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新首都圏ネットワーク

みなさま

都立大学人文学部教員の石川です。
ご無沙汰しております。
以下の声明を、
少しでも多くの方々にお知らせすべくお送りいたします。
転送、転載、大歓迎です。

大学の未だかつてない改悪が理不尽に強行されようとしています。
人文学部のとりわけ文学専攻がいわば血祭りにあげられ、
絶滅する危険にさらされているのです。
次回は哲学、
そして歴史学もターゲットになるでしょう。
そうなれば、
未来のためにまず過去に学ぼう、
という「受け継ぐ会」の精神をも傷つける暴挙となります。

石川 求
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抗 議 声 明


 本年8月1日、東京都はそれまでの新大学計画を突然覆し、新たな基本構想を一方
的に発表した。それ以降の新大学設立準備過程においても、大学側の公式の関与を
いっさい排除し、2005年4月の開設を目途に強引に検討を進めている。新大学設
置をめぐるこのような都の手続は、設置者権限を大きく逸脱し、憲法、教育関連法規
およびその他の諸法規に抵触する恐れが大きいと判断される。我々はこれを深く懸念
し、以下の6点について東京都に抗議するとともに、広く社会に訴える。

1.東京都が、東京都大学改革大綱に基づき都立の4大学との緊密な協議を経てほぼ
完成を迎えていた前計画を、事前に何の説明もなく、また日程上の無理を承知で一方
的に破棄したこと。

2.これに代わって発表された基本構想の策定が、非公表の外部委員会に委ねられ、
大学はいうまでもなく都民、都議会にもまったく知らされぬまま、秘密裏に行われた
こと。また、上記計画破棄の理由とこの新構想の必要性について合理的な説明を行わ
ず、大学側の質問にも答えていないこと。

3.教学面での計画実現に向けた準備委員会から、都立大学総長を排除し、個人とし
て委員を委嘱された大学教員も、予め基本構想に積極的に賛同するという前提のも
と、しかも厳重な守秘義務を課したうえで初めて参加を認めるという異常な体制を敷
いたこと。

4.人文学部の教員定数に関しては、すでに前計画においてもかなりの削減が予定さ
れていたが、新構想においては、さらに大きな定数削減が迫られていると聞く。この
ような極端な定数減は、現行の多くの学科・専攻の維持を危うくするのみならず、過
員教員の大学院担当の有無も不明であり、在学生、特に院生に対する教育・指導体制
の長期継続が不可能になる恐れが大きいこと。また、すでに学生・院生の間には、学
習権が十全に保障されないのではないかという不安と動揺が広がり始めているが、こ
れに対し都が十分な説明責任を果たしていないこと。

5.人文学部専攻の多くが全学の基礎教育に果たす大きな役割から見て、提示された
条件では新大学の基礎教育は極めて貧弱なものとならざるを得ないが、この疑念に対
しあえて明らかな回答を示そうとしないこと。また、外国語を必修化しない今回の構
想は、大学教育本来のあり方からして容認できないとともに、基本理念としてうたわ
れた国際化、教養重視などとも大きく矛盾すること。

6.我々は、学部・大学院を通じ、教育・研究組織としての現人文学部の社会的評価
は十分に高いと自負している。しかるに、今回の計画に従う限り、各専攻において積
み上げられてきた教育・研究の蓄積の多くが途絶し、日本の人文系学術研究拠点のひ
とつが失われる恐れが大きいこと。


      2003年9月25日    東京都立大学人文学部