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国立大統合―理念なき旗振りでは


朝日新聞ニュース速報

 宮崎大学と宮崎医科大学など10組20校の国立大学が統合した。昨年も2組
 が新しい大学として生まれている。

 国立大学の統合が進んだのは、01年に文部科学省が全国の大学を統合し再編
 する方針を打ち出したからだ。統合・再編を起爆剤に、国際的な競争に勝てる
 個性的な大学をつくる。小さな大学がちらばっているよりは、まとまった方が
 効率的な運営ができる。そう旗を振って回った。

 しかし、いざふたを開けると、文科省の構想は「絵に描いた餅」に終わった。

 確かに、国立大学は最も多かったときの99から87に減った。さらにいくつ
 かの大学が一緒になることを話し合っている。だが、統合する大学がこれから
 飛躍的に増えるとはとても考えられない。様々な組み合わせが話題にはなった
 が、統合に対する大学側の熱はすっかり冷めている。

 これまで統合された大学の顔ぶれは、同じ地域の総合大学と単科大学だ。距離
 が近く、統合しやすい環境にある二つの大学が一緒になった。

 そのなかでも、総合大学と医科大学が一つになるケースが大半をしめる。医科
 大学は、70年代の「1県1医学部」という方針で各地につくられたが、大学
 紛争が波及するのを恐れて、医学部ではなく医科大学のかたちをとった。もと
 もと地方の総合大学の医学部であっても何の不思議もなく、元のさやにおさま
 ったにすぎない。

 ほかの大学がほとんど動かなかったのは、文科省の掲げる構想に、理念や意義
 を見いだせなかったからだろう。統合すれば研究費や教育費が増える、といっ
 た実利もなかった。

 もともと今回の構想は、構造改革を唱える政府の下で、文科省が急いでまとめ
 たものだ。日本の大学を長期的にどうするか、そのためには何が必要なのか。
 そうしたことを考え抜いて打ち出したわけではない。まず改革の形ありき、だ
 ったのだ。

 文科省は統合の方針をこれからも変えないようだ。しかし、多くの大学にそっ
 ぽを向かれているのだから、この際、失敗だったと認めた方がいい。

 来年4月から国立大学は法人化される。自立性はずっと高まる。文科省は理念
 なき旗振りの失敗を教訓とし、大学のあり方は大学自身にまかせて手を引く時
 である。

 これからは各大学が教育や研究の計画を立て、経営戦略を描かねばならない。
 大学の質を高めるには、自分の殻に閉じこもっているわけにはいくまい。ほか
 の大学と手を結ぶことはいっそう重要になる。

 その場合、発想は自由な方がいい。何も統合だけではない。すでに進んでいる
 大学や学部の単位互換を広げる。大学同士が新たに地域密着型の連携をする。
 色々な方式を自分たちで考えることだ。

 大学の将来は、大学自身が選び取っていくしかない。
[2003-10-24-00:55]