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新首都圏ネットワーク

首都圏ネット声明

         国立大学関係予算の削減計画について


      2003年11月13日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局


 11月12日に開催された国大協総会では、予定を変更の上、第一議題として運
営費交付金問題が議論された。

 当初理事会から提案された決議案については、内容が明確でない、などの批
判があり、総会を一時中断して理事会で文案を修正し、その結果について議論
したのち、「国立大学関係予算の充実について」(資料1)が採択されたといわ
れる。

 国大協総会が当初予定を1時間半ほど延長して議論を行ったことは、6月総会
や7月臨時総会と比較すれば、国大協の危機感と問題の深刻さを示している。

 総会では、理事会提案により、各大学が特別国会終了後、ただちに地元国会
議員を説得する行動を起こすことが決定されたといわれる。これも、国立大学
法人法への対応と比較してみれば、国大協にとって「異例」の行動と言えよう。

 総会では、「学内の反対意見を抑えてきたのに、こんなことなら法人化反対
と言いたいぐらいだ」(東京外国語大)、「予算が減るとは考えていなかった」
(岩手大)、「ほかの独立法人とは違う前提だったはず」(名古屋大)、「学
術が軽視されている」(横浜国立大)と反発が続いたという(共同通信11月12
日配信記事)。また、「法人化を受け入れたとき、このような事態は予想され
たはずだ」という批判的発言をする学長もいたと聞く。

 問題の発端は、財務省が7月29日の経済財政諮問会議に2004年度予算の概算
要求基準(シーリング)の枠組を示したことにある。ここでは、政策判断で予算
額が増減する「裁量的経費」に対して、前年度比で2%減とすることとされて
いる。12日の学長懇談会における遠藤高等教育局長の発言によれば、国立大学
法人に対する運営費交付金は「裁量的経費」であり、このままでは財務省から
削減を迫られるので、これを義務的経費として認定する(あるいは義務的経費
として位置付ける)ことを求める、というのが文科省の方針とみられる。

 しかし、同日の河村文部科学大臣の挨拶(資料2)においても、運営費交付金
の確保に「最大限の努力」を払うことがうたわれているものの、確保の方途に
ついては何ら具体策が示されていない。

 同時に、なお不分明なのは、先行独立行政法人で毎年マイナス1%であった
効率化係数がそのまま採用された上で、さらにマイナス2%のシーリングがか
けられるのか(合計マイナス3%)、それともマイナス2%のシーリングのなかに
効率化係数が包含されるのか、という点である。かりにマイナス3%となれば、
特殊法人から移行する独立行政法人の年マイナス3%という効率化係数(中期計
画3.5年でマイナス10%、4.5年でマイナス13%)とほぼ同じ扱いということに
なる。この点についてはなお情報を収集中である。

 いずれにせよ、予想されていたこととはいえ、国立大学の独立行政法人化を
あくまで行政改革の枠組の中に位置付ける路線がここに表面化したものと言え
る。こうした方針が肯定されれば、今後よりいっそう「縮小の中の特化」が進
行することになろう。国大協は、法人化の本質の一端が明らかになったいま、
あらためて国立大学法人法の問題点を議論し、同法の廃止に向けた行動を取る
べきである。とりわけ、同法の成立に手を貸した会長・副会長の責任は大きい。

 われわれは、高等教育全体に多大な影響を与える予算削減計画に断固反対す
るとともに、ただちに必要な行動を取ることを表明するものである。


資料1-----------------------------------------------------------------

           国立大学関係予算の充実について

                           平成15年11月12日
                             国立大学協会
                           会長 佐々木 毅

 国立大学は、これまでも国民の負託に応えるべ<、教育研究の充実や大学改
革に取り組んできた。と<に、先の国会で、百年に一度の大改革といわれる国
立大学法人法が成立し、現在、各国立大学では、「活力に富み、国際競争力を
持ち、かつ、魅力ある大学づくり」を目指し、関係者一丸となって改革と新生
を図るための努力を重ねているところである。

