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『信濃毎日新聞』社説 2003年10月22日付 国立大法人化 信大の挑戦に期待する 来春の法人化を控え、信州大学をはじめ国立大学の六年間を見据えた中期目 標・中期計画の原案がまとまった。従来の殻を破ろうとする試みの一方で、あ えて突出を避ける横並びの側面も見える。今後さらに内容を鮮明にしていく必 要がある。 少子化が進み、公私立大との競合も強まる時代である。同じ国立でも大都市 圏以外のところほど、法人化への期待と警戒感が相半ばする。それゆえ、いっ そう懸命に、新たな大学像を模索する動きにつながっていると受け取れる。 信大もその一つだろう。研究面ではナノテクノロジー(超微細技術)、臓器 移植・再生医工学、山岳科学など七領域を重点に位置づける。 教育面では四地区にキャンパスが分散する不利な条件を埋めるため、インター ネットを介した講義システムを導入する。勉学意欲の乏しい学生に対しては 「退学勧告制度」も検討していく。 さらに、運営全般では学長の権限を重視するほか、学部長の裁量も広げる。 現在12%の女性教員の比率を15%に高める方針も打ち出した。 信大を志す人たちや社会全体に向けた、いわば公約である。大学が自己分析 し、得意分野を絞り、伸ばしていく作業は容易なことでない。学内一丸の態勢 が鍵となる。まずは第一段階であり、これからの進展状況を注目していきたい。 ほかの地方大の事例からも工夫や苦心がうかがえる。静岡大は東海地震を想 定し、防災ネットワークの強化や、大学自体が避難場所の機能を備える考え方 を示している。 滋賀大の場合、学生が卒業するまで個人別のファイルを作成、更新し、入学 時から進路指導に力を入れる。私立大の先行例にも倣った、特色づくりと受け 取れる。 そうした半面、八十九校の多くの中期目標・計画には「学長のリーダーシッ プ強化」「産学官の連携」といった似通った言葉が並ぶ。数値目標も一部にと どまる。達成できなかったときの予算配分などへの懸念を見逃せない。 法人化は国の直轄から独立する点で運営の自由度、多彩さが増す。他方、数 値で測りやすい研究が優先される心配もないではない。仮に学内の自由な雰囲 気を損ねるようだと大学の存立基盤にかかわる。 準備体操を終え、いよいよ本番へ始動する。柔軟な発想を基本に先端研究や 地域との連携を掘り下げてほしい。創意工夫が問われている。「信大よ、頑張 れ」である。 |