新首都圏ネットワーク |
トップダウンに反旗 石原知事の新大学構想 総長抗議、学生も同調 朝日新聞 2003年10月24日 東京都の石原慎太郎知事が都立4大学を廃止するかわりに示した新大学構想が、大学教授らの反発を呼 んでいる。批判の矛先は、構想や教員配置案をトップダウンで示す石原流の手法だ。「東京都が設けた 大学とはいえ、都が好き放題していいのか」。肝心の計画は05年度開校を目指しながら具体化していな い。 今月15日、東京都八王子市の都立大。石原知事の進め方に抗議声明を発表した茂木俊彦総長の学生説 明会があった。400の席はすぐ埋まり、マイクの音だけ聞こえる別教室が用意された。学生からは都の姿 勢を批判する声が相次いだ。「知事は学生のための大学と言うが、自分の理想のための大学では」と学 生自治会執行委員長の山下大輔さん(21)は話す。 石原構想は8月の記者会見で飛び出した。都立大、科学技術大、保健科学大、都立短期大を廃止し、 新大学をつくる。都市教養、都市環境、システムデザイン、保健福祉の4学部を設置。「単位バンク」 (仮称)で国内の他大学や海外の大学の単位を大幅に認める。学長と別に経営のプロを理事長に招く方針 だ。 元々、都と4大学の関係者は昨年5月から会合を始め、カリキュラムの検討段階まで進んでいた。その 会合の打ち切りと新構想を各大の総長や学長が告げられたのは、会見の1時間前、都に呼び出された席で だった。 新構想を考えたのは専門委員会(委員長・西澤潤一岩手県立大学長)。今年5月、知事の指示で都立大前 総長も加えて立ち上げた。「準備委案は都立大の温存策。時代に逆行していた」と都は言う。 都はこの構想を前提に9月末、4大学の教員の定員600人余りを、定年後の欠員補充をしない形で450人 ほどに減らす配置案を提示した。関係大学の各教員に対し、案を認め、今後の詳細設計づくりに参加す ること、内容を口外しないことに同意する書面を提出するよう求めた。都は「口外しないようお願いし たのは、自由闊達な議論をできるようにという趣旨」と話す。 これに対し、一方的で他言を禁じるやり方は「健全な市民的常識と相いれず、あるまじき行為」と白 紙撤回を求めたのが茂木総長の声明だった。 都によると、23日までに都立大の教員の約7割は、同意書を出していない。他の3大学の学長は改革に 賛成の声明を出した。「生き残りには痛みを伴う」「新風が入ってくる大学を現実化するよう努力すべ きだ」などと各学長は話す。 そんななか、新大学の計画はなかなか具体化していない。文部科学省の中には05年度開校を危ぶむ声 もある。 「自分の研究科がどうなるかわからず、人生設計がガタガタです」と都立大人文科学研究科博士課程3 年の高松百香さん(30)。「入学時の研究環境の保障を」という一点で院生会を発足させ、毎夜議論を続 けている。 「再編検討中」 公立大の3割 再編統合の話が出ているのは、都立の4大学だけではない。 公立大学協会の7月のアンケートによると、76公立大のうち、再編統合が「検討されている」と答えた のは23大学と3割を超える。背景にあるのは設置者である自治体の財政難だ。04年度から公立大学法人を 選択できることと一体になって検討が進んでいる。 公立大が、国立大と違うのは「設置者の自治体の多くに、文科省に匹敵する高等教育政策担当の独立 した部署がなく、首長や議会の意向で再編統合が進みやすい」と、公立大学問題を研究する村田鈴子・ 群馬県立女子大名誉教授。東京の状況について、「トップダウンの手法が他の自治体に広がらなければ よいが」と話す。 (杉山麻里子、編集委員・氏岡真弓) |