 このような時、来年度以降の国立大学予算において、独立行政法人通則法に
よる一般の独立行政法人と同様の扱いとして運営費交付金等が削減されてはな
らない。このようなことは、国立大学法人法制定の経緯・趣旨及び同法案の国
会の委員会審議こおける附帯決議などにもとることであり、誠に憂慮すべき状
況である。

 今後我が国が、グローバル社会の中で更に発展を遂げていくためには、国立
大学をはじめとする高等教育と学術研究の充実により、優れた人材の育成と高
度な知的創造を展開する以外に道はない。科学技術創造立国を目指す我が国と
しては、教育研究の拠点である国立大学を予算面から十分に支援してい<こと
が、国の責務と考える。

 他方、国立大学の教育研究環境の改善はある程度進みつつあるが、なお、十
分とは言い難い状況にあり、施設整備費補助金等の拡充が是非とも必要である。

 国立大学の法人化に際して、教育研究の基盤整備の充実に改めてご理解をい
ただき、政界ならびに関係省庁に下記の事項に関し格段の配慮を強<訴えるも
のである。

                  記

1. 国立大学運営の基盤となる運営費交付金の充実

(1) 今後、平成15年度国立学校特別会計繰入額と同規模の公費投入額を最低
  限確保すること。

(2) 国立大学法人化への移行に伴う必要経費を措置すること。

(3) 国立大学法人は、先行の独立行政法人と性格を異にすることを踏まえ、
  中長期的にも必要な国立大学予算を確保できるよう、制度的仕組みを策定
  すること。特に運営費交付金を、その性格に鑑み義務的経費として取り扱
  い、効率化係数を適用しないこと。

(4) 国立大学の教育研究の特性及び大学改革の進展状況を踏まえ、各大学の
  努力に応じて運営費交付金を増額し得る算定ルールを構築すること。

2. 世界水準の教育研究成果を目指した「国立大学等施設緊急整備5か年計画」
 等を着実に実施するための施設整備費補助金等の確保・充実


資料2-----------------------------------------------------------------

     平成15年度国立大学長懇談会における文部科学大臣挨拶

                        平成15年11月12日(水)

 本日の国立大学長懇談会の開催に当たりまして、ご挨拶を申し上げる機会を
設けていただいたことに感謝いたします。

 そして、なにより、教育文化立国・科学技術創造立国を目指す我が国の高等
教育及び学術研究を牽引するという大変な重責を担っていただいている学長の
皆様方に対しまして、日頃のご尽力にあらためて敬意を表したいと存じます。

 また、この場をお借りして、いよいよ残すところ数ヶ月あまり、来年の4月
に迫ってまいりました国立大学の法人化をはじめ、関係するいくつかの事柄に
つきまして、私の所見の一端をお話しさせていただきたいと思います。

 まず、国立大学の法人化について申し上げます。

 国立大学法人法が去る7月に成立した後、各大学におかれましては、来年度
予算の概算要求や中期日標・中期計画の素案の作成等の準備を進めてきていた
だいたところでございますが、更に各大学内で検討や準備に鋭意取り組まれて
いらっしゃるところと思います。また、国立大学協会等においては共通的課題
についての検討が進められていると承知しております。こうした大学内外にお
ける諸準備について、まさに中心となって御活躍いただいている学長の皆様方
の多大なご尽力に、改めて感謝を申し上げたいと思います。

 国立大学法人法の国会審議には、私も文部科学副大臣として議論に加わって
おりましたが、「大学の自主性・自律性の拡大という要請」と「公的資金から
の財政措置を行う国の責任」との調和を如何に図るかという点で、白熱した議
論がなされたのは記憶に新しいところであります。また、法人化の成否は、制
度の実際の運用に係っているとの意見も数多くあったところであります。

 言うまでもなく、今回の法人化の趣旨は、国立大学が、我が国の高等教育及
び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を担うという使命を一層しっかりと果
たしていくことができるよう、その設置形態を見直し、各大学の自主性・自律
性を高めることにあります。この法人化は、私や学長の皆様方にとって明治以
来の大改革であることは、いわば共通認識となっておりますが、国民の実感と
して国立大学が大きく変わったと感じていただけるよう、節目となる来年4月
に向けて大学改革を更に加速し、国民の理解と信頼を得ていくことが重要と考
えております。

 そのためにも、各国立大学と国立大学協会そして文部科学省が連携し、この
歴史的一大転換を円滑に成し遂げ、国立大学法人としての新たな一歩をしっか
りと踏み出していかなければなりません。既に今月6日には、国立大学法人制
度の運用に関する協議の場の第1回目が開催され、忌憚なき意見交換を行わせ
ていただくことができたと聴いておりますが、今後とも、こうした協議の場や、
各大学からの個別の相談等も含め、国立大学の自主性・自律性を尊重するとい
う国立大学法人法の趣旨を十分に踏まえながら、各国立大学との意思疎通を図っ
てまいりたいと考えております。

 次に国立大学法人の運営費交付金の予算に闘してでございます。

 国立大学法人の運営費交付金の平成16年度予算における取り扱いは、シーリ
ングの問題をはじめ、独立行政法人に設定されている効率化係数の問題等、平
成17年度以降にも大きな影響を持つものであります。このため、国立大学にお
ける教育研究の質の低下を招くことのないよう、教育研究の活性化につながる
運営費交付金のルール作りをしなければなりません。さらに、運営費交付金制
度については、新たな政策的需要ヘの迅速な対応を可能とするとともに、各大
学における努力がきちんと報われるような、新しい予算の仕組みを積極的に構
築してまいりたいと考えております。

 こうした運営費交付金に関する諸課題つきましては、本日の総会においても
御議論がなされたものとお聴きしており、文部科学省としても年末の政府原案
に向け、決意を新たにしております。政府全体の財政状況は非常に厳しいもの
でございますが、文部科学省としては、参議院附帯決議にあるように、移行前
の公費投入額を踏まえ、所要額を確保することを最優先課題として最大限の努
力を払ってまいりたいと考えておりますので、国立大学協会等におかれまして
も、なにとぞ御理解と御協力をよろしくお願いいたします。

 次に、各大学に9月末にご提出いただいていた中期目標・中期計画の素案に
ついてでございますが、先月末には、国立大学法人評価委員会の総会及び国立
大学法人分科会の第1回が開催され、法人化に向けた議論が開始されました。

 文部科学省としては、各大学の素案についでは可能な限り尊重するとの方針
の下、今後、文部科学大臣としての中期目標の策定及び中期計画の認可に関す
る案がある程度まとまった段階で、その案について評価委員会の委員の方々か
ら意見を頂くこととしております。

 国立大学法人評価委員会の評価が国立大学法人制度の重要な鍵を握るもので
あることは論を待ちません。国立大学法人の評価ほ決して容易なものでほあり
ませんが、中期目標・中期計画を国民に対して明確にし、事後的に評価を受け
るプロセスは、国立大学に対する理解と支援を得る上で、不可欠なものであり
ます。

 このため、各大学におかれましても中期目標・中期計画の着実な実施ととも
に、積極的に運営に関する情報発信を進め、透明性の確保に努めていただくよ
うお願い申し上げます。

 第二に、国立大学の再編・統合について申し上げます。

 国立大学の再編・統合については、従来の各大学の枠にとらわれず、限られ
た資源の有効活用により、教育研究基盤の充実強化を図るという趣旨を御理解
いただき、各大学において御検討を準めていただいた結果、昨年10月の2組4大
学に続き、本年10月には10組20大学が統合し、さらに、1組3大学が平成17年10
月の統合に合意しております。

 各国立大学においては、法人化後も教育研究の充実強化の観点にたって、地
元関係者の理解と協力を得つつ、再編・統合を含めた多様な組織改編を継続的
に検討していただくことを期待しますが、文部科学省としても、その検討の熟
度等に応じ、支援・推進を図ってまいりたいと考えております。

 第三に、国公私立大学を通じた大学教育改革の支援について申し上げます。

 これまでも、世界的な研究教育拠点の形成を重点的に支援するための「21世
紀COEプログラム」や、教育において個性的で優れた取組を支援するための
「特色ある大学教育支援プログラム」を実施してきたところですが、これらの
拡充に加え、来年度から設置が見込まれる法科大学院をはじめとする専門職大
学院の形成支援等の事業について概算要求をしているところであります。

 各大学がこれらのプログラムをきっかけとして、自らの個性を更に磨いてい
ただくとともに、全学的な視点に立った戦略的な教育研究体制の構築に取り組
んでいただきたいと期待しております。

 第四に科学技術・学術の振興について申し上げます。

 世界最高水準の科学技術創造立国の実現を目指し、社会経済発展の原動力と
なる「知」の創造と活用を図るためには、第二期「科学技術基本計画」に沿っ
た科学技術及び学術の振興が重要であり、国立大学及び大学共同利用機関には、
法人化後も引き続きその牽引役として、我が国の学術研究の中核を担っていた
だく必要があります。

 文部科学省としては、基礎研究等を推進するための科学研究費補助金の拡充、
大学共同利用機関等を中心としたニュートリノ研究、加速器科学、天文学研究
等の国際水準の独創的・先端的な研究の推進、科学技術・学術の優れた人材の
育成、最先端の研究施設・設備等といった研究基盤の整備等に一層積極的に取
り組んでまいります。

 また、ラィフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料等の研
究開発を重点的に推進するとともに、大学における知的財産の戦略的活用等を
図るための体制整備や大学発ベンチャーの創出・育成など産学官連携の推進、
大学等を核とする知的クラスターの創成など地域における科学技術の振興、科
学技術・学術活動の国際化の推進、科学技術理解増進活動の充実などを図って
まいりたいと考えております。

 最後に、教育基本法の改正及び教育振興基本計画の策定について申し上げま
す。

 本年3月、中央教育審議会から、「新しい時代にふさわしい教育基本法と教
育振興基本計画の在り方について」答申が出されました。

 答申においては、現行の教育基本法を貫く「個人の尊厳」「人格の完成」
「平和的な国家及び社会の形成者」などの理念は今後とも大切にしながら、21
世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から、重要な教
育の理念や原則を明確にするため、教育基本法の改正が必要であると指摘して
おります。そして、今後重要な教育の理念として、「知」の世紀をリードする
大学改革の推進などが提言されるとともに、大学・大学院の役割の重要性を踏
まえながら学校の基本的な役割について規定すべきであるといった指摘がなさ
れております。

 また、教育基本法に示された教育の理念や原則を具体化していくために、教
育基本法に根拠を置く「教育振興基本計画」を新たに策定し、政府全体として
着実に実行していく必要があることも提言されております。

 文部科学省としては、この答申を踏まえ、現在、教育基本法改正に関する国
民的な理解を深める取組を進めているところであり、今後、幅広い議論を踏ま
えながら、教育基本法の改正と、それに基づく教育振興基本計画の策定にしっ
かりと取り組んでまいりたいと考えております。

 以上、目下重要と考える幾つかの問題について私の所見の一端を申し述べさ
せていただきました。学長の皆様方におかれましては、多事多難な中、ご苦労
をおかけいたしますが、文部科学省としても必要な支援は最大限にいたす所存
でありますので、リーダーシップを十二分に発揮され、新たな世紀に、より活
発で充実した大学を創り上げるため、一層のご尽力とご協力を賜りますようお
願い申し上げまして、私の挨拶といたします。