の法人化による予算の減要因としては、平成十五年予算に
 | おいて計上した国立大学法人への円滑な移行準備のための経費等の
 | 減が予定されている。



6  答弁書「十三の2について」の中で、「中期計画の記載事項
については、・・・学部や研究科における個々の具体的な教育研究
活動について記載を求めるものではない。このように、中期計画の
記載内容は個々の教員の教育研究の具体的な在り方についての記載
を求めるものではなく、憲法第二十三条及び教育基本法(昭和二十
二年法律第二十五号)第十条の規定との整合性を欠くものではな
い。」、「なお、大学が自ら具体的な教育研究内容を中期計画に記
載することを希望する場合にはこれを否定するものではないが、中
期計画において個々の教員の教育研究の具体的な在り方の記載がな
ければ運営費交付金を受けられない制度とはなっていない。」とし
ているが、当方からの質問の趣旨は、個々の教員ではなく、学部や
学科等の組織の教育研究の内容や方針の記載が要請されていること
が問題である、と指摘したものである。もし、学部や学科、研究施
設の教育研究内容の記載まで不要であるならば「特定運営費交付金」
の積算はどのように行われるのか。

 | 五の6について 
 | 
 | 中期計画は、全学的な視点に立った教育研究の実施体制等に関する
 | 事項を記載するものであって、学部や研究科における個々の具体的
 | な教育研究活動についての記載を求めるものではないことから、平
 | 成十五年七月三十一日付の事務連絡「国立大学法人の中期目標・中
 | 期計画について」において各国立大学に示した「教育の成果に関す
 | る目標を達成するための措置」や「教育内容等に関する目標を達成
 | するための措置」等の中期計画の各項目については、全学的な視点
 | から記載されることを想定しているものである。ただし、例えば、
 | 知的財産の創出及び活用の促進、地域社会との連携の推進等の観点
 | から、各国立大学として特に重点的に取り組む必要があるもの等に
 | ついては、必要に応じ中期計画の各項目の記載において附随的に学
 | 部等の教育研究活動が記載されることはあり得るものである。
 | 
 |  なお、平成十六年度以降における国立大学法人に対する運営費交
 | 付金の具体的な積算方法については検討を進めているところである
 | が、各国立大学の教育研究活動も踏まえつつ、運営費交付金を措置
 | していくことが必要であると考えている。



7  前問に関連して、文部科学省が七月末に指示した中期目標・
中期計画の記載事項に「教育上の基本組織」という項目があるが、
これは国立大学が自らの長期的計画に従って独自に判断すべきこと
であり、政府の種々の評価機関が教育上の基本組織の設置そのもの
を評価対象とし、その存廃等を判断することは、「教育行政は、こ
の自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立
を目標として行わなければならない」とする教育基本法第十条に明
白に違反するのではないか。

 | 五の7について 
 | 
 | 国立大学法人が設置する国立大学の教育研究上の基本組織の在り方
 | は、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を
 | 図る上で基本的な事項であるため、中期目標で示すこととしている
 | ものである。また、中期目標を定める際には、国立大学法人法第三
 | 十三条第三項に基づき、あらかじめ国立大学法人の意見を聞き、当
 | 該意見に配慮することとされており、国立大学の教育研究上の基本
 | 組織を中期目標に記載することが教育基本法(昭和二十二年法律第
 | 二十五号)第十条の趣旨に反することになるとは考えていない。



六 東京都立四大学の統廃合について

地方独立行政法人法について、衆議院総務委員会(本年六月三日)
の附帯決議の五に「公立大学法人の定款の作成、総務大臣及び文部
科学大臣等の認可に際しては、憲法が保障する学問の自由と大学自
治を侵すことのないよう、大学の自主性、自律性が最大限発揮しう
る仕組みとすること。」とあり、また、参議院総務委員会(本年七
月一日)の附帯決議の六に「公立大学法人の設立に関しては、地方
公共団体による定款の作成、総務大臣及び文部科学大臣等の認可等
に際し、憲法が保障する学問の自由と大学の自治を侵すことがない
よう、大学の自主性・自律性を最大限発揮しうるための必要な措置
を講ずること。」とあるが、本年八月以降、東京都立四大学の統廃
合の検討過程から現在の都立大学関係者が排除され、大学の自主性・
自律性は損なわれている。これについて、国会審議における答弁及
び地方独立行政法人法の附帯決議を尊重し、文部科学大臣及び総務
大臣は、都立大学改革において大学の自治を尊重するよう東京都を
行政指導すべきではないか。

 | 六について
 | 
 |  東京都が設置した大学の再編・統合に係る検討の方法等について
 | は、設置者である東京都が主体的に判断すべきものであり、現在、
 | 設置者である東京都において検討が進められているところであるこ
 | とから、その検討の方法等について、政府として指導を行う考えは
 | ない。

右質問する。

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謝辞:答弁書の掲載をご許可いただきました桜井充参議院議員(*1)に、
また、テキスト化された答弁書の転載を許可していただきました岩崎
亘典氏に、感謝します。
(*1)http://www.uranus.dti.ne.jp/~sakurai
(*2)岩崎氏のwiki site: 都立大「改革・合併・廃校」問題検討ページ
http://wata909.cool.ne.jp/cgi-bin/yukiwiki/wiki.cgi
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編集発行人:辻下 徹 admin@letter.ac-net.org
